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第48話 善の愉悦おじさん

「そんなことがあったのか、お前らよくやった!…あーいててて」


 二日酔いによって引き起こされる倦怠感と頭痛に苛まれながらも火野さんは俺たちの頭を撫でた。そして明日に新しい武器を作りに行こうと約束を交わし、本多製児に電話を一本入れた。


「これで戦力上昇だぜ!」


「ガマはもう武器の構想練った?私まだイメージ持てなくてさ、あんたはどんな武器作ってもらうの?」


「ワイは素直にメリケンサックみたいなやつやな。ワイの弾け飛ぶ衝撃(ノックバック)ってそれ単体でも攻撃力ある方やし、素手の火力をもうチョイ上げたいと思うてな。」


「長所を伸ばす感じか。」


「キリエはんのZONEやと、木製とかの非金属の方がええんとちゃうか?ZONEで下手に干渉されるくらいならそういう武器の方がええと思うで?」


「そうね、後天的に磁力を与えれる引かれ合う二極(デュアルマグネ)に引っ張られるのもあれだし。でも非金属武器って言われてもピンと来ないのよね。」


「俺の機械剣(アダプター)はロンズデーライトっていう磁石にはくっつかない素材でできてるけど、これ使えばいいんじゃないか?切れ味抜群、耐久性も問題なしの優れものだぞ?」


「いいわね、それで作ってもらおうかしら。でも武器かあー、私の武器って何が適してるんだろう…」


「手で触れることが条件やから難いな。いっそのこと星谷はんみたいなガントレットにしたらどうや?」


「あっ、ちょっと待って、天啓が降りた気がする。ちょっと自室で設計考えてくる!」


 ガッツポーズを取り、ドタドタとキリエは自室へと戻っていく。


「きりえのやつ、すごい楽しそうな顔してたな。」


「どれだけ凄いアイディアを思いついたんやろな。」


「なあ、ガマ。あの志治矢ノエルってやつは一体何者なんだろうな。」


「それはワイにもわからへんな。せやけど、よからぬことを企んどるってことはわかるやろ?」


「それはそうだけど、また会う機会があればぶっ潰して色々聞きたいところだぜ。」


「その意気込み、性が出るな。どうや今から体育館の方で実戦練習でもするか?」


「いいぜって言いたいんだが、明日はお前ら本多さんのとこ行くんだろ?早めに寝た方がいいんじゃないか?俺も明日は行きたいとこがあるんだ。」


「行きたいところ?」


「ちっちゃい時から世話なってる図書館にな。」


「えーっと、あそこやっけ?七区中央図書館やっけか。」


「そうそう。最近行けてなかったから行きたくなってな。館長元気してるかな。」











 翌朝、ガマたちが本多さんのところに行くのを見送った後、シャトレーゼに寄ってケーキを買った後に七区中央図書館へと向かった。


「着いたか。」


 七区中央図書館。旧名:刈谷市中央図書館。元々は刈谷市内に3館存在する市立図書館(刈谷市図書館)のうちの1館。カリヨンと呼ばれる時計塔が施設のシンボルで、刈谷市美術館や刈谷豊田総合病院などが集積する住吉町にある。1990年の開館とともに現在の城町図書館に代わって市の中央館に位置づけられ、市指定の有形文化財である刈谷町方文書や村上文庫などの書物を館内に収蔵して全体でも70万冊以上の蔵書を備えるそうだ。第三次世界大戦後では区が管理する区立図書館として改修工事が行われたそうだ。


 暇なときはいつもここでジャンルを問わず様々な本を読んだ。そのおかげで今は知識もたんまりついている。図書館様様だ。開館から閉館までの10時間の間で10冊以上読み、貸出可能最大まで本を借りて読む日々をどれくらい続けたのだったか。


 多少古い記憶を呼び起こされながら、入り口近くまで歩くと俺に声がかかった。


「久しぶりだな、星谷君」


 渋いおっさんボイスに死んだような目、非常に雰囲気と見た目が怖い、中々美形なおっさん。忘れようのない、この図書館の館長、峰本幸太郎(みねもとこうたろう)だ。


「館長、久しぶりです!これケーキです、奥さんたちのも買ってあります!」


「これはありがとう、また家で頂くよ。天野君から聞いたのだが、どうやら狩人高校に入学したそうじゃないか。おめでとう。」


「館長の教育があったからっすよ。」


 俺が学問に手を出し始めたのは峰本さんの影響だった。毎日小学生くらいの俺が図書館に通い続けているの見て、何を思ったのか俺に小学校の勉強を教えさせてくれた。そこからどっぷりと図書館に置かれた参考書を解き続けて今の学力を得た。


 図書館の事務室に入って俺は峰本さんとお茶を飲みながら話を再開した。


「あの時の私は君に勉強の手ほどきをしただけだよ、そこから君は自主的に勉強を始め、一年足らずで高校の問題を解き始めたのは今でも覚えているよ。」


「俺、そんな早い時期から高校の問題解いてたのか、すげえな。」


「君は物覚えが良かったからな、それでどうだ?学校の方は?」


「今度、ハンターとクラス全員で模擬戦するんだ。」


「ハンターと?」


「そうなんだよ、オルキスっていうハンターでさ。その人に俺、修行を付けてもらってるんだけど、無茶苦茶強くて歯が立たないんだ。」


「オルキスか、確かに彼女は強い。火を生み出し、それを自在に操ったかと思えば宙を舞い、大剣を振り回す。私が見て来た中で一番強いハンターだったな。」


「峰本さん知ってるのか!?」


「今はここの運営に付きっきりだが、私も一応はハンターだ。話していなかったか?」


「は、初耳だ。」


「それで、その彼女に勝ちたいと。」


「ああ、クラス全員で」


「ふーむ、そうか。ならオルキスとの近距離戦闘を想定した訓練はしているか?」


「もちろんしてるけど、ちょっと厄介なことが俺の身体の中で起きちゃって。俺のZONEが不完全な状態で発現しているせいか、集中状態になると制御が効かないんだ。集中が切れると糖分切れで少しめまいがするようにもなっちゃって」


「なるほど、ZONEの制御がまだできていないからその方法を教えてほしいと。」


「そうです。」


 峰本さんは少し考えた後に俺に一つの提案を持ちかける。


「今の君の実力とZONEを試してみたいのだがいいか?」


「え?ここでですか?」


「いや、自然界でだ。」







 俺は峰本さんに連れられ自然界に入って行った。場所としては元々東浦町という刈谷市の隣に位置する市のイオンモールだろうか、広い駐車場に緑に覆われたモールが聳え立ってるので間違いないだろう。


「峰本さん、こんなとこまで来てやるんですか?」


 峰本さんに話しかけると、思わぬ返答が帰って来た。


「ああ、そうじゃないと。私も全力を出せないからね。」


 峰本さんは地面に拳を振り下ろす、そうするとまるで地震が起きたかのような強大な揺れが辺り一面を襲うと同時に地面が盛り上がり、波を打った。


「ええー!?」


「言っただろう、私もいちハンターだ。これぐらい出来なくては、今の私の年齢では務まらんだろう。さあ、掛かって来るがいい。」


 何ともマジカルなステゴロの稽古が始まった。

CV中田譲治でお届けしたい

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