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初任務-2

 バズが焼け跡を見て言う。

「焼けたのは最近みたいだな」

 そして、俺とガロの方を振り向いて指示を出す。

「ガロは近くの住民に火事について知っていることを聞いてこい!ドナルドは俺とここで残骸を調べるぞ!」

 ガロは頷くと、町の方に走っていく。俺も頷いて、何も知らないフリをして調査のフリをする。

(俺の残っていた痕跡は、残っていない、ハズ……)

 変な汗をかきながら、俺の居た牢獄の辺りを見て回る。牢獄も焼け落ちていてはいたが、石造りだったので原型は留めていた。

「牢獄なんかあったのか?アルガスは猛獣でも飼っていたのか?」

 俺の後ろから突然聞こえた声に、俺は飛び上がった。驚いた俺を見て、バズがからかうように笑って言う。

「何をビビってるんだよ!」

(俺がその中で飼われていた猛獣です。猛獣と言うか、実験ネズミです)

 内心で突っ込みつつ、笑って誤魔化す。とりあえずはバレてはいないようだった。

 そんなことをしていたら、ガロが声を上げて走ってきた。息を切らせて俺とバズの近くまで来ると、膝に手をついて息を整えている。バズがガロを見て言う。

「どうしたんだ?そんなに慌てて?」

 息を整えたガロが、バズを見て言う。

「アルガスの死体が火事現場から見つかりました!しかも、それだけじゃない!冒険者ギルドに所属していた二人の戦士の死体もそこにありました!」

 

 俺たちは死体安置所に向かった。バズが安置所の役人に事情を説明すると、俺たちはその死体の場所に案内された。死体は3つで、全部黒焦げだった。

 バズとガロが眉をひそめる。黒焦げの焼死体など、裏社会の人間でも見ていて気持ちがいい物ではないらしい。内心ビクビクだった俺は、それを誤魔化すために死体を凝視している。そんな俺をガロが見て、呟いた。

「凄いな、流石は黒魔法使い」


 死体について役人が説明をしようとすると、バタバタと別の足音がこちらに向かってきた。その正体は、剣と弓を持った、二人の戦士らしき男たち。男の内の一人が、バズを指さして言った。

「お前は!闇ギルドのヤツ!なんでお前がここに居る!」

 それを聞いた役人も、驚いたようにバズを見る。バズは迷惑そうに男を見る。やはり闇ギルトと言うだけあって、表では通りが悪いらしい。バズが男たちに言う。

「俺たちの連れが事件に巻き込まれたらしく、その調査のためだ。お前らこそなんでここに居る?」

 男がそれに答える。

「冒険者ギルドに所属していた腕利きの二人が、この町で消息を絶ったと聞いた。それで調査に来たら、焼け跡から死体になって出て来たと聞いたのでその調査に来たんだ!」

 バズとガロ、男二人が睨みあっている。男の一人が俺を見て言う。

「コイツはなんだ?初めて見る顔だな?お前らの仲間か?」

 俺が答えるよりも前に、バズが言う。

「コイツは死んだアルガスの知り合いらしい。何か知っているかと思って連れて来た」

(え!?バレてる!?)

 目を見開いてビビっている俺に、隣に居るガロが目配せして来た。他人のフリをしておけ、という事らしい。俺はドキドキしながら話を合わせることにした。

「ええ、そんなに詳しいわけではないですが……」

 男二人は俺を値踏みするように見つめてから、バズとガロに目線を戻した。剣呑になりつつある両陣営に、役人が口を挟む。

「その……とりあえず説明をしますが、暴れるなら外でやって下さい」

 バズと男たちが役人を見る。男の一人が言う。

「そうですね。説明をお願いします」

 ガロも言う。

「頼む」


 役人の説明をまとめると、こういう事だった。

 三人とも、火事の前に死んでいる。死因は不明。アルガスの遺体は建物の奥の小部屋あり、戦士二人の遺体は玄関から入ってすぐの場所にあった。

 それを聞いたバズが、腕を組んで悩みながら呟く。

「どういうことだ?全員殺されたってことか?誰に?」

(俺です)

