第73話 特級アクセサリーは誰の手に
インド映画の王宮の王様の周りで踊ってそうな、宝石のアクセサリーとヒラヒラを大量に付けた踊り子服に身を包むオカマが描かれた広告看板が嫌に目を引く「ちゃあみんぐぅ」と書かれたアクセサリーショップ。その店前に三人は立っていた。
「ここが最後ね。」
「アクセサリーショップの「ちゃあみんぐぅ」ですわ。ここは、見た目だけでなく実戦で使えるアクセサリーもいくつかあったはずですわ。」
「それ本当にアクセサリー?武装の間違えじゃない?」
「簡単に効力を言うとお守り程度ですが、あって損はしませんわ。」
「提案:時間が惜しいです。速く入店しましょう。」
三人は自動ドアを潜り店内に入ると、そこは閑散としていた。店内はまるで廃墟のように閑散としており、電灯はところどころ割れている。そして、そんな店内で一人だけ呑気に買い物を楽しんでいる姿があった。
「オーララ!いいですねこのピアス。私とマジェスティ用に二つづつ貰いましょう。ペアラックは信頼の証。我がマジェスティへのプレゼントとしては申し分ないでしょう。」
「あんたは!EDEN財団幹部の!」
「ボンボンボンジュール、マドモアゼルたち。あなたたちもショッピングですか?気が合いますね。(本来なら狩人高校にお邪魔しようと思いましたが、テレポートがジャミングされ、こんなところに飛ばされてしまいました。ですが、結果オーライです。)」
「嘘つけ!絶対何か企んでるでしょ!それと、早急にこの区から出てって!EDEN財団は狩人育成機構とは対立関係ってことぐらいしかしらないけど、あんたたちのやってることが悪いことだってのはわかる。そんな危険人物を狩るのも、ハンターの勤め!」
「何とも気がお強い。わかりました。いいでしょう、私を完膚なきまでに叩きのめせたら、早急に出ていって差し上げましょう。(親に似て何とも我々に対して冷たい。)」
そう言ってノートパソコンを取り出すと、コンセントに向かってコードが伸びる。そして、パソコンから伸びるもう一つの先がテープになっているコードを近くの宝石があしらわれたネックレスへと貼り付ける。
「A-Z:Robot、インストール。」
ノートパソコンのエンターキーを押す。そうすると、シールの張られた宝石がひとりでに動き始めると、宙に浮き、形を変形させ、人型へとなっていく。
『ジェムサヴィター。ジェムサヴィター。』
人型になったそれは、体の全身が宝石のような光沢を持ち、両手に備え付けられたガトリングガンには宝石の装飾があしらわれ、サヴィターの顔はダイヤモンドを彷彿とさせる。
「さあ、ジェムサヴィター。敵を排除です。」
「りょうか〜い!君たちにはキラキラが足りな〜い!このジェムサヴィターが直々に飾り付けてあげましょ〜う!」
「話し方が流暢になってない?」
「いいことに気づきましたね。サヴィターは周りの環境などから自己進化を行います。今回の場合、この店の店主の影響でしょうね。まずは性能テストです。」
「宝石弾、全弾発射〜!」
ジェムサヴィターの両手のガトリングガンから宝石の弾丸が舞う。一撃一撃が重いそれらの弾丸は、店の壁を最も簡単に抉り取り、穴を開ける。キリエは、廻り撃つ黒金の盾を展開して乱射される宝石の被弾を防ぐ。
「提案:みなさん、一旦外へ。」
「わかってる!」
「逃しませんよ、レッサーサヴィターもお出ししてあげましょう。店主のように簡単には終わらせません。」
外に移動した三人は、レッサーサヴィターを対処しながらジェムサヴィターの攻撃を避け続ける。
「レッサーなんとかってやつでも面倒くさいのに、あの宝石お化けの攻撃のせいでうまく立ち回れない!」
「通報はしました。ハンターが来るまでの間の辛抱です。」
「それにしても、数が多すぎますわ!」
「周りへの配慮を土返しするのであれば、すぐに一掃可能。」
「キリコちゃん、それお願い!松本ちょっとこっちに来なさい!」
「ちょ、ちょっとキリエ!離しなさい!」
「キリコちゃんの巻き添えくらいたいの?いいから後ろに隠れて!廻り撃つ黒金の盾!ブートマグネ・NⅠ、SⅠ!」
キリエはブートマグネによって両腕に装備された廻り撃つ黒金の盾を引き合わせることで一つの大盾へと変える。そしてキリコが動き出す。
「変形:ブラックダイバー・完全装備」
