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第57話 決着と到着

「(お前ら、今どんな状況だ?)」


「(上空)」


「(姉さんとチャンバラってる)」


「(連携のクソもねぇな。だが、時間は稼げた。キリエたちに繋げるために、一斉に全力をぶち込むぞ!)」


「行くぜ!機械剣(アダプター)、マンティスガントレット!合体!」


 機械剣(アダプター)にマンティスガントレットのブレードを連結させる。どうやら、このと機械剣(アダプター)は本多さんの遊び心か、マンティスガントレットと互換性がある。持ち手部分同士を繋ぎ合わせることで、機械剣(アダプター):双刃剣(そうじんけん)モードのような状態にできる。


機械剣(アダプター):蟷螂(マンティス)モード!からの、パージボルト!」


 そして、連結した機械剣(アダプター):蟷螂(マンティス)モードに、ガントレットに充電していた電気を流し込むことで刀身が通電し、青白い光を放つ。


「さあ、火野さん!食らいやがれ、俺の…いや、俺たちの全力!」


 火野さんの火炎弾に合わせて地面を強く踏み付けるような足踏みを行う八極拳の技の一つである震脚(しんきゃく)によって回避と同時に距離を詰め、過剰なまでのカフェインとオーバーゾーンによって引き伸ばされた思考の中で最適解を模索する。


 剣を持たない火野さんを殴る上で考慮すべき点は、火野さんの分厚い戦車の装甲ような鎧甲冑。これまでの攻撃で火野さん本体へのダメージを抑えていた鎧。流石にどこかしらボロが出てきているはず。そこをパージボルトで一点集中攻撃すれば、突破口は開ける!


 目を凝らし、細部に至るまでしっかりと、火野さんの鎧を観察する。佐々木の不完全ながらも二度も放った燕返し、先の巴さんの斬撃、今までのダメージが蓄積された箇所……つまりは胴体!


「(お前ら!一斉に腹を狙って攻撃だ!)」


「「(おう!)」」


 巴さんが火野さんを惹きつけている間に入り込み、震脚のスピードを上乗せした機械剣(アダプター):蟷螂(マンティス)モードでの超連撃を叩き込む。


阿修羅電斬撃(アシュラ・ザ・ボルト)!!!うぉぉぉらぁぁぁぁ!!!」


 胴に向けて連続で斬りつける。電気と火、二つの属性を帯びた機械剣(アダプター):蟷螂(マンティス)モードの連撃によって火野さんはよろめく。


「ッシャオラ!」


 手応えに喜びの叫びを上げ、一瞬気が緩む。そして脳を酷使した影響か糖分が切れる。


「あ…まず…い」


 火野さんはその隙を見過ごさなかった。フラフラ状態にも関わらず、俺を蹴り飛ばす。


「ぐはっ…行け!ガロウ!」


 蹴りの勢いで戦線を離脱すると同時に上空に待機?していたガロウに合図を送る。


「ウォォォォン!」


 空中からとてつもない大きさのオオカミ、フェンリルが吠える。そしてそのフェンリルは火野さんを前脚で思いっ切り踏みつける。


「……ッ!」


 火野さんは炎で作った武装を解除し、両手でガロウの前足を持ち上げ、耐える。そこに火野さんの大剣を持った巴が追撃を行う。


「燃え上がれ、私の気持ち。燃え上がれ、私の闘志。燃え上がれ、私の炎。燃え上がれ、私!全部を出し切る、今ここで!」


 熱き炎が、燈る。火野さんの大剣、魔王剣と言ったか。それがまるで巴さんの心に呼応するように、メラメラとその刀身に澄み切った炎が燈る。巴はそれを振り上げ、そして落とした。


「――烈火大斬撃(れっかだいざんげき)!!!」


 振り下ろされたそれは、火野さんの鎧に深い傷を負わせた。だが、まだ鎧は貫けていない。振り下ろした衝撃を引きずっている状態の巴に、火野さんはガロウの前脚から脱出した後に、巴の首元に手刀を入れて気絶させる。


