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第33話 たらい回しの先の褒美

 キリエに頼んで火野さんに土下座動画を送り付けて話を通し、冷蔵庫に具材を入れて、設計図をチョチョイと書いて、俺は本多さんのところに武器を作ってもらおうと向かったのだが


「閉まってやがる…」


 店の戸は閉じられ、いくら声を掛けても返事は帰ってこないもぬけの殻だった。諦めて帰ろうとした時、止めていたであろう張り紙が落ちていた。


「Dr.カウザーの研究所に行っています。半日ほど帰りません。」


 Dr.カウザーの研究所という謎めいた場所なんか聞いたことが無い。話を聞こうにも地図で調べようにも、この時代にスマホやガラケーといった携帯電話も持ってない俺にとっては、土地勘のみが頼りだ。とりあえず、ハイウェイオアシスに行こう。そこくらいしか思いつく場所が無い。


 カマキリの死骸を背負って約一時間、周りの視線に身を焼かれながら、なんとか着いた。だが、研究者らしき人の姿は無く、聞こえるのは何かを修理しているような工事の騒音だった。音のする方へと足を進めると、かつての爆心地の子供遊具をヘルメットを被って黙々と修理しているキリコの姿があった。


「よお、キリコ。お勤めご苦労さん」


「挨拶:こんにちは、星谷さん。疑問:今日はどうしてこちらに来たのですか?」


「ああ、カウザー先生の研究室に用があってな。でも場所が分かんなくてさ。道案内とか頼めるか?」


「交渉:教えてあげてもいいですが、補装など手伝っていただきます。」


「うーん、まいっか。手伝うぜ、これでもバイトでノウハウは分かるんだ。ちゃっちゃと済ませるぞ。」






 職人魂に火が点いてしまった。アホみたいに時間を費やしてしまった。補装、手直し、見た目がいまいち、補装、手直し、その繰り返し…


「称賛:見事な腕前です。これならハンターにならずとも食っていけそうです。」


 時間にして約5時間、昼を過ぎてしまった。腹が減ってしょうがない、早く用事を済ませてサンドイッチを作って食したい。


「バカ言え、俺が目指すのはハンターだ。それはそうと、道案内頼むぜ。」


「交渉成立:報酬としての道案内を開始します。着いて来てください。」


 そしてキリコはハイウェイオアシスの建物の中へと入って行く。


「おいおい、まさかこの下とか言わないよな?」


「ご明察です。」


「灯台下暗しってことかよ…」


 バトロワの時は稼働していないと思っていたエレベーターには電気が付いていた。どうやら間違いはなさそうだった。何でこう…何でこう真っすぐ目的地に行けないんだろうか。本当に不幸体質なんじゃ…


 エレベーターに乗り、下へと降りていく。エレベーターの中にあるモニター表示される数字が10、50…どんどんと増えている。そして表示が100になると、エレベーターの扉が開く。そこに広がるのは、まるで映画に出てくるような近未来都市のような地下空間であった。


「す、すげえ…」


 語彙力が失われ、開いた口が塞がらない。広さは地上にあるハイウェイオアシスと同等、いや、俺が見えているのはその一部部分だけで、もっと広いかもしれない。


「なあ、ここって」


「Dr.カウザーが保有するシェルター及び研究所です。」


「研究所のレベル超えてると思うんだけど!?何なら町ぐらいの規模あるよね!?」


「本多さんは会議室に居られるようなので、会議室まで向かいます。よろしいですね?」


「頼むわ」


 歩いて数分、ビルのような建物に入り、会議室と電子掲示板に表示された部屋の前まで来た。もちろん「使用中」と赤く表示されていた。


「これ入っていいのか?」


「とっくに会議は終わっています。」


「何時間前ぐらい?」


「三時間前ほど」


「そのあとの二時間は?」


「雑談のようです。」


「二時間も雑談できる仲なのか!?」


「推測:互いに探究者です。話の馬が合うのでしょう。」


「なるほどな」


 俺はとりあえずノックしてから入ろうと扉の前に立ち、腕を前にやると、センサーが反応したのか扉が勝手に開いた。声もなく突如と開いた扉の先にいる俺に楽しく談笑していたであろう二人の視線が向かう。


「え、えと。本多さんに武器を作って貰いたくて来たんですけど!!」


 ここは声量だ。声量と誠意で誤魔化すんだ。


「「・・・」」


 ダメそう…?


