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加害者ファーストのこの国で ~復讐代行人~  作者: 月夢雫


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14/17

過去と始まり 3

 名雪は、画像解析のプロを探して何人にも依頼しては断れながら、どうにか車種は掴んだが黒色のそれなりに販売数のある車種では絞り込みようがなかった。


しかし転機が訪れた。

何かあれば連絡して欲しいと、個人用携帯番号を書いた名刺を協力してくれた人達に渡していたが、その中の一人が連絡をくれた。


丁度事件の日に壊れてしまっていたカメラの修理が終わり、データも無事だったという報せだった。


その情報を連絡くれた人の家は、あの車が走り去った方向にある。

どうか、ナンバーが確認出来るようにと祈りながら、情報提供者の家へ行きデータをコピーさせてもらった。


コピーしたデータを再生すると、名雪が求めていた映像が入っていた。

時刻と車種は一致していたし、ナンバーが微かに映っている。

これなら、車種を特定した解析技術があれば解析可能だろう。


それからの名雪の行動は早かった。

解析を至急扱いで依頼してようやく判明した車のナンバー。

これで、すぐにナンバーの所有者は判明した。


登録住所に行き、行動確認をしながら数日間張り込み、投げ捨てたペットボトルを手に入れてDNA解析の依頼を出して、結果を待つ。

これが一致していれば、雪子を事実上殺した奴を突き止めた事になる。


今時は、DNA検査を受付している機関も沢山あり便利だが、郵送でのやり取りになる為、どうしても時間がかかる。


こんな日の一日一日はとてもゆっくりに感じる。

そんなゆっくりと流れる一日を、こいつが加害者であれば、どんな方法で殺すのが良いのか、そんな事を考えながら過ごした。


ただ誘拐して殺しただけで気がすむはずもない。

生きてる事に苦痛を与えるような時間を過ごさせてやらなければならない。


雪子は生きてる事に苦痛を感じて、自ら命を絶ったのだ。

生きてる事が苦痛になる程、怖い想いをしたのだ。

それを上回る恐怖と絶望を与えないといけない。


待ちに待った結果が届いた。

そこには、無機質にDNA99.9%一致とだけ書かれていた。


名雪は雪子の件で時間があると考えてしまって辛いからすぐに復職したが、夜も眠れない日々が続いており、一ヶ月休職したいと上司に相談した。

葬儀にも参列して事情を知る上司は許可を出してくれた。


別に病休扱いにならなくてもかまわない。

そもそも、この後の事を考えればもう此処には戻ってこれない可能性が高い。


もう刑事として戻る事は出来なくても、無断欠勤となると自宅を訪ねられたり、色々と不都合があるからとりあえず休暇申請を出しただけだ。


はやる気持ちを抑えて、美味しそうな香りをさせている夕食にするのだろう袋を抱えて歩く男の後ろに立ち、防犯カメラがないのを再度確認して、後頭部を強打した。


どの位であれば強打になるのか、意識を失うのかは分からないが、とりあえず騒がれても面倒なので、最大限の力で殴ると加害者はそのまま気絶した様子だった。

あらかじめ用意しておいた袋に入れてから車内へ運び、あの廃墟へ向かった。


加害者が顔にあたる何かに目を覚ますと、そこには見知らぬ男が立っていて、夕食に買ってきた骨付きチキンを加害者に押し付けていた。


「お前はこんな良い香りする食べ物を食べれて良い身分だよなぁ」

ろくな食事もとれなくなった雪子と、仕事をしているから無理矢理最低限の食事は採っているが以前のように食べれなくなったし、何より美味しさなど何も感じなくなった。


それなのに、こいつは毎日毎日色々な店を物色しては、持ち帰り食を楽しんでいる様子だった。


「お、お前誰だよ!」

かみついてくる加害者の顔を掴んで強制的に周囲を見渡させた。


「此処の場所に見覚えは?」

あえてこの場所を選んだ。リスクが高くても決行するなら此処だと決めていた。


「…×月×日お前は何処にいた?」

周りを見渡して、見覚えのある景色に黙りこんだ加害者だが、日にちを言われて自分が起こした日の事を言われてるのだとはっきりと認識した。


「お前、あの女の家族か?」

家族、そう家族になりたかった。


「………家族になれなかった男だ」