「まだまだ、甘い。」


「うっ…ここで倒せなかったのは悔しいけど、後は頼んだわ…」


 ガロウは、火野さんが脱出をしたことを把握すると人間の姿に戻る。その姿はまるで狼男のような風貌だったが、ガロウとはっきり認識できるくらいには面影が残っていた。


「親父…技、使わせてもらうぜ…」


 そう言うとガロウは右手に力を込める。それは徐々に膨れ上がり、やがて全てを飲み込むかのような闇の塊へと変わる。


「黒条流・一式――」


 ガロウは火野さんに瞬間影移動(シャドウシフト)で一瞬にして急接近し、ヒビの入った鎧に向けて拳を前へと突き出す。


「――破壊」


 闇が放たれる。それは瞬く間に火野さんの鎧へと到達すると、鎧をまるで食べ物と認識しているかのようにその表面を飲み込んでいく。そして、火野さんの鎧に穴が開く。


「開いたぜ!――ぐふっ!?」


 ガロウの体に衝撃が走る。拳を入れていたのは火野さんも同じだった。ガロウの拳を鎧で受け止めながら、がら空き状態のガロウの腹に右拳をぶち込んでいた。ガロウの拳を受け止めた火野さんだったが、まだHPが半分も行っていないんだろう。余裕と、ここまで打ち込んだ技の威力に満足の表情を浮かべている。


「ここまでよくやったと褒めてやりたいところだ。」


 火野さんが口を開く。授業終了まで、あと1分ほどに差し掛かっている。普通なら、ここから火野さんの残りHPを半分以上まで削り切ることは不可能に近い。だが、俺たちはその不可能に対抗できる手段をこの時間中で稼いできた。3-A組全員の力で溜め込んだこの一撃を今ここで解き放つ!











 数日前のこと、俺はキリエ、キリコ、天野の三人の作戦を聞きながらハイウェイオアシスの広場まで歩いていた。


「グルラで聞いた話だが、そんなの本当にできんのか?」


「YES:私が常時演算処理を行いながら、天野さんの電力の供給指示とキリエさんの磁力操作指示を行えば可能。」


「で、一度試しはしたのか?そのままだと机上の空論になるんだが。」


「そこは大丈夫。放課後にスケール小さ目でやってみたらうまくできた。」


「今日はその電力を上げて、主砲を大きくした本番用のテストだから。」


「でも、なんで俺呼ばれたんだ?」


「あんたぐらいしか適人がいなかったのよ。」


「否:本当は…むぐっ」


「はーい、ちょっと黙ってようねー」


 何か言いそうだったキリコの口を、キリエがさっと背後に回って手で口を塞ぐ。それを呆れ顔で天野さんは見る。


「もごもごもご」


「なあ、大丈夫か?」


「大丈夫だよねーキリコちゃーん??」


 キリコは手で口を押さえながらも頷いていたのでたぶん大丈夫だろう。そして少し歩いた後、巨大な鉄板が通路に並ぶのが見えた。


「今回の実験で威力を確かめるために用意しました。素材はチタンなどの金属を組み合わせた超合金で作られています。現状、火野先生の鎧の強度に関するデータはありません。従って、この鉄板の貫通枚数によって計測します。では二人とも、準備お願いします。」


「うん」

「わかった」


 二人が準備を始める。そして巨大な大砲のような鉄の棒を用意すると天野はそこに雷雲を入れ、キリエは魅かれ合う二極(デュアルマグネ)で大砲に触れる。そしてキリコは指示を出し、二人のZONEの出力のサポートを行う。そしてそれを行うこと40分。ついに時が来る。


「チャージ完了。」


「疑似超電磁砲、発射!」


 キリエが引き金を引く、凄まじい怒号と共にレールガンが発射される。稲妻のような軌跡を残しながら進むそれは、目では追うことも儘ならないスピードで何枚もの鉄板をまるで子供が障子に指を通すように、いとも簡単に貫いていく。


「うぉぉぉ!すげえ!!!なあ、これなら火野さんも一撃だな…?」


 三人の方を見ると全員その場に居なかった。というか、吹き飛ばされていた。三人は超巨大な反動でハイウェイオアシスの入り口付近まで吹き飛ばされていた。だが、実験は成功と言っていいだろう。この破壊力なら火野さんにもダメージが入る。


