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第87話 春の課外学習、サバイバルフォレスト!

 樹海を歩く、皆列を作りながら目的地へと向かう。今日は、課外学習当日である。


「悪いな恵、荷物持ちしてもらって。」


「いいんだな。オイラの仕事はみんなのサポート。今日という日のために、みんなからいろいなものを預かってるし、責任重大なんだな。」


 恵のZONEは便利すぎる。一番驚いたのは、身に付けていれば衣服判定になるのか、リュックサックでも四次元収納が使えたことだ。ポケットとかぐらいにしか入らなかったのが、リュックの開閉口に入れば何でも入るようになったおかげで戦略の幅が広がり、このサバイバルをより有利に進められる。


「俺の贋作昇華(リアリティ)には量が不可欠だったから、恵君にはいつも助かってるぜ!サンキューな!」


「前日にアホみたいにマネキンを入れとったからな。今回は、遊斗はんが活躍しそうやな。」


「何で男子は、こんなにも落ち着いていますの?ここは自然界でしてよ!?」


「我ら男児にとって、今回の課外学習は他校との腕の違いを見せつけれる絶好の機会。張り切ってしまうのも当然。ヒヒーン!!!」


「姉さんの家に住んでる星谷たちが慣れてるのはわかるけどさ、ガロウ君が落ち着いてるのは意外だな。」


「校長先生が回してくれた警備のバイトで、よく自然界には降りている。」


「父は、そんな仕事紹介したのか。迷惑になってないのならいいけど。」


「いや、修行にもなるし、金も入って一石二鳥だ。俺は、妹の生活のために仕事ができて、金させ入ればそれでいいからな。あんたの親父と火野先生には感謝している。」


 雑談をしながら足を進める。俺らが向かっている場所は……知らないし、わからない。俺たちは、ただただ火野さんの後ろを追って歩いている。それに他校のやつらが見えない。本当に合同でやるんだろうか……?


 もう少し歩いた辺りで、火野さんが足を止める。目の前にあるのは結構大きめの駅だった。古び切った看板には「大府駅」と書かれていた。そして、辺りを見回すといくつか見覚えのあるテントが用意されていた。よく見てみると、テントを出入りしているのは、カウザー先生と千の貌持つ化身(サウザンツ)だった。俺たちは、少し開けた場所に二列で整列させられ待機する。


「よし、全員いるな。」


「先生。まさかここでやるのか?」


「いや、違う。ここはスタート地点だ。」


「それってどういう……」


 そう聞こうとした次の瞬間。辺りから足音が聞こえる。よく目を凝らして見ると、列の中に神楽坂の姿があった。つまりは、狩北のやつらだった。先生らしきスーツ姿の人たちを見ると、狩北の先生は左目に白い眼帯に白髪のドレッドヘアーで褐色肌、腰には二丁拳銃のようなものを下げている。先生らしき人は、俺たちの右横に生徒を整列させ待機させた。


「火野先生。狩北の生徒全員います。」


「八神先生、報告ありがとう。」


 あれが狩北の先生かと思いながら静かに待機していると、耳に息を吹きかけられる。


「やあ、星谷君。」


 ビクッとしながら横を向くと、神楽坂がいた。相変わらず心臓に悪い。


「何のようだよ。」


「冷たいなあ。僕、悲しいよ。」


「言ってろ。」


「……随分と気が強くなったね。それに前より体つきがいいように感じるよ。」


「体を弄るんじゃねえ!」


 そんなやりとりをしていると、南高の連中もやってきた。南高の先生は、赤髪のアップヘアに白い肌の、まるで可憐な薔薇のような人だった。先生は、俺らを狩北と挟むように生徒たちを整列させる。


「南高の生徒全員いますわ。」


「野薔薇先生、報告ありがとう。」


 火野さんが諸々の確認を終えた後、全員が見える位置に立ち話始める。


「皆さんこんにちわ。私は狩高の担任、火野だ。七区は他の区に比べ比較的に安全、滅多にクリーチャーが襲ってこない。しかし、他の区では毎日クリーチャーの脅威に晒されながら生活しているところもある。今回の課外学習で、君たちにはその死との隣りあわせ、いつ襲われるかもわからない恐怖と緊張感を味わってもらいたい。目的はそれだ。ではこれから具体的に何をしてもらうか話す。それは君たちにはこのマッドフォレストで一週間、与えられたミッションをこなしながら、生き延びてもらう。」


 そう火野さんが言うと、千の貌持つ化身(サウザンツ)が、先頭に立つ生徒にタブレットとそれぞれの高校の名前が入った1本の旗を渡す。


「そのタブレットに毎日デイリーミッションが3つ追加される。そしてその旗は、この一週間全体のミッションであるウィークリーミッションに関係する。君たちがこなすミッションにはポイントが割り振られ、一週間を通してそのポイントの合計値が一番高いチームが優勝だ。」


