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第9話 宝探しは死闘へ

 3/20

 今日狩高から合格通知が届いた。そして大量の課題という課題に追われることになった。ガマたちは一体どのくらい終わらせてるのだろうか……


 3/25 

 ようやく……課題が終わった!いや、本当に長かった!ガマやキリエは部活で家にいないことがほとんどだから、話し相手がいなくて辛かったが、明日からは新武器の性能テストと洒落込んでこの鬱憤を晴らそうと思う。


 3/26

 ちくしょう……狩高の制服を買いに行くまではよかった、よかったんだ。何故俺とガマは火野とキリエの買い物に付き合わさらたんだ……楽しかった、楽しかったんだけど!性能テストが行えなかったというモヤモヤ感が一日中付き纏ってた。明日こそ!明日こそ自然界で暴れまくってやる!!!






 そして今日(3/27)ようやく課題諸々から解放された俺は武器を持ってあの時のリベンジを果たすべく、初めて自然界を訪れた住宅街に来ていた。


「さーて、どこにいやがるかね!イノシシクリーチャーども!!」


 住宅街を探索すること約十分、一向にクリーチャーが見当たらない。


 それもそうか、本来クリーチャーはというか区周辺のクリーチャーは軒並みハンターに排除されるからな。見当たらないのも当然と言えば当然だ。


 そしてそこから住宅街を練り歩いていると妙に開けた場所に出た。広い空きスペースの中にポツンと立つそれはまるで……


「スーパーマーケットか?」


 ピ、ア……と書かれた看板が残る三階建てほどの大きさのショッピングモールとしては小規模な施設がツタというツタに覆われ、苔が生い茂り半壊しながらもその姿を保っていた。


「大体こういう施設には結構なお宝が眠っているはず……目の前の半壊した宝物庫を漁るか、予てからやろうとしていたクリーチャーへの性能テストを兼ねたリベンジマッチか……」


 見事なまでに頭の中で意見が分かれる。こういう場合は頭の中で天使と悪魔が囁き合うようなものであるが、天使も悪魔もつまるところは俺そのものなのだ。両者は息をぴったりと合わせ互いの手を取り結論を出す。


「両方やってやる!」


 そう意気込み俺は入り口の自動ドアであったであろうガラスを蹴破り中へと入った。



 



「うーん、あれ?」


 そう反応するのには無理も無い。入った瞬間目に移ったのは、漁られた後の店内や、生い茂った後のツタでもなく、ただ一人、いや一人とカウントしてもいいのか分からない。


 一体の人型のクリーチャーだった。


 あの時の人型か!?いや、でも雰囲気とか違うし、大きさもこんな大柄な男性くらいの大きさじゃなかった。あの時に見たのはどちらかと言ったら女性のような見た目だったはず……それに、何なら手が武器になってないか?


 クリーチャーはただこちらをずっと見つめたままで動く気配が無い。西洋剣のような緑色の刃と化した二本の腕を持つそれは本来人間の顔があるはずの場所に顔が無く、のっぺらぼうだった。


 俺はゆっくりと腰の鞘から武器を持ち、クリーチャーから目線を逸らすことなく一歩、また一歩と少しづつ距離を離し、食品売り場だったのであろうレジ付近まで近づく。そしてレジを潜り抜けた瞬間


 ビューン!!!


 風を切るかのような音が俺の耳元で鳴り響いた。そしてそれとともにガラガラと商品棚が倒れるような音が背後から聞こえる。俺は見ていたから対処はできた、しかし、アイツを見ていなかったら対処はおろか死んでいた……

 そう、俺が視認したのは、あのクリーチャーが、腕を振り下ろしたことにより発生した、風を切るような横一文字に飛ぶ斬撃だった。


「どんな威力してやがるってんだーッ!?」


 飛んでくるであろう第二刃から逃れるため、すぐさま倒れていない商品棚へと駆け寄り、身を隠す。


 何なんだアイツ!?飛ぶ斬撃ってガマパイセンのまんま上位互換じゃねえか!でも、そのおかげか前動作がわかる分対処は簡単そうだが、その問題は対処できるほどにこの武器の耐久力があるかが問題か……ええいままよ!本多の作ったコイツを信じて迎え撃ってやる!!


 足音が徐々に近づいたり、遠ざかったりを行ったり来たりしている。先の斬撃によって舞い上がった蓄積された埃の花吹雪が、運よく俺の足跡を消し捜索を遅延させているのだろう。しかし、これは舞った埃が足跡が残る雪道のように今度は俺自身の行く先を簡単に捕捉させてしまう。狙うなら……


「後ろからだッ!!!」


 商品棚を回り込み、クリーチャーの背後へと移動し、二本の剣で斬りつける。


「ゴァッ」


 不意を衝かれたのかクリーチャーは声を上げる。人のものとは思うことができない声であったが、効いていることが分かるには十分な判断材料だ。それにしても奇妙な斬り心地だ。まるでキャベツでも切っているような多重構造感のある斬り心地。肌に中に肉ではなく野菜でも詰まってんのかコイツ?


 クリーチャーはすぐに後ろへと振り向き、その巨剣のような、いやそのものな剛腕を振りかざす。それを星谷は凹凸状態になっている個所を使って受け止める。


「ヒュー!すげえ便利だな、機械剣(アダプター):ブレイカーモード!」


 本来、ソードブレイカーはレイピアを用いた剣術において、刀身の片側に相手の剣を絡め取り受け止めるまた、テコの原理で刀身へし折るための凹凸の形状が施された、防御用として使用される短剣。だが、俺は今これを二刀流にして使っている。ソードブレイカーも一応は攻撃可能な武機種だが殺傷力自体は低く劣る、一般的な「剣」としてイメージされる片手剣・大剣の類を相手にした場合は、逆にソードブレイカー側が破壊されるという弱点が存在する。


 そう、普通のソードブレイカーならな。俺のこの二本のソードブレイカーは本多製児が丹精込めて作り上げた逸品、その武器の名前は機械剣(アダプター)。素材には六方晶ダイアモンド(ロンズデーライト)というダイヤモンドよりも60%以上硬いことが実験で証明された世界で二番目に硬い物質と俺の髪の毛で作られている。だから切れ味共に耐久力抜群!


「そしてここからがロマンだぜ!!」


 剣を振りほどき、峰の凹凸を同じ向き同士で嚙合わせる。


大剣(バスター)モード!!」


 二本の刃が凹凸によって合わさり、一本の大剣へと様変わりする。


「半玉にぶった切ってやるぜ!キャベツ野郎!」


 キャベツが剛腕を振りかざす前にその身体に大剣を斬り込む。キャベツ野郎の身体が半分になると確信していたが、それは大いなる間違いだった。


 ゴンッ!


「何ッ!?」


 バットを木にぶつけた時のような鈍い音がキャベツ野郎の中から響く。急いで剣を抜き、斬り込んだ個所を見てみると


「コイツの骨……木でできてるのか!?」


 そこには深く切り込まれてはいたもののしっかりと大剣の斬撃を防ぎ切ったヤツの骨……いや、大木があった。

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