「名づけは俺がしてもいいかーー!?」


「まかせるー!」











 そして現在に至る。


「みんな!手筈通りに行くぞ!」


「さあ、来てみろ。こそこそ準備していたお前たちの全力の一撃を当ててみろ!」


 手が空いている全員が主砲三人の後ろに回り込み、互いの背中を押して足を踏ん張る。三上の未来予知を確認し、火野さんに銃口を向ける。


「俺ちゃんと一緒に死のうぜー!火野先生ー!」


「いつの間に!?」


「俺ちゃんの気配遮断スキルはA+!日本人の必須技能!」


「お前はハーフだろ!というか、離れろ!」


「離さないのよぉーん!俺ちゃんの今の体は、績きゅんのおかげでガッチガチに裁縫されているッ!引きちぎることもできないパーフェクトなボディよッ!」


 何と言う粘着力。火野さんはギャグに回ると振り回されることが多いというかトンチキには乗ってしまうタイプ。アンディーの不死生と合わせてその場に固定させる。


「見せてあげよう、ラピュタの雷を!! 」


「それジブリのやつじゃ!?」


「キリエ、今だ!」


擬似超電磁砲(インドーラ)発射!」


 キリエが引き金を引く。レール間をキリエの磁力付与と天野さんの雷雲により疑似電磁石を生成、そして、それらが生む爆発的な加速によって主砲の中に入った砲弾が発射される。それはまるで、神が地に降り落とした裁きの落雷にして兵器としての超電磁砲(レールガン)そのもの。発射された特大の砲弾はレーザーのような雷の軌跡を残しながら突き進み、そして着弾し、着弾点から結構な大きさの爆発が起きる。


 そして、キリエが引き金を引いた直後、まるで筋肉モリモリのマッチョマンのタックルを真正面から受け止めるかのような強烈な反動が俺たちの体に走る。


「ぐっ…なんつう反動だ。全員でやらなきゃ腹から料理がでるとこだったぜ。」


「だが、手応えは十分だ。」


「やったのよね?」


「やりましたわ!」


「バッカ!フラグを…ッ!?」


 足音が聞こえる。それは爆心地からだ。一歩、また一歩とこちらに近づいてくるその足音は、アンディーのものではなかった。


「いい攻撃だった。」


「嘘だろ…」


「だが、私にはもう一歩届かなかったな。」


 そう言いながらレールガンで打ち出されたモノを片手でグシャっと握りつぶしながら歩いてくる。


「でも、中々にいい作戦だった。先生以外だったら初手でやられてたかもな!だが、半分には満たなかった。」


 そう言って火野さんは、デバイスを見せると、そこには2/5ほど削れた体力ゲージのようなものが映し出されていた。


「体力測定不能らしくてさ、ゲージ制にしてもらったんだ。」


「ま、負けた…」


 そうだろうとは薄々思っていた。28人で最強に挑んで勝ってみましょうだなんて、夢もまた夢だった。でも、見えたのは絶望じゃなかった。見据えるべき未来と姿だった。この結果は、俺たち一人一人の成長のきっかけになったと思う。ある意味先生にしてやられたんだろうか?


「先生、ところでアンディー君はどこに?」


「えっと、あそこにいる。」


 指を刺した場所にギャグマンガ風の地面の埋まり方をしている胴体と首が転がっていた。アンディーを救助し、全員が集まったところで火野さんが再度話し始めた。


「今回の模擬戦だが、私の勝ちで終わった訳じゃない。最初にも言ったが、評価点はチームワークだ。強大な敵に対し、チームワークを持って対処すること。ハンターとしての集団での狩りを想定とした模擬戦で、お前たちのチームワークはとてもいいものだった。」


「じゃあ、課題は!?」


「もちろん。用意してある。」


「「うげー」」


「だが、ただの課題じゃない。それは……」


 火野さんが話し出そうとしたその時、狩高のグラウンドは地獄と化した。

すんません。大学生活まだ慣れてなくて纏まった時間が取れなくて投稿遅れました。

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