第72話 オカマの美的センスは異常にして至高
「可愛らしくなったわね。前に比べて暗い雰囲気からマシになった気がしましてよ。次は服屋の方に行くわよ。」
「服屋?」
「そうですわ。頭の次は身なり。あの堅物のハートをガッチリと掴むようなコーデを探しに行くわよ。」
「わかったわよ。」
車で移動して数分。服屋の前に三人は移動をしたのだが、その店の看板には「こうでねぇと」と書かれ、緑髪の筋肉モリモリマッチョマンが、ぱっつんぱっつんのピンク色のスーツを着た広告看板が悪い意味で目を引く、イヤンパクトのなる店であった。
「ねえ、デジャブを感じるのだけど。まさか、ここもオカマが仕切ってるんじゃないでしょうね?」
「そうですが、何か?」
「センスを疑うわ」
「それには因果関係などはないと考えられますが。それより、私たち以外にもお客さんがいるようですよ。」
「「え??」」
駐車場には、三人が乗って来たリムジン以外にもう一台の、色々とゴツイモンスタートラックが駐車されていた。セレブ的な見た感じはなく、どちらかといったら過酷な環境に耐えれるような頑丈な作りになっており、キリコが目を輝かせながら見ていた。
「キリコちゃん、何見惚れてるの?」
「あのディテールに何物も貫かせない分厚い装甲……」
「なあ、俺たちの車見て見惚れてんのか?」
「そうっぽいのよね。これから服を買おうって時に……え、あんた誰!?」
キリエの隣に立っていたのは、黒いスーツを着た、ぼさぼさのオオカミのような白髪は一部赤くの星谷程に野性味が溢れた青年だった。無邪気な子供に近い感性で話しかけた青年は、頭に?を浮かべてキリエの方を覗き込む。
「どうした?具合でも悪いのか?」
「い、いや、ちょっと近いというか……」
「あなた誰ですの?」
「オレの名前はレイってんだ!よろしくな!」
バカでかい声で挨拶をかますレイの対処に困っていると、店から出てきたぶかぶかの短めの白いポンチョを着た背が少し高い茶髪の中性的な見た目の青年に耳を抓まれる。
「レイ!他の人に迷惑かけない!あっ、すいません。うちの駄犬が……」
「いたたた!おい、クオン!耳を引っ張るな!地味に痛いからやめて~」
「ああ、ほんとうすいません。」
クオンと言われた青年はペコペコと頭を下げて、レイを連れて車に乗っていく。
「何だったんだ今の……?」
「知りませんわ。とにかく、お店に入るわよ。」
店の扉を開けて中に入る。そうすると「いらっしゃあ〜い」と声がかけられるが、店員らしき姿がどこにも見当たらない。どうやら、奥の着替え室で試着をしている人のアドバイスをしているようだった。
「うーん、やっぱりサイズ合わない?」
「困ったなあ♢これだとオーダーメイドになっちゃう?」
「そうねぇ、大きいサイズを探すよりは手間はかからないわ。寸法を図るから、お客さん手伝ってくれる?」
「うん」
「いい子だわぁ。アタシそういう子好きよ。」
「やめてくれ。」
「も〜う、い・け・ず。かわいいんだからぁ〜」
三人はこの光景に何を思うか。青髪高身長の塩顔イケメン、店長であろう筋肉モリモリマッチョのピンク色のスーツを着たパツパツオカマ、そして西洋の暗殺者風の黒いローブを着た無口な可愛げのある赤目のイケメン。思考を放棄するほうが自分たちのためになることを理解しながらも、「星谷を堕とすため」という大義が彼女らを動かす。
「質問:お時間ありますか?」
「ごめんね~!ちょっと待ってちょうだ~い。今、手が離せなくてえ。服でも見てて待っててちょうだ~い!」
「おや?誰かと思えばキリエちゃんじゃないか♢君たちも服を買いに来たのかい?」
「え……誰ですか?」
「ホ……?そっか素顔を見せるのは初めてだったね♤ボク、ジョーカー♡」
「ええ!?この塩顔イケメンが、あのジョーカーですの!?」
「そうだよ♪何なら名刺でもあげようか?」
「何だ、知り合いか?」
「うん♡ボクのお友達の養子♧マイア君、仲良くしてあげてね♢」
「よろしく……」
「アハハ…よ、よろしく……」
凄まじい光景に頭がやられたキリエは着せ替え人形のように固まっており、先に情報処理を終えたキリコが服を持って試着室でキリエを着替えさせる。
「着せ替え:リボンラメシアーショートシャツのホワイトにパンツはデニムジーンズ。清楚系。」
「あなた清楚って感じじゃないし、髪色的に似合わないですわ。」
「張っ倒すわよ?」
「次はこれ、十字架クモレース角襟ゴシック風ブラウスにバラレースフリルレースアップティアードスカートと厚底ブーツ。通称:地雷系。」
「似合ってる。ほんとに地雷系って感じ。着てる感じどうかしら?」
「色合い的には私もいいと思うけど、全体的に重い。というかブーツまで合わせると本当に重い。却下ね、却下。」
「ならこれは?白黒チェックにネイビーのデニムパンツと白スニーカーのカジュアル系。」
「格式張っていないリラックス感のある感じだけど、これをデートで着ていくなら最終的に迷って時間なくて手に取る感じかな。いいと思うけど一旦保留。」
「今度は、私が選びますわ!これを着て見なさい!」
「和服!?馬鹿じゃないの?」
「ならこんなのはどうかしらぁん!」
店長らしきオカマがそう割り込みながらキリエに服を手渡す。
「ごめんなさいね、時間かかっちゃって。店長の剛力剛。ゴウちゃんって呼んでねん☆この子に合う服よね、容姿してあげたわ。一度来てみてちょうだいよん!」
そう言われるがままに試着室へとキリエが入って行く。
「アタシのZONE:空想の縫物は材料さえあればどんな服でも創れちゃうのん。でも、イメージが湧かないと作れないから、こうやって店を出して客をちゃんと目で見てイメージするのよん。松本ちゃんの服もアタシが仕立てたのよん。アナタも一着どうかしら?お安くしとくわよん?」
「感謝:当機体の服は千の貌持つ化身の一人が作ってくださるので間に合っています。またここに訪れた時に購入を検討します。」
少しの雑談をしていると着替えたキリエが試着室から出てくる。
「赤黒チェック柄のOリングジッパーのショルダーカットブラウスの長袖トップスにグレーのハイウエストバギーパンツ。スニーカーは据え置きだけど、中々に似合ってるわぁ!」
「二人はどう思う?」
「素敵です。」
「いいと思いますわ。」
「そ、そこまで言うなら……買うか。」
「マイドアリ〜!!」
雄々しい名前のオカマっていいよね。天狗とキャラ被るんじゃないかって?うるせえ!
追記
あれ?評価が落ちて感想が減っている?萎えるぜ……ダンダダンダンダダンダンダダンダンダダンダンダダン