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第43話 英雄の忘れ形見

「何でお前がレッドエックスの武装を使ってんだよ!?」


 英雄レッドエックス。七区襲撃事件で民間人をクリーチャーから守り、戦死したとされる超速のハンターとして俺も何度か古新聞やニュースで見たことがある。でもなぜ、こいつがレッドエックスのを…


「完全に火が付いたぜ…星谷世一、お前は俺のエンジンに火を着けた。」


「――ッ!?」


「見せてやる、俺のZONEとこのレッドエックスのスピードをなあ!!!」


 けたたましくエンジンの音を響かせると共に、城ヶ崎は俺へと接近する。俺は咄嗟に構え、正面からの攻撃を防御しようとするも城ヶ崎は一瞬にして方向転換しサイドから強烈なパンチを浴びせる。タイヤのような硬い質感のパンチはその弾性で俺の身体を吹き飛ばすと共に空中へと持ち上げた。


「今の俺の時速は300キロ、誰も俺には付いて来れねえ。最速は俺だ!!!」


 ただでさえ強かった城ヶ崎の一撃一撃がパワードスーツとZONEの影響かさらに速く、そして重い。圧倒的スピードのラッシュに俺は手も足も出ずに、ただひたすら耐えることしかできなかった。城ヶ崎は十分に痛めつけたところで、俺の胸ぐらを掴み身体を持ち上げる。


「もう終わりか?まだレースは続いたままだぞ?」


「お前…狩人南高校に通ってるってことは、ハンターになりたいんだろ…?」


「あ?」


「ハンターっていうのは自然界の脅威から人間界を守る仕事だ…お前がやってることは…自然界と同じだ…」


「何が言いたい?」


「お前にハンターになる資格なんか無えってんだよ!!」


 俺の言葉に城ヶ崎は俺を投げ飛ばし、不敵に笑い始めた。


「はっははは!俺がハンターになる資格がねぇだと?俺はそもそも最初からハンターになる気なんざねぇんだよ!」


「何…?」


「俺は復讐に生きるんだよ!ハンター試験何ざ、そのための通過点でしかねえ!そして、全部ぶっ壊してやんだよ!あいつらが必死になって守ってきた全てを!人間界も自然界もまとめてなあ!」


 城ヶ崎の目に狂気が宿る。そしてその言葉には城ヶ崎の行動原理が如実に表されていた。自然界のみならず人間界までも破壊しようとする狂気的なまでの復讐心。でも何でそこまでの復讐心を持つに至ったんだ…?


「なぜ、そこまでする必要がある…?」


「遅すぎる雑魚の話に耳を貸すつもりはもうない。冥途の土産にはさっきの話で十分だ!」


 今度は、やつはバイクの前輪を模したレッドエックスが使っていた二丁銃剣「ホイールガンブレイド」を取り出し、再びエンジンを吹かせて城ヶ崎が俺の方へと迫り、フロントガラスを模した刃と機械剣(アダプター):ブレイカーモードの激しい攻防が行われた。幸いにも格闘戦よりも武器を用いた白兵戦なら俺の方が有利だ。火野さんとの白兵戦を想定した佐々木との合同練習がここで活きてきた。俺は機械剣(アダプター)の凹凸部分に刃を噛ませる。


「刃物の扱いなら俺の方が一枚上手のようだな!」


 刃を絡め取られ動けなくなった城ヶ崎の顔面に頭突きを入れる。そして追撃を入れようとした瞬間、城ヶ崎は異常な速度でのバックステップで機械剣(アダプター)の追撃を回避し、バイクのライト部分を模した銃口からエネルギー弾のようなものを発射し牽制する。


「コイツ飛び道具まで持ってやがるのか!?」


「飛び道具の一つや二つ持つのは、戦いの基本だ!」


 戦い方は多少乱暴ながらも動画で見たレッドエックスによく似ていやがる。まるで英雄と本気で戦っている気分だ。


 機械剣(アダプター)の二本の柄の先端部分を刃の向きと逆向きで連結させることで双刃剣モードへと切り替えて無数に飛んでくるエネルギー弾を弾く。だが、城ヶ崎は攻撃の手を緩めることはしなかった。俺は機械剣(アダプター)をブレイカーモードへと戻し、ガントレットも使いながら弾幕を切り裂き、防御しながら掻い潜り城ヶ崎との間合いを詰める。


「ありがとな、体勢が整ったところに飛び込んできてくれて…!」


 城ヶ崎のパワードスーツの脚部、カカト部分に装備されたタイヤホイールが回転を始める。


「ドライブ・スラッシュ!!」


 そうすると城ヶ崎は高速移動からの超信地旋回(ちょうしんちせんかい)を伴う反転や高速蛇行しつつ俺に突進しながら次々と斬撃と打撃を俺へと浴びせる。俺は斬撃までは対処はできたものの、前輪を模したタイヤによる打撃攻撃を捌き切ることはできずに地に伏した…


「ガロウとやり合っただけあって、相当タフなようだが。改めて言うぜ星谷世一。貴様のスピードじゃ、俺には届かない。」


 その通りだ。俺には超スピードだとか超パワーとか突出した能力は無い、ちょっと強い一般人の域を出ないだろう。ガロウはまだやりやすい方ではあった、明確な弱点を突けば何とかなる手合いだった。でも城ヶ崎は違った、明確な弱点が存在しない超スピードは俺の体じゃ追いつけない…


「これで終いだ、星谷世一。」


 城ヶ崎が武器を振り下ろす。


「何!?」


 しかし、城ヶ崎が振り下ろした攻撃は稼働しているガントレットのブレード部分に受け止められた。城ヶ崎はその事実に驚き一度距離を離す。


「どうなってやがる…?さっきまでぐったりしてたってのにあの反応の速さと対応力の高さは!?」


 城ヶ崎は、星谷の目を見る。城ヶ崎の瞳に映った星谷の目は先ほどまでの黄色ではなかった。


「負けて…たまるか…!」


 その瞳の縁がうっすらと赤みを帯びていた。

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