第77話 ナンデモートに謎の美女現る
「ガマのやつ、何勝手に寝姿さらしとるんじゃ。グルラが騒然としてたぞ!せっかくZONEが発現してサプライズで見せびらかしてやろうかと思ってたのに弊害でリークされちまった。」
独り言を吐きながら、俺は、既に使われなくなったJRの線路を道なりに歩き続けた。俺が歩き目指しているのは、この使われなくなったJR線の奥にひっそりと構える古臭いオンボロ屋敷のような外装の店、ナンデモートである。ナンデモートには色々なものが置いてあってたまに足を運ぶと真新しいものが置いてあることがあり、月に一回は来るようにしていた。
「ちぃーす、星谷でーす。」
扉をたたきながら挨拶する。しかし返ってきたのは「いらっしゃーい」だとかのやつではなかった。
「合言葉は……?」
電子音で返ってきたそれを聞き、店長の夜蜘蛛頼斗さんじゃないことと、この返事の場合、店長は留守だったことを思い出す。
「ナンデモートは何でも屋」
合言葉を言い放つと金具が外れたような音がした後に扉が開く。俺は扉を開け中に入るとピンクよりの紫ハーフアップショートカットで、蜘蛛模様があしらわれた際どい白黒の着物を着た小さめのジト目の女の子が出迎える。
「いらっしゃい。」
「おう蜘蛛空。三ヶ月ぶりか?」
「そんくらい。今日は何用?また依頼でも受けるの?それとも買取?」
「こいつを売りたくてな。きっといい買い手が買ってくれるさ。」
そう言いながら、リュックに詰めた漫画をドサーっと買取机に並べる。蜘蛛空は、並べられた漫画を一つ一つ丁寧に検品する。その間に店の中を見て歩きながら時間を潰す。
「どうよ?結構な値段が付きそうだろ?」
「そうね、買い手によってふっかける値は変わるけど、状態もいいし1冊最低ライン100万といった具合ね。」
「おお!マジか!」
「夜蜘蛛さんは留守みたいだけど、いつもどこ行ってんだ?」
「基本的に三区に行ってる。友達と集まってハチャメチャするんだって。でも、最近店長の友達にすごく気が強くて傲慢、挙句に手が付けようもないほどに強いヤバいやつがグループに入ってきてストレスが溜まるって愚痴ってた。」
「それほんとに友達か?暴君の間違えじゃねえの?」
「そうかもしれない。」
そう言って雑談をしていると、店の扉が開く。中に入って来たのは派手な赤色のスーツに黒いサングラスをかけ、銀髪と金髪が入り混じったロングヘア。全体的に火野さんを一回りデカくしたようなサイズ感の物凄く大人びた雰囲気のお姉さんだった。
「もう店は開いているかい?」
見た目が派手すぎる。なんだあのスーツ?ラメ入ってるのか?絶望的なまでに服のセンスが終わっているのを顔でカバーしてるぞ。
そんなことを思いながら、姿を隠しながらその女性を商品棚の隙間越しに見る。
「珍しいね、僕以外にも客がいるとは。この店にはよく来るのかい?」
女性はまるで俺に気付いているかのように話し始めた。俺は、少し警戒しながら商品棚の後ろから出る。女性は俺の姿を確認すると、ゆっくりと拍手する。
「あ、そこにいたのか。実に素晴らしい。視線は感じたが、感覚だけならどこにいるかを悟れないほどの気配遮断。坊や、君は中々の手練れのようだね?」
怪しさプンプンって感じだ。ゆっくり拍手するのは大体悪人だって前本で読んだことがある。見た目からして怪しいが、こいつ何者だ?
「坊や、そんなに警戒する必要はないぜ?僕はこの店の常連客、この店で悪事を働くのをむしろ制止させる側の人間。君が思っているような悪党じゃない。」
心を読まれてる!?
