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潜入任務-1

 俺は冒険者ギルドの前をウロウロしていた。

 「冒険者ギルドの受付の女、エミリに近づけ!」という指示だが、どうすればいいのかが全然分からない。それをルイスに言ったら、「そんなのは知らん。自分で考えろ」という大変タメになる助言を頂いた。

 それで何の案もなく、不審者のようにギルドの前を行ったり来たりしている。時折ギルドに出入りしている人たちの向ける、「なんだコイツ」と言っていそうな視線が痛い。

 俺は立ち止って状況を整理する。

 冒険者ギルドは黒魔法使いとの接触は禁止なので、それを口にするわけにはいかない。とはいえ、黒魔法が使えない俺なんてモブの中のモブなので、それを隠して冒険に出るなんて無理だ。つまり冒険者のフリをしてお近づきになるのは無理だ。それ以外の接点と言えばミリアの件なのだが、荷物だけを置いてサッサと逃げるように去った手前、非常に会いづらい。

(アレ?これ、詰んでね?)

 大体、自分から女の子に声を掛けるなんて、とても考えられない。そんな陽キャなら元の世界でどれほど楽しかっただろう。そんなことを考えていた俺の背後から、聞いたことのある声がする。

「あれ?貴方は確か……ミリアの荷物を持ってきてくれた……」

 ドキっとして、振り返った不審者の俺の目の前に、件のエミリがそこに居た。


「あの時はちゃんとお礼も言えなかったから、後から後悔していたんだ。だから会いに生きてくれて、嬉しい」

 以前も来た客室に通された俺は、テーブルの前のソファに座っている。エミリはその俺にお茶を置きながら、そう言った。

「いえ、あの時は本当にお役に立てず、申し訳ありませんでした」

 俺はガチガチに緊張しながら、答えた。それにエミリは申し訳なさそうに答える。

「そんなことは無いです。キマイラに襲われるなんて誰にも予想できないし、誰が居ても防げなかったと思います。あの場にはうちのギルドの者も居たんですが、彼も追わない選択をしました」

 俺はあの時のことを思い出した。

「ひょっとして、リザードマンの戦士のことですか?」

 あの場にいた中で、一番強そうだったのは彼だ。エミリがそれを聞いて答える。

「ええ、彼も強い戦士ではあるのですが、それでも一人でキマイラには対処できないと判断しました。私もギルドの受付をしているのでわかるのですが、キマイラを狩れるほどの戦士は多くありません。なので、貴方が弱かったからミリアが亡くなったという訳ではありません。貴方のせいではないです……」

 逆に俺が慰められてしまい、とても申し訳ない気持ちになった。いたたまれなくなった俺は、話題を変える。

「キマイラに襲われることは多いのでしょうか?」

 あの化け物には散々な目に遭った。あんなのが跋扈しているなら、外を出歩くのも考え物だ。だが、エミリが首を振って否定する。

「いえ、キマイラは基本的には森の奥で生息しているので、夜間ならともかく、昼間に街道で出くわすことは殆どありません。キマイラは頭が良いので、兵や冒険者が往復する街道には出てきません」

 確かに俺がこの世界に来たときは、森のど真ん中だった。この世界に来てからキマイラとばかり絡んでいるので勘違いしていたが、アイツはレアモンスター枠らしい。そんなことを考えている俺に、エミリが続ける。

「森の近くの村などが襲われることは度々あるので、そのような場合には討伐依頼がギルドに出されます。そう言った場合でも、一人ではなく二人以上でパーティーを組んで討伐します。最近ではオズロ兄弟と呼ばれる戦士たちは上手く討伐していましたが、それでも二人掛りです」

 またまた彼らの名前が出て来た。彼らの表の素性が気になるので、聞いてみることにする。

「オズロ兄弟と言う人たちは、強かったのですか?」

 エミリが答える。

「ええ、このギルドでも五本の指に入る程の実力者でした。困難な仕事をいくつもこなしていて、新入りの面倒見もよく、このギルドでも頼りになる人達でした。私も色々とお世話になりました」

 俺の心中は複雑だった。そのオズロ兄弟が俺にしたことをこの人たちが知ったら、一体どう言うんだろうか?オズロ兄弟に俺がしたことを知ったら、一体どうするんだろうか?エミリが続ける。

「そんな強い方々でも、最近亡くなりました。別のギルドとの闘争のようですが、人が亡くなる時はあっけないです。ですので、ミリアに降りかかった不幸も、あり得ないことではないのです。ですので、貴方は気になさらないで下さい」

 また俺が慰められてしまった。

(強い人だな……)

 そう思いながら、俺はエミリを見つめた。エミリは悲しさを抑えながらも、笑顔を作っている。俺は最後に聞いてみる。

「ミリアが持ってきた荷物は、なんだったんですか?」

 エミリが答える。

「実家に置いてあった、私の本です。魔物とか薬草の図鑑とか……そんなもの、帝都ならいくらでも手に入るんだから、わざわざ持ってこなくても良かったのに……」

 エミリは、耐えきれずに涙を流し始めた。

(俺は、余計なことしか言えないな……)

 俺は、何もかもが申し訳なかった。


 ギルドから出て行く俺を、エミリが見送る。

「良かったら、また来てください。私も、時にはギルドと関係ない人ともお話したいですし」

 俺は、頭を下げて、その場を去った。そして向かう。闇ギルドの隠し部屋に……。

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