DNAは一致している。この場所にも日付にも覚えがある。もうそれで充分だろう。

どうして雪子を選んだとか、そんな事はどうでも良かった。


あとは、ただこの男に罰を与えるだけだ。

お願いだから殺してくれ、と言われるまで、ひたすら恐怖と屈辱を与え続けるのだ。


その手に躊躇は何一つなかった。

そんな事を雪子は望んでいないと言われても、関係ない。


これは雪子の為でなく、家族になれなかった、愛する人を守れなかった一人の弱い男が自分の為にする復讐だ。


まずは性器を切り取って、本人の目の前でフードプロセッサーにかけて、もう後はいちいち覚えていない。


確か足の指を一本、一本、切り取って、次に腕の指。

痛みで気を失ったら、他を痛めつけて起こしてから再開する。


こんな奴と血液型が一致していたから、数日前から自分から採血していた血を輸血して、簡単に出血多量で死なないように調整したりと、拷問も案外大変なものだ。


何度も何度も繰り返して、面倒になってきたので硫酸をかけてみたり、もうこんな日々が当たり前になってきた。


最初は大袈裟な程に悲鳴をあげていたのに、最近はもうその声も発しなくなった。

もう痛覚が麻痺してるのかもしれない。それなら、もう時間をかけるのは無駄だろうか。


何日前か分からない、あいつが買ってきたチキンをちぎって無理矢理口につっこむと、水を流し込む。

するとむせてたから、まだ生きてるし反応もある。


良かった。まだ、これが続けられる。

雪子が事件にあってから命を絶つまで苦しんだ日数位は苦しんでもらわないと、割に合わない。

だから不本意ながら栄養を与えながら延命して続ける必要がある。


あれから何日が経ったのか。

廃墟には誰もこない。もう水を飲ませてもむせる事もなく、ただ零すだけとなった。


雪子が苦しんだ日数よりは超えていただろうから、良しとするしかない。

細かく刻んでいるから後処理は比較的簡単かもしれない。


細かくなったパーツは火をつけて灰にして、骨のある部分の処理には時間がかかったが、灰状にする事が出来たので、その灰をどう処分するかは此処の片づけをしてから考えよう。


何枚にも敷いたシートの上で行ってきたから、それ程大変ではないはずだ。

燃える素材のものは燃やして、一番下にある耐火素材のシートは念入りに噴き上げて、近くにあるごみ置き場に。


灰や、シート類の燃えカスは本人の鍵で部屋に入り、トイレへ流して、荷物も置いて、作っていた合い鍵で扉を閉めた。


一人暮らしだとは推測していたが、やはり家族と住んでいる様子はない。

仕事はしている様子だったから、既に誰かが此処を訪れたかもしれない。


鍵や切断に使ったナイフは翌日金属加工の会社で溶かしてもらい、この為に購入した服や靴も捨て、証拠品は全て廃棄した。


あいつが行方不明になっても、あいつが事件の加害者だとは誰も知らない。

だから直接に自分とあいつを結びつけるものはないはずだが、どんな理由であれ自分は罪を犯した。


その事から逃げるつもりはない。だがあんな奴の為に自首するつもりもない。

自分が自首すれば、春達が苦しむだろう。


復讐を終えると、どんな気持ちになるのか。そう思っていたが、そう特に変わりはない。

復讐してやる。という気持ちが消えるだけだ。


愛した人は帰ってこない。

ただ、復讐を成し遂げたという自己満足だけが残っている。


それが判明した時に迷惑をかける家族や、仲間達の事を考えると胸が痛む。

だけど、復讐をしない。という選択肢だけは自分の中に存在しなかった。


加害者はまるで何もなかったかのように生活している。

そんな事は分かっていたのに、それを目にしたらさらに復讐心を抑える事など出来なかった。


事件が起きて被害者や被害者家族、恋人、友達は世界が一変したのに加害者だけは同じ生活を歩いている。

それが現実だと、仕事柄分かっていはずなのに到底許せるわけもなかった。


自分のやった事が正義だとは思わない。

だが、加害者が野放しになり、何も変わりない生活を送り、やがて再犯を犯すなんて今の状況が良いはずがない。

だから、間違っている事だとも思わない。


復職まで二、三日は日にちがあるから、少し休んだら、この事が公になるまでは刑事として、加害者逮捕に尽くしたい。


そして、今の自分だからこそ被害者に寄り添えると信じて生きていく事しか今の自分には出来ない。

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