「人の心を覗くってのはプライバシーがなってねえな。若者に嫌われるぜ?」
「それは困るなあ。未来ある若者たちに嫌われるのは心苦しい。」
「それよりも、お前何者だよ?急にこっちの心を読むってんなら、自己紹介くらいしてもらわねえとな?」
「さっきまで心を読んでいたことは素直に謝罪しよう。しかし生憎、今この場で名を明かしたくない。だから今のところは「お姉さん」とでも呼んでくれると助かるかな。」
この通称お姉さん、何か隠してるってのはわかるが、話してみた感じ敵意とか悪意みたいのは感じない。まあ、無駄な警戒だったか。
「じゃあ、お姉さんは何しにこんな区外れの方のここに来たんだ?何か用はあるんだろ?」
「僕はある書物を探していてね。君たちのような若者にはあまり馴染みがない物さ。名前を言っても君にはわからないだろう。」
「書物なら本屋とかに行った方がいいんじゃないか?こんなところに売ってるのは古本とかガラクタばっかだぞ?」
「僕が狙っているのはより古い書物だよ。簡単に言えば200年前に起きた第三次世界大戦時頃に出版されていたものだ。自力で探そうと思っても状態の悪いものばかりでね、だから時たまにここに依頼をしに来るんだ。「目当ての古文書を探してくれ」とね。」
200年前の代物は確かに探すとなると気が遠くなるだろうな。だが、俺は知っている!七区周辺の森には意外と200年前の漫画とか小説とか雑誌が残っていることを……ん?いや、待て?ここで取り扱ってる本っていったら、俺が自然界でかき集めた漫画だよな?もしかして、この人が例のお得意様か?
「ふーん。それで、蜘蛛空。合計でどれくらいの売値だ?」
俺は蜘蛛空の方に行き、金を受け取る。
「ジャンプ系列3冊、マガジン系列5冊、コロコロ2種類で、合計で1145万14円。現金で出すから、リュック開けといて。」
「うっひょー!大量大量!総グラに行く道のコンビニで電子マネーに変換しとかなきゃな、持ち運びが不便すぎる。」
俺が嬉しそうに金を受け取る姿を見たお姉さんは、ようやくピンと来たのか、目を丸くする。
「もしかして、坊や。」
「ん?」
「君が探してきていたのか?」
「当たり前だろ。ハンターを志す者として、クリーチャーをぶっ倒すはもちろん。自然界の周辺調査と資源や遺物の確保は基本だぜ?」
「君だったのか!!!」
お姉さんは、そうドヤ顔で言い放った俺をすごく強い力で抱き上げる。どうやら、俺の予想通りだったようだが、苦しい、位置的に胸に顔が収まっている状態なんだが、空気の通り路が無さすぎて苦しい!
「いやぁ、君のような若者のおかげで僕の趣味が成り立っていたとは、心から感謝するよ。」
力緩めた隙を見計らって緊急脱出し、呼吸を整える。
「まあ、俺もこれで生計を立てようかと考えてたんだ。お姉さんのおかげだよ。」
「そうか、そう言ってくれるか!ところで、君は誰の許可を得て、自然界の遺物を持ち出したのかな?」
えっ!?許可いるの!?もしかして、このお姉さん。警察とかそっち系の仕事をしてるのか!?ここで嘘をついても読心術みたいなZONEでバレるなら、真実を話すか。
「俺の師匠に火野……オルキスっていう人がいるんだけど、その人に許可を貰って自然界で活動してる……」
オルキスと言う単語に、お姉さんはハッとしたように眉毛が動く。
「そうか、ここで彼女の名前を聞くことになるとは……店員君、会計を頼めるかい?そこにある漫画を全て買おう。」
「代金のお支払いはどうされますか?」
「急用を思い出したからね。小切手を使ってくれ。」
そう言って1億と書かれた小切手を机の上に置く。
「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております。」
袋に詰めた漫画を手渡すと、お姉さんは指を額に当て
「それじゃ、またね坊や。」
そう言った直後に姿を消す。
「あいつ、なんだったんだ……!?」
不思議に思っていると、蜘蛛空に肩を叩かれる。
「なんだ?」
「そういえば、昨日の夜に夜蜘蛛さんの友人からあんた当てに預かってるものがある。」
「預かってるもの?」
「これ」
「USBメモリ?」
「詳しい事は知らないけど、友人曰く「迷ったらDr.カウザーのとこもって行ったらええ」らしいです。」
「ふーん、そうなってくると武器とかかな?いや、でも何で俺に?まあ、とりあえず受け取っとくぜ。」
口調がAFOとメズールをガッチャンこしてるのは、深夜テンションで男だったのを女に変えたのが原因です。なんかエロくないですか?
ちょっとスランプ入ってきた