 俺が内心で突っ込みを入れる。

 冒険者ギルドの男も不思議そうに言う。

「冒険者ギルドでは黒魔法使いと関係するのは禁止されている。この二人はなんでこの家に居たんだ?」

 それを聞いて、俺にも疑問が湧いた。俺を売りつける時の光景を思い出すと、結構前からの知り合いだったように見えたからだ。ガロが馬鹿にしたように二人に言う。

「どうせ裏で禁制品を売りつけに来ていたんだろう。俺たちと同じだな!」

 それを聞いた男たちが怒りを露にして怒鳴る。

「この二人は、オズロ兄弟は、誇り高い戦士だった。彼らに助けられた人達は多いんだ!彼らを、侮辱するな!」

 それを聞いて、俺は複雑な気持ちになった。確かに最初は、彼らは俺を助けてくれたのだ。その後で食事まで振舞ってくれた。多分、人には親切だったのだろう。人には。

 でも、裏では禁止されている事にも手を染める者たちだった。何と言っても、俺は彼らに売られたのだ。俺は二人の死体を見つめた。

 バズが驚いたように言う。

「オズロ兄弟!?アイツらだったのか。確かに、アイツらならアルガスだって殺れそうだな……」

 それを聞いた俺は、あの二人を思い出す。死んだ二人は腕利きだったらしい。キマイラすら狩れるぐらいだから、名が通っていてもおかしくない。俺がサクッと殺せたのは、完全な不意打ちだったからだ。

 一方的に容疑を被せられたことに、冒険者ギルドの二人は怒りだした。

「何の証拠が合って、オズロ達が殺したと言うんだ?逆に、オズロ達がお前らに殺されたんじゃないのか?」

 それをきっかけに、口論が始まった。


「オズロ達を正面から殺せるわけがないだろうが?どう考えても逆だろう?」

 「正面からではなく、不意打ちだったんだろう。もしくは毒でも使ったとか?卑怯なやつらめ!」

「不意打ちってことは、ここには警戒せずに来たってことだな?やはり何か裏のあることをしていたんじゃないのか?」

 「だから、彼らを侮辱するな!この間も、村人たちのために、命がけでキマイラを退治していたんだ!」

「キマイラの遺物は貴重な魔法素材だ。それをアルガスへ売りつけに来て、口論になったんじゃないのか?」


 心当たりしかない俺は、気が気ではない。変な汗が止まらない。

(バレたら、絶対に殺される……)

 殺されても死なないが、死んだら不味い。死なないこともバレてしまう……。


 バズとガロ、冒険者ギルドの男二人達が黙りだした。両者の視線は互いの顔に注がれている。両陣営が一触即発の雰囲気になり始めた。

 役人がたまらずに、怖がりながら、懇願するように言葉を挟む。

「ここでは、やめて、下さい!」

 俺からも頼むことにした。

「どちらも落ち着いてください!まだ犯人が決まったわけではないんですから!」

(犯人は俺だけど……)

 内心で自分を突っ込みつつ、場を宥める。ここで巻き込まれて死ぬのも不味い。

 部外者と、部外者のフリをした俺からの懇願が効いたのか、冒険者ギルドの男がため息を付いてから、言う。

「とりあえず、この場では何もしない。何もしないが、これで終わると思うなよ……」

 バズもため息を付いてから、静かに言う。

「殺られたなら殺らないと、落とし前がつかない。お前らこそ、覚悟しろよ……」

 男たちはそれに答えず、その場を去っていった。


 俺たちは安置所から出た。バズが俺たちに言う。

「こうなったら戦争になる。想定よりも早い。俺とガロは先に戻る。ドナルドは別の馬車に乗って帝都に戻って、ギルドに報告しろ。お前はまだ顔が割れていない。別の任務に当てられるはずだ」

 俺は先ほどの会話を思いだした。他人のフリをしろと言う指示は、このためだったらしい。

 バズとガロが街の外に向かう。それは二人を見送りながら、頭の中で呟く。

(なんか、エライことになってしまった……)

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