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プロローグ3

 昼休みになった。陽菜とその取り巻きたちは屋上に弁当を食べに行った。他のクラスの生徒達も一緒らしい。

 健司はいつものとおり、自席でひとり本を読みながら弁当を食べていた。


「三浦も大変だな」

 二つ後ろの席の田宮が健司に話しかけてきた。

「なにが?」健司は後ろを振り返って訊いた。

「いつも隣にカースト上位の女子があんなに集まってきて。落ち着かないだろ?」

「落ち着かないってなんで?」

「あいつら僕たちみたいな『下』をイジッて喜ぶだろ」田宮が顔をしかめる。

「そうなのか? 僕はイジられたことないよ」

「そうだな。三浦は『上』とか『下』とか関係ないもんな」

「田宮はいつもイジられてるのか?」

「いや僕はまだないけど、いつターゲットになってもおかしくないだろ」

「そんなものか? よく分からないな」



 陽菜の周りに集まってくる女子たちは『カースト上位』と呼ばれるらしい。サッカー部やバスケ部に入っている男子も『上』らしい。ファッションセンスがいいと自負する女子のグループや、ヤンキーを気取るグループもそこそこの階層にいるということになっているらしい。


 それに対してアニメ好き男子などは『下』ということになるらしい。田宮は自分がアニメ好きなので『下』だと自己評価しているのだろう。ただ単におとなしい、自己主張が苦手な生徒も『下』と見られることになっているらしい。


 田宮に限らず、自分が『上』か『下』か気にしたり、『上』に行きたがったりするのは普通のことのようだ。


 しかし健司には『上』だの『下』だの気にする心理がよく分からない。小さい時から、自分が他人にどう思われているかに関心がなく、他人との関係性に心を砕くこともなかった。どうも自分は他人とは少し違う心を持っているらしい。

 おまけに、何か特定の話題ならまだしも、ただ取り留めなく会話を続けるということが、健司は苦手だ。同じ趣味の者でもいれば良いのだが、健司にこれといった趣味はない。本は他人より読むほうだが、文学について毎日語り合うほど好きなわけでもない。人から話しかけられてもすぐに会話が途切れてしまい、気まずくなってしまう。だから健司には親しい友人と呼べる者はいない。

 健司はそれで構わないと思っている。苦手な会話に付き合ってまで誰かと一緒にいたいとは思わない。『空気読めない奴』というレッテルのもと、周りを気にしないでいられる今のポジションは、健司にとって居心地がいいのだ。



「君が実際にイジられているわけじゃないんだろ? 君が勝手に思ってるだけかもしれないよ」

 健司は田宮の気が楽になるかと思って言ったのだが、田宮は何故か不機嫌な顔になって「君には分からないさ」と言ったきり、それ以上話しかけてこなかった。

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