国の正義
復讐を果たす事が良い事なはずがないと知りながらも、被害者の報われない気持ちが少しでも軽くなればと手助けをしている間に、いつの間にか復讐代行人などと呼ばれるようになっていた。
しかし、今回は未成年の命を奪い、元依頼人の命も奪う結果となった。
死期が迫り、残される家族の為に復讐を決意するケースも多かった。
残り少ない命なら、復讐に全てを賭けたいという強い決意があり、その手助けをしたかった。
元依頼人とは最初から万が一の場合は逮捕される可能性がある事は確認し、了承していた。
だが、復讐を果たした後の事は何も分からないと言った。
だから復讐を果たした事で、ほんの少しでも気持ちが癒えたら良いな、と思っていた。
しかし彼女の復讐心は本人の想定より大きく膨れ上がり、ターゲットの娘と元依頼人本人をも飲み込んでいった。
娘に断罪されたからといって、襲いかかるようなそういう人間だから前科が生まれたんだという認識を持てなかったのがこうなった原因の一つだろう。
千里の動揺や混乱を鎮める事が出来ず、まだ幼い体で土下座して謝罪する姿が、あと少しだったのに助ける事が出来なかった瞬間が今も頭から離れない。
復讐代行人なんてするべきではなかった。
そんな最初から分かりきっていた答えを幼い彼女が、自分を糾弾しているようだった。
「物思いにふけってるの?」
その声にすぐに顔を上げた。ずっと連絡がとれずにいた人物だったからだ。
「お前、今まで何処に?ご両親も心配してたぞ」
もう自分に連絡がくるはずがないと思っていた番号から着信があった時は何事かと思った。
「お前と連絡がとれないから、何か知らないかってお父さんから…」
親の話をすれば、女の顔は歪んだ。
「そんな事より、まだ復讐代行人なんてやってるの?」
女は話題を変えるように、名雪にとって今一番触れられたくない話題をふってきた。
復讐代行人をしてるなんて、誰かに自ら暴露した事ないが、この女は名雪が復讐代行人だと思っているようだ。
「最近話題の過去に性的暴行をされた女性が加害男性を殺害したってのも、貴方が情報提供してあげたの?」
そして、元依頼人の事も何となく察しているらしい。
「その事件に関しては俺は何も知らない」
実際は刑事としてもかなり証言をしているが、そんな事まで話す義理もない。
「…自分が復讐をして犯罪に手を染めてしまったから、他の被害者や被害者遺族も同じ道に引きずりこんで楽しんでるの?」
そんな事の為に復讐の手伝いをし始めたわけではなかったはずだ。
被害を受けたのに捕まる事さえない事もあれば、捕まってもたいした罪にならない場合も多い事は刑事という職業上よく知っていたから、その不合理さを少しでも解消したかった。
加害者ファーストと叫ばれるこの国で、被害者に寄り添う人間が一人くらいはいても良いのではないか。
そんな気持ちだったような気がする。
そう、あの日の自分は誰かに寄り添って欲しかったのではないか。
自分の行いは間違ってないと誰かに認めて欲しかったのではないだろうか。
「実行役を殺害して、それで貴方の復讐は終わり?見知らぬ被害者達のお手伝いする前にやるべき事があったんじゃないの!?」
…実行役とは何の話だろうか。あいつに指示した誰かがいた?
「復讐ってのはその事件を起こした奴に対してするものでしょ?貴方が殺した男はただ小遣い貰って性的暴行するなんてラッキーって思いながら良い様に使われて、貴方に殺された雑魚よ」