 火野さんが話し終わると、カウザー先生が次に話始めた。


「私からは注意事項など説明させてもらいます。今回、皆様の安全を確保するため、私が開発した小型ドローンが徘徊し、監視を行います。また、このドローンに対し破壊工作を行った者は区内へと強制退去をすることになってしまうのでご注意してください。それと、ここ私たち教員の待機スペースにはトイレとお風呂があるので、困ったときは遠慮せず使ってください。もちろん、ここでの戦闘行為は禁止です。それと今日限りの話ですが、1日目は他校との戦闘行為は禁止としますので、ファーストミッションである拠点づくりに専念してください。」


「そういうことだ。先もカウザー先生が言ったように、ファーストミッションは拠点作成だ。では、説明を終わる。解散。」


 説明が終わると同時に、狩北、南高はその場を離れていく。そして、神楽坂が俺の方に近づくと手を差し伸べる。


「お互い、頑張ろうね。星谷君。」


 とりあえず握るが、俺は威嚇するように思いっきり力を込める。


「ああ、優勝するのは俺たちだ。」


「そうか、頑張って。」


 そう言い残して、神楽坂は狩北の方へと歩いて行った。なぜか体をハグされたような感覚と頬にキスされた感覚が残っていたが、気にしないでおこう。


「俺たちも動くぞ。既にここらへんでいい建物に目星を付けてある。」


「流石、星谷はんやな。ひとりでに自然界をほっつき歩いとるだけある。」


「とりあえず、30分くらい歩くからみんな付いて来てくれよ。」


 皆が頷くのを確認し、俺は樹海の中に足を進める。そして樹海を歩きながら、今後の方針について話す。


「お前らに質問だ。雨風が凌げて、クラス全員が入っても広く、クリーチャーに発見されても守りやすく頑丈な建物は何だと思う?」


「そんなものある?俺ちゃん全然思いつかない。」


「挙手」


「はい、キリコ」


「ビル」


「それだと、上に追い詰められて終わりだ。」


「じゃあ、答えは?」


「答えは学校だ。俺たちは、大府東高校に向かって歩いてる。あそこの周辺は、古い地図によるとショッピングモールとかホームセンターはないが、周辺には池やぶどう園もあるし食料は比較的に簡単に入手できる。」


「いやいや、でも200年くらい前の建物だぞ!?安全性とかどうなんだよ!?」


「学校ってのは意外に丈夫だ。そこらのショッピングモールとかは、入り口がガラス張りで侵入を簡単に許しちまうが、学校ならまず学校を囲む柵、そして、扉は全面ガラス張りじゃないから突破しにくいだろ?それに、建物に関して言えば、植物に覆われてるやつなら基本大丈夫だ。張り付いてるやつ全部を燃やしたりとかしなければ、たぶん倒壊することはない。」


「そこが心配なんだけど!?」


 そんな事を話しながら数十分。俺たちは、無事に大府東高校に着いた。かつての校舎の面影を残しつつ、生い茂った苔などが校舎を包み自然の中に溶け込んでいる。これなら、見つかる可能性も少なくなるだろう。ひとまず、学校の校門前で作戦会議だ。


「よし、これから作業を分担するため、おおまかなメンバーの割り振りを行う。まずは、敵の位置を探りたい。龍之介と戻さんで初期位置から上空を飛んで拠点の位置を探ってくれ。樹海を上から見た時に緑のカーペットに見えるだろうが、それでも光が指すところはある。望遠鏡とかで見て回れば見つかるはずだ。」


「俺はわかる。バッド、何でモドリッチと双葉の必要がある?双葉の二重を行く者(ドッペルゲンガー)を使えば人では増えるだろ?」


「考えても見ろ。お互いに初期位置から離れるとなると片道距離は倍になる。それは今後の旗取り合戦において、自拠点からの増援も、敵から逃げるのも難くなるだろ?それに偵察が見つかっても、戻さんのZONEなら五分前の場所に瞬間移動できて、すぐに身を隠せるし、二重を行く者(ドッペルゲンガー)を残してデコイ代わりにできる。」


「頑張ろうねモドリッチ!」


「龍之介、運転頼むわよ?」


「オーケー、運転任された!」


「よし、後は残りのメンツで拠点作成と、今後追加されるだろうミッションに割り振るがそれでいいか?」


「異論ないよ!」


「よし、ミッションが追加されるまでの間は、拠点作成に全力注ぐぞ!」

ナチュナルに時止め痴漢する現状負けヒロインの神楽坂

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ヒロイン…?ヒロイン…ヒロインだよな…うん…(放棄)
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