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第63話 デートには、尾行とトラブルを

 自然な流れでパフェを食べに行くという星谷とのデートを始めたキリエを若干遠くから、サングラスをかけ、スマホを片手に監視する存在がいた。ガマ、キリコ、松本の三人である。


「(こちら、コードネーム:カエル。対象が、移動を開始したで。どうぞ)」


「(たかが尾行に、これをやる必要ありますの?)」


「(こちら、コードネーム:機械娘。雰囲気作りは大事だと、ラーニングしましたので。どうぞ)」


「(もう、わかりましたわ。こちら、コードネーム:ビューティー。二人に接近して盗聴できる方はいませんの?どうぞですわ)」


「(こちら、カエル。ワイが接近するで、隠密は得意なんや。どうぞ)」


「(こちら、機械娘。承認します。作戦を実行してください。オーバー)」


 ガマは、音を殺し、周りに同化するように姿を晦ましながら、歩く二人の後を尾け、スマホの無線を繋いで盗聴する。






「奢るにしたって、どこ行きたい?時間はあるし、北部にでも行くか?」


「あんた金はあるんでしょうね?あそこら辺のお店、結構高いけど。」


「大丈夫だって、前に売っ払ったゲーム機と紙媒体の漫画の金が残ってる。」


「そういうのどこで買い取ってもらってんのよ。」


「秘密だ。」


「ケチ臭いなー吐きなさいよー」


「体を揺さぶるな……し、しまった!両手で体を触れられているッ!?」


「えへへへ、もう逃げられなーい。」


「や、野郎ッ!何て湿度の高さしてんだよ!離れろって、谷間に腕を挟み込むな!蒸れて服がびしょびしょになる!」


「奢るまで離さないもーん」






「(ものごっついちゃつい取るな。)」


「(嫉妬で狂いそうですわ)」


「(女の嫉妬は怖いもんやな)」


「(同感:確かに羨ましい。)」


「(恋のライバルがここにもいましたの!?きゃっ!?……キリコさん!?ちょ、ちょっと、どこを触ってらっしゃるの!?)」


「(どうしましょう。このまま腕を変形させてペンチでもぎ取ってしまいましょうか。)」


「(そっちやったか。まあ、二人ともデカい部類や。ワイも気持ちはよくわかるで。というか、キリコはんのZONEなら自由自在に変えれそうやけどできないんか?)」


「(沈黙を推奨します(シャラップ))」


「(物凄い殺意や。電話越しやっちゅうのに一瞬ビビッてもうた……って!?あ、あいつらは!)」


 ガマは、目線の先の修羅場を目撃する。星谷とキリエがスマホを見ながら店の場所を探している最中、星谷たちの方に歩いてくる城ヶ崎と蒼樹の姿だった。幸いにも、二人は目の前のいちゃつくカップルに目もくれず、楽しく談笑をしている様子だった。ガマは、「おもろい事になりそうやな」と笑いを必死に抑え様子を窺い、始まるであろうトラブルの盗聴を試みる。


「チューニングに結構時間が掛かったな。レンジ、燃料補給に行くぞ。」


「そうだな、確かここら辺に喫茶店があったはずだ。そこで補給しよう。」


 こいつら、燃料補給って単語を「飯を食いに行く」って意味で使っとる。どこまで、バイク脳しとるんや?


「まだ着かないのー?」


「うっせ、地図によるとここら辺にあるはず……あ!?」


「どうしたの?」


「隠れるぞ!」


「えっ、ちょっ!?」


 星谷は、キリエの手を引っ張り、店の手前の路地にキリエ諸共自分の体を押し込み、身を隠す。理解が追い付かないキリエは、口を出そうとするも、一つも隙間もない完全な密着状態というこの状況に赤面しそれどころではなくなっている。


「あわわわ(星谷の体、すごく脈打ってる。緊張してるのかな?もしかして、ここでするつもり!?)」


「はぁはぁ…(やべえ…この状況で城ヶ崎だと!?しかも、向こうは二人組。どうやらキリエも気付いたらしいな、緊張してるのか妙に震えてやがる。見つかるなよ…頼む頼む頼む!)」


 必死に別々の期待を抱く二人、その状況に耐えられず、一度距離を離し盛大に口を塞ぎながら笑いそうになるガマを〆るキリコ&松本。そして、何も知らない城ケ崎。だが、この不思議な状況に1人気づいている者がいた。


