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蜜の聖女は甘くない  作者: まさみティー
アフターストーリー
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ロザリンドが思ったこと

有り難いことに、完結してから沢山読んで下さる方がいらっしゃって嬉しいです!

ちょっとアフターストーリーを書いてみました。

 セシル様との婚姻が発表された後の反応は、よく似通っておりました。


「まだだったンか? てっきり決まってるもんかと」


「それな。初日にでもデキてんじゃねェのって思ってたし」


「いやそれは幾ら何でも早ェよ」


 こちら、グスタフ様とロザリンド様。

 一緒に喋ると、やはり近い雰囲気の兄妹だなと思います。


 ロザリンド様が、なんで近くにいたのに知らないのか、相談されてないのかとグスタフ様を肘で突きます。

 グスタフ様は、自分に恋愛相談が来るはずないだろうと返しました。


 本当に、よく似てらっしゃいます。

 ラナ様とはまた違ったタイプの兄妹の距離感ですが、この軽口のやり取りには互いの信頼があって成り立っていると感じられます。

 やはりこの仲の良さは羨ましく思いますね。


「ん? どしたンだよアンバー様」


「いえ、ロザリンド様みたいに可愛らしい妹がいれば、私も良かったなと思いまして」


「え、え、なななンだよ急に」


「あぁ〜〜〜〜……」


 私の言葉に、ロザリンド様は可愛らしく照れてらっしゃいます。

 一方グスタフ様は、ロザリンド様を引き摺って何やらゴニョゴニョと吹き込みます。


「いえ、話す内容がどのようなものかは分かるので隠していただかなくても結構ですよ」


 十中八九、あのマチルダのことでしょう。

 グスタフ様も近くで見ておりましたし、あの王子に対する失礼な物言いは知っています。


 ……実は魔力の流れを読んでいると、セバスが一番魔力のうねりが大きくなっていたんですよね。

 私が髪を焼いたことでスッキリしたのか、その力が霧散しました。

 もしあの時我慢していたら取り返しが付かない事態になっていたかもしれません。


 話を聞いたロザリンド様、私のところへ駆け寄りました。


「とんでもねェ妹がいたもんだ、大変だったなあ……」


「大変、というのとはちょっと違いますけどね。衝撃でした、見たことない妹というのは」


 本当に、反応に困りましたね。

 何故なら私は妹の存在そのものを知らされていなかったので。


「自分の給料が使い込まれたとか、あたしだったらブン殴ってるなァ」


「領地にお金が巡ったと考えると、私が溜め込むより良かったのではないかなと思うことにします。少なくとも、宝石店の商人にとっては、良い領主だったでしょう」


「うーん、聖女! あっ聖女だったンだな! ハハハ!」


 ロザリンド様は、爽やかな笑顔で私の肩をバシバシと叩きました。

 カラッとしていて、本当に気持ちの良い女性です。

 貴族の女性の中では、なかなかいらっしゃらないタイプですね。それこそ他の聖女の方が近いかもしれません。


「それにしても、妹かあ。アンバーさえよければ、私が妹になったンだけどなァ」


「あ、それに関してはラナ様が妹になりますので」


「ゲッそっか! さすがにあのお方と比べられりゃあ、私じゃ霞むわ」


「そうでしょうか? 私はどちらも大切な友人と思っていますよ」


「んん〜! やっぱアンバーいい子っつうか話しやすいよなー。なんか他の女と話が合わないっての、わかんねェんだよ」


 ロザリンド様は、やはりずっと私を良く評価してくださいます。

 本当に光栄な限りで、なんだか照れてしまいますね。


「いや別に忖度してとか、そんなんじゃなくてさ。もしかしたら……」


 ロザリンド様が、ここでグスタフ様の方を振り返ります。


「なァ兄貴、件のクソ王子が他の令嬢に悪いところ言いふらしていたって可能性ありそうか?」


「おう。俺が見た限り、あの王子なら十分あるな」


「……だろうなァ」


 その指摘に、何だか霧が晴れたような感覚を覚えました。


 ラインハルト王子が、私と話す前に私の噂を吹き込んでいた。

 そうなると、いくつか納得する部分があるのです。


 というのも、私にかかる声というのは、それはもう蔑むようなものばかりでした。

 ところが相手の令嬢というのは、どうにも話しづらそうにしていたのです。


 今になると、この違いは『話しにくい』のではなく『話しかけられない事情がある』方が自然なのではないでしょうか。


「ローザの言うとおりだと思うぜ。だってアンバー、他の聖女四人とはあっさり仲良くなったじゃねェか。いくら何でも変だぜ」


「ちょい待てや兄貴、聖女ってそんなにいンのか?」


 そんな二人の会話を聞きながら、私はぼんやりと今までのことを思い返します。

 初めてのサロン。集まった令嬢。

 中には明確に私を悪く言う方もいましたが、最終的には会話が続かないことで終わりました。


 あの人達はもしかして、私と会話したがっていたのでしょうか?

 今となっては分かりませんし、過去を変えることは出来ません。


 ですが、今の私には影響があります。


「そうですか、私は、嫌われていなかった可能性もあるのですね」


「んあ? むしろそっちのが自然だと思うぜ。ま、参考になる令嬢があたし一人じゃぁわかんねェけど、あたし以上にホリー様が人を見る目の塊な人だからさ。自信もっていいぜ」


 そう……そうなのですね。

 何というか、今この時になって、凄く『救われた』気分です。


「ありがとうございました、ロザリンド様。少し自分に自信が持てそうです。感謝いたします」


「おう……ってよォ! そこは少しじゃなくていいぜ!?」


 本当に、素敵な方です。

 この国に来ていろいろと救われたと、有り難いと感じることが多いですが、特にその最たるものがこの『人の良さ』です。

 感情の機微に疎い私でも、その状況が良かったか悪かったかぐらいは分かります。

 そんな後ろ暗かった私の過去を、この国は次々に晴らしてくれるようです。


「ロザリンド様が友人で、良かったです。私は友人に恵まれていますね。今後とも、よろしくお願いします」


「いやこっちこそな? どう考えてもアンバー様が友人やってくれてるあたしの方が幸運すぎだかンな?」


 そう言ってまた私を肯定して下さるロザリンド様は、お兄様そっくりの顔でからりと笑いました。

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