第61話 カエルの疑問
ガマ視点は、いつ書いても楽しい
あかん、キリエの顔に生気があらへん。まるで、機械みたいに次から次へと皿の上に置かれたたこ焼きを口へ運んどる。
ワイと星谷は、キリエの爪楊枝が止まらないように高速でたこ焼きを作りながら話す。もちろん、ワイらの分も作りながら。
「これ、俺が悪いのか……?」
「星谷はん。まじでキリエからの好意に気付いとらんかったんか?」
「だって、キリエは家族だ。手を出すとか考えられない。」
「手を出して本当の家族にさせたろうか、あぁん?」
「食欲失せる話すんな。でも、恋しちゃったかもしれないって言っても、頭ではよくわからねえんだ。」
「どうゆうことや?」
「無意識のうちに体が反応するというか、頭が命令出しても、体が言う事聞かない。」
「体がバグっとるとでも言いたいんか?」
「そんな感じ」
重症やな、両方とも。
「まあ、体が言う事聞かへんのは、ワイもなんとなく分かる。体が自分とは別の意思持っとって、制御できへんって言うなら猶更や。思考を預けてみるのもアリだとは思うで?というか、星谷はんの場合だと、前々から体に預けとるやろ?」
「そりゃ戦闘する時とかはそうだけど、今回ばかりは違う感じがするんだ。」
「なるほど、大体わかったで。」
「わかったなら教えてくれよ。」
「嫌や。苦しんどるその様が滑稽過ぎておもろいんや。もうちょっとぐらい楽しませてくれや。」
「意地悪すぎない?」
「ワイは、こういうもんやさかい。」
楽しいのは事実や。年相応の対処法やろ。友達に恋愛は傍から見れば、ドラマとか映画に等しい快楽や。それが、身内内で起こっとると思うと笑いが止まらへん。
「まあ、でも、仮に好きな人ができたとして、ここを離れるつもりもないかな。お前らともずっと一緒に居たいし。」
その一言にキリエの意識が戻る。大胆な告白しおったわ、一緒に居たいやと。それに関しては同感や。本当やったらワシも一緒に居たい。死ぬまで、こいつらとバカやっていたい。それが例え、本来の製造目的やなかったしても、任務やったとしても、本心からそう願うわ。
「そ、そうならいいのよ。ガマ、たこ焼きおかわり。」
「へいへい。」
「話せること話してスッキリしたか?」
「まあな。俺もたこ焼きおかわり!」
「星谷はんは、自分でやれ。」
「なんでさ!?」
この楽しいひと時が一体、いつ狂い始めるのかわからない。せやから、今を楽しむ。それが、ワシのポリシーや。あの事件の時に来おった、あの閻魔とかいう若造は何者や?
ガマは、自身の記憶をたどるも、仲間にそんな名前のやつはいなかったこと再確認する。妖魔傭兵団「モノノケ」。その正体、その素性、それは裏社会の住人、狩人育成機構の上層部でさえその情報を掴むことができない、文字通りの妖怪の如き傭兵集団。知れ渡っている情報として、構成員は、「土蜘蛛」「大蝦蟇」「大蛇」「九尾」「大嶽丸」「海法師」「天狗」「餓者髑髏」「猫又」の9名。そして、それぞれその妖怪を模った仮面を着けているということのみ。
「ワイ、もう腹いっぱいや。片付け頼むで。」
「「はーい」」
とりあえずは、抜け出せたな。十年ぶりに連絡とってみるか。あいつらに……
三区近くの自然界を闊歩する集団がいた。集団と言っても、その数はたったの四人と一匹。区間の移動は、基本的に一般人などは、それぞれの区に設置された地下鉄、またはワープゲートを使用し、区間を移動する。だが、それら許されるのは表の社会を生きる者たち。裏の社会で生きる者たちの移動手段は、非合法に設置されたワープゲート。または、自然界を経由して区間を移動する。
そして、この三区の周辺は、七区周辺の木々が生い茂るような自然界ではない。太陽が燦々と照り付ける荒野である。
「俺たち兄弟が一堂に会するのは、一体何年ぶりだろうな?」
土蜘蛛が口を開く。
「九年と四ヶ月の約十年……と言っても、あーしが知る限り、メンバーは何人か来ないらしいけど。」
それに返答したのは、青いストレートヘアに凛とした顔つき。目元にホクロがある?袈裟を着崩しており、胸元は開き、スカートのように着ており、ずっとスマホをいじってる、高校三年くらいの女子だった。
「それでも過半数以上が集まるのは久しぶりですねえ。拙僧、楽しみで仕方がありませんよ。」
骨格標本のような見た目の完全な骨人間に侍の服を着せたような見た目の骨が返す。
「えーダルいんですけど、オレっち的にはもう家帰ってゴロゴロしたいんだけどニャー。」
服は白衣の下に「I LOVE 鮭」と書かれたシャツを着た、人間の半分ほどの大きさをした尻尾が二又の赤い猫が、大男の上に乗り、鮭とばを齧りながら独り言をぼやく
「ぶはははは!俺様が担いでるんだから我慢しろ!」
青黒い髪を後頭部で束ね、ゴツイ顔の真ん中に大きなバッテンの傷があり、頭に角が生えている。褐色肌で、衣服は袖がない髪色と同様の色の道着を身に纏っており、ベルト代わりに荒縄で縛り、草鞋を履いている。首に大きな朱色の数珠をかけ、背中には刺々しい金棒と巨大な斧を背負った大男は、自分の上に乗っかっている猫の頭をわしゃわしゃしながら言った。
「大蝦蟇はどうしてこないのかな?あーしは別に気にしないけど、土蜘蛛は何か聞いてないの?」
「俺に聞かれてもなあ……」
「ぶはははは!おいおい土蜘蛛、お前が情報収集担当じゃなかったか?」
「基本的に兄弟の情報は詮索しないようにしてんだ。大目に見てくれよな兄弟?」
「あいつの自由行動を許していいのかニャ?」
「まあ、あんなやつだが強いのは確かだ。まあ、かれこれ十年会ってないけど。今頃何してんのかね?」
「モノノケからは抜けてないんでしょ?だったらいいじゃない。」
「まあ、正確に言えば抜けれないだがな!ぶはははは!」
「死んでないと良いんだがニャー」
「拙僧もそう思います。」
「まあ、あいつが帰って来たら来たで、一悶着ありそうなのがなあ」
「何で?」
「どういうことだ?」
「真っ先に否定するだろうなって思っただけさ。今のモノノケのこと。」
そう土蜘蛛が言いながら振り返った道には、薙ぎ倒された数十体のクリーチャーが転がっていた。