「ジン、着いたぞ。」


「そうか……また使ったな。今日は俺が奢る。それでいいな?」


「ああ。」


 蒼樹は城ヶ崎を店内へと促すと、二人は喫茶店へと入って行く。


「(あれ?あいつら、こんなに店の近くまで来とったか?)」


 城ヶ崎たちは、いつの間にか店の前に着いていた。それは、紛れもない事実だが、瞬間移動とも違う、不可解なその事実にガマたちは違和感を感じた。


「(キリコさん、データは残っておりますの?)」


「(情報処理システムにエラーが出ています。少々お待ちください。)」


「(キリコはんも気づいとらん……いや、処理をしきれんほどの事象が起きたっちゅうんか。)」


「あれ?俺たち、路上にいたっけ?」


「路地にいたはずよね?」


「まあ、とりあえず店は目の前だし、入るか?」


「そうね……なんだったのかしら?」






 周囲の索敵には、時間はそうかからなかった。かかった時間は、数秒程度。それは、過ぎた時間であり、経過させた時間。俺のZONEを使えば、数秒あれば完璧に状況を把握できる。現状、危険と判断できるような状況ではなかった。おそらく、別件。俺たちと接触を図ろうとしているわけではないのだろう。


「どうしたレンジ、食わないのか?」


「すまん、考え事をしていた。」


 あいつらにとって、俺たちが星谷と戦闘を行うのは都合がいい。それは逆説的に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それは、俺たちにとっても大きなメリットだ。俺たちの目標(ゴール)へと到達するためには、癪ではあるがハンターという通過点を突破しなくてはならない。そのための力を、星谷世一を使って引き出す!


「……このサンドイッチ美味いな。」


「珍しいな、レンジが料理の感想を言うのは。」


「そうか?」






 城ヶ崎たちが、店を出たのは俺とキリエが店に入ってから5分もしないうちだった。変な接触は避けたいし、どうやら向こうは築いていない様子だったからよかった。もし、完全に鉢合わせていたらどんなことが起きたのだろうか?そんな妄想にふけって、キリエの注文を右耳から左耳へと聞き流しているとドンッ!というう音と共に凄まじい大きさのパフェがテーブルの上へと乗せられる。


「は?」


「は?って何よ。」


「いや……は?」


 脳の処理が追いつかん。このパフェ……デカすぎんだろ!?


 公園で本気出して作れそうな砂場の城くらいの大きさの巨大パフェが、俺とキリエの顔を遮るかのように鎮座している。パフェを囲むようにイチゴが置かれ、バニラ、チョコ、抹茶、イチゴの四等分に分かれた巨大アイスの上にプリン、そしてさらにその上に生クリームが並々ならぬ量で渦巻き、クリスマスツリーの飾りつけのように色とりどりの果物が乗せられている。


「こちら、王者の山頂(レックスパフェ)とアイスコーヒー二つでございます。ごゆっくりどうぞ。」


「なあ、これお前が注文したのか…?」


「そうだけど?」


「チャレンジメニューか何かか?」


「この店で、一番高いものをって頼んだだけよ?」


「それって、もちろん……」


「あんたの奢りよ。」


 俺の財布が……


「何だ、その仕草」


「わかんない?待ってんのよ。」


「ああ、なるほど。はい、あーん……あげなーい!!!うーん、結構いけるなこのパフェ。ホイップの甘味と果物の酸味がグッドだ……あ」


 ダメだ。意地悪しすぎたから本当にアーンのくだりをやろうとしたら、もう一人でにむっしゃむっしゃしてやがる。これ、全部を食べ切るつもりなのか……?


 約一時間後


「はぁはぁ……もう食えないぜ……」


 腹がはち切れそうなほどの満腹感とホイップクリームの甘さに耐えきれずに吐きそうになる。よく胃に収められたと自分を褒めてやりたいが、そんな気力さえ沸かない。キリエは、糖分の摂取過多で眠っている。


 グロッキー状態の俺は、コーヒーか何か頼んで休もうとメニューを確認していると店員がテーブルに近づき


「あちらのお客様からです。」


 そう言って目の前にちょっと高そうなコーヒーが出される。


「あちら……?」


 店員が指した方に目を向けると、窓際で優雅にコーヒーブレイクをしている神楽坂音色がいた。神楽坂は、こちらの目線に気づくと小さく手を振って返す。


「何であいつここにいるんだ……?」


 神楽坂は席を立ち、キリエが寝ている隙に俺の隣に座って来た。


「やあ、また会ったね。星谷君。」


「何でお前がここにいる?」


「何でって、僕はここの喫茶店の常連でね。小さい頃から通ってるお気に入りなんだ。」


 まあ、納得いく。ここは北部だ、神楽坂がいたとしてもおかしくはない。だが、なぜわざわざコンタクトを取りに来たんだ?