全身にオレンジのラインが入った黒いサイバースーツに覆われると同時に丸ノコが付いた戦闘機の翼が背中に生える。両手は銀色に染まりながら指の一本一本が銃の銃口のような穴が開き、右肩には顔程の大きさのドリルが備え付けられれいる。キリコはその銃口をレッサーサヴィターたちに向ける。
「ターゲットロックオン。最終攻撃:マックスブラスター!」
銃口から放たれた氷結弾がレッサーサヴィターたちを瞬時に凍らせ、動きを封じる。そして、キリコは空中に飛び出したかと思うと右肩のドリルが右手に移動させ、氷漬けにされたレッサーサヴィターたちに突進する。両翼の先に付けられた丸ノコとドリルが高速回転し、レッサーサヴィターたちを氷ごと破壊しながら薙ぎ払う。
「面白いZONEをお待ちのようですね、マドモアゼルたち。特に、そこの気が強そうに見えて実は内心思ってることを打ち明けることができずに思い悩んでいるマドモアゼル!」
「(誰のこと?)」
「(否定:当機体ではありませんね)」
「(私のことではありませんわ。)」
「その磁石ように引き合わせる能力のZONE。見覚えがありますね。確か最後に見たのは十年前だったでしょうか……」
「私のZONEを見たことがある……?ちょっとそれどういうことよ!」
「おや、随分と食いつきがいいですね。気になりますか?敵対組織であるEDEN財団の悪魔の囁きに乗せられるのはハンターの卵として非常に未熟です。まさしくハーフボイルド。あなたのお父上を見ている気分です。」
「お父さんを知っているの!?」
「一方的で話を聞かず、興味があることには周りを顧みずにすぐに首を突っ込む。本当にあの二人の子供だとしみじみ思いますねえ。」
「母親のことも知ってるの……?あんたたちEDEN財団は一体何なの?」
「私たちEDEN財団を簡単に表すなら、探究者。自分の研究と興味が尽きぬ限り動き、情報を集め、実験する。それが例え法に触れ、人道を外れ、道徳を踏み躙るものであってもね。」
「要約:マッドサイエンティスト集団。」
「なおさら、ここから出てってもらう必要がありますことよ!」
「うん、ここから出てって情報洗いざらい吐いてもらう!」
「やってみなさい。私の可愛いノミちゃん!」
志治矢が戦闘態勢に入り、さらに大量のレッサーサヴィターを呼び出した次の瞬間。車輪の回転音を響かせながらモンスタートラックが志治矢の方へと突っ込んで行く。ドリフトしながらレッサーサヴィターを蹴散らすと、車のドアから四人の人影が現れる。
「ガハハ!ヒーロー登場!」
そう高らかに宣言したのはレイだった。
「それを言うならハンターだと思うんだけど。」
そこにクオンがツッコミを入れ、マイアが状況を見て飛雷に声をかける。
「ジョーカー。あの服装EDEN財団だ。お前がいくか?」
「もちろんだ♤」
「くそっ。応援を呼ばれていましたか。これはまた面倒な……」
「通報が入ったからな。速攻で来てっやたぜ!」
「ここは僕たちハンターに任せて、皆さんは避難してください。」
「そういうことだから♧マイア、彼女たちの安全確保よろしく♡」
「了解。深淵の渡航者、発動。」
マイアがそう言うと、キリエたちの足元の影の色が深淵のように徐々に黒くなり始めると、泥沼に引きづり込まれたかのような感触と共に、体が影の中へ引き込まれる。
「ちょ、ちょっと何よこれ!?」
「お前たちを闇に引き込み守るだけだ。安心して身を委ねろ。」
「ワードの一言一言が安心ならないんですけど!?あっ、もう体の半分が闇の中に……ってか誰か足引っ張ってない!?明らかに手で引っ張られてるよねこれ!?」
「先に行った友達だろう。早く全身入れ。」
「やっぱり信用できな……あれ?」
足を引っ張られ、キリエが落ちた先は車の中だった。そして車内には松本とキリコがちょこんと座っていた。
「あれ?ここは?」
「おそらく、あのモンスタートラックの中ですわ。」
「頑丈でカッコいい。安全。」
「キリコちゃんってやっぱり機械に弱いのね。」
「皆さん、窓の外を!すごいことになってますわよ!?」
悪いこと、この世全ての嫌なこと、大体がEDEN財団に収束していく
キリエが購入した服について補足
肩が出てて、ゴスロリじゃないけど、ゴスロリっぽい赤黒の服に長い少しブカブカとした灰色のジーンズです。