「星谷君は今デート中だったりするのかな?」


「んあ?デート?いやいや、俺はあいつにパフェを奢りに来ただけで、デートじゃねえよ。」


「じゃあ、星谷君のことを付き回ってる、あの三人組はどう説明するんだい?」


 神楽坂が指を指した方向を見ると、穴の開けた新聞紙からこちらを覗くガマ、キリコ、松本の姿があった。


「あいつら何やってんだ?」


「君と目の前の子とのデートを観察しに来たんじゃないの?」


「ストーカーかよ。で、お前の目的は何だよ。わざわざコンタクトを取りに来たってことは、何か目的があってだろ。言えよ。」


 神楽坂は、目を丸くし笑いながら答えた。


「嫌だなあ、僕は、君とただお喋りがしたいだけなのに。」


「おしゃべりだ?」


「そう、お喋り。まだ、会ったばっかりだから交流を深めたいと思ってね。」


「……まあ、いいぜ。」


 まだ、俺は神楽坂のことを知らない。そして、編入した俺のことも神楽坂はまだ詳しくは知らないはず。ここでできる限り神楽坂の情報を引き出して、球技大会優勝の糸口を見つけ出す。


「前々というか、お前の存在を知ってから疑問に思ってたことがある。お前のZONEについてだ。単刀直入に聞くが、お前のZONEは精神操作か?」


「残念、ハズレだよ。僕のZONEは、一応肉体系に分類される。」


「一応だと?ということは、ひ…オルキス先生と同じく別系統のZONEも持ってるってことか...…なら、その能力は?」


「うーん、それは教えられないかな。」


「つまり、カラクリが解けると弱体化するようなZONEってことか?」


「いいや、これを言うと君たちが勝ち目なんてないって悟っちゃうからね。」


「あ?舐めプってことか?こっちは、クラス総出でA+相当のハンターを相手取れるほどには強い。お前のZONEで負け確だと思うほど弱くはないぜ。」


「ふーん」


 少しの沈黙の後、再び神楽坂は話始める。


「ときに、この北部に伝わる英雄の話を知ってるかい?」


「……英雄の話?」


「北部、いや、この七区で起きた惨劇。七区襲撃事件。そしてこの事件の中心には、三人の英雄がいたとされる。南部に流れ込んだクリーチャーを排除し続けた果てに力尽き、戦死したとされる紅き豪速の戦士「レッドエックス」。中部に侵入したネオクリーチャーと戦い、覚醒を果たした。後に伝説となった炎魔王「オルキス」。」


「そこまでは知ってる。そして最後の英雄の名前は聞いたことが無かった。神楽坂、お前は知ってるのか?」


「ああ、よく知ってるよ。そして、この北部に進軍したEDEN財団とクリーチャーたちを薙ぎ払い、EDEN財団職員に銃殺された白亜の恐竜……」


 神楽坂が、白亜の恐竜と言った瞬間にノイズが走る。頭からごっそりと何かが欠落したような感覚とそれを抑え込もうとするように頭痛が始まる。思い出しても、思い出しても、何度もノイズと頭痛が襲い神楽坂の言葉が聞き取ることができない。なぜだかその全てが不快に感じるような気もする。


「すまん、もう帰る。」


 星谷は、繰り返される頭痛に意識が朦朧としながらも、財布から金を取り出し机へと叩きつけるように置き、足を踏ん張り、この状況下でも爆睡しているキリエをガマたちに預け店を出た。


「あ、行っちゃったか……残念だな。もっとお話ししたかったのに……」


 神楽坂は、心底残念そうな顔をして会計をしようと店員を呼ぶ。一部始終を監視していたガマが席を立ち、ずかずかと神楽坂の方へと足を進め、隣に立つ。


「神楽坂音色、あんた星谷はんに何をしたんや!」


「えっと、君は蟇野君だったね。どうしたんだい?」


「どうしたもこうしたもあらへん。お前は、星谷はんに何をしたって聞いとるんや。」


「僕は何もしてないよ。ただ、お話をしただけ。それは、保証しよう。」


「だったら!何で星谷はんは、あんな生気のないような顔をして店を出たんや!たらふく飯を食って気持ちが悪くてもあんな顔にはならへん!」


 神楽坂の胸ぐらを掴む。店内がざわつき、いくつもの目線がガマたちへと向かう。だが、次の瞬間がガマたちの見たものは、想像をはるかに絶した光景だった。


「本当に話をしただけだよ。」


 ガマは、胸ぐらを掴まれていた。それもただ胸ぐらを掴み返したのではない。立ち位置が逆になっている。神楽坂は胸ぐらを掴まれてはおらず、ガマだけが胸ぐらを掴まれている。


「な、何がどうなっとるんや…!?」


「キリコさん、見えましたか?」


「ありえません、一瞬にして、いや一瞬もありません。0秒です。」


「どういうことですの?」


「神楽坂は、コンマもない光以上の速さで、行動を行いました。」

あれ?キリエってヒロインとして魅力がない?修正しなきゃ……せや、ヒロインイメチェン回をいつか作ろう


投稿遅れてごめんない。元々2話のものを無理ありガッチャンコしたことに始まり、マスターデュエルで遊星とジャックの声真似しながらキャラデッキを回してたり、ゲームマーケットに行ってたり、タカキも頑張ってたりして投稿する時間が取れませんでした。

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― 新着の感想 ―
ふぅ...やっと追いついた...ボリューミーだぜ。 ...二週目行ってきまーす!
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