「娘の手伝いをしてくれて感謝しますよ、星谷君。」


「そんな感謝されるほどじゃ…」


 よかった。邪魔されて怒ってるようなかんじはないな。


「久しぶりだな、星谷。どうだい、(オレ)の作った機械剣(アダプター)の調子は?」


「そりゃもうバッチリだ。でも、もうちょい手数と決定力が欲しいってんで、こいつを持ってきたんだ。」


 俺はカマキリをドンと会議室の机の上に置く。


「こいつは…見たことねぇネオクリーチャーだ。蟷螂っぽいが前脚の数が異様に多い…新種か?」


「おやおやおや、実に興味深いですね。星谷君、このネオクリーチャーはどうしたのですか?」


「俺とガマとキリエ、途中からジョーカーと一緒に倒した。まあ、殆どダメージ与えたのはジョーカーだけどな。」


「なるほど、だからまだ電流が流れているわけですね。鎌の部分が金属のように硬化していますね…これ、買い取ってもよろしいですか?」


「え、マジで?でも、俺的には武器作ってもらいたいしな…」


「その武器には鎌は何本必要ですか?」


「うーん、二本くらい。」


「そうですか…本多君。武器開発、私も携わってもいいですか?金なら積みますよ?」


(オレ)は別に構わねぇぜ。あんたとの合作ってならいいもんが作れそうだ。星谷もそれでいいか?」


「金が浮くに越したことはねえ。それでいいぜ。今回はちゃんと設計図というかイメージ案は書いてきた。こんな感じで頼むぜ。」


 俺はリュックから設計図を取り出し、二人に渡す。


「なるほど、面白い発想だ。」


「ここに改良を施しても良いですか?」


「それはそっちで決めてくれ。俺の大元の目的は手数を増やすのと決定力を上げることだからな。そこさえなんとかなってればいい。」


「分かりました。出来次第、連絡したいので連絡先を交換しておきましょうか?」


「あ、自分携帯とか持ってなくて。」


「そうですか、なら今からでもあげましょうか。」


「へ?」


 Dr.カウザーは仮面の上から右耳らへんを触り、通信を通して指示を出す。


「手の空いている千の貌持つ化身(サウザンツ)の方、こちらに未開封のスマートフォンを持ってきて下さい。」


 そしてその直後、とんでもない美形で研究服の人がスマートフォンを俺の手に渡すとスタスタと去って行った。


 何だあの人、すごい美人と言うよりも綺麗すぎて、逆に悍ましいというか怖いぞ。直近でそういうやつに会ったせいか変に冷汗が出てきた。


「というか、いいのか?こんなに良くしてもらって。」


「娘を手伝ってくれた細やかなお礼です。有効活用してくださいね。」


「ありがとうございます!カウザー先生!」


 早速、俺はスマホの登録やなんやらをキリコに手伝ってもらい、何とかスマホデビューを果たした。






 狩高3-A(28)

[2215年 4月6日(土)]


[14:32

キリコが星谷世一をグループに追加しました。]


星谷世一

「よろしく」


石田

「よろしく!!」


呂布

「よろしくお願いする」


カエル

「星谷、スマホデビューしたんか!?」


星谷世一

「カウザー先生に貰った」


恵えもん

「羨ましい」


モドリッチ

「よろしく」


アンディー

「インターネットで本名を晒すとは、ネットリテラシーの無いやつ」


星谷世一

「そうなんか?」


ドラゴン竜

「まあ、一理ある」


モドリッチ

「珍しくまとも」


未来

「明日は大雪になりそう」


アンディー

「俺ちゃんはオールウェイズまともだぜ☆」


SASAKI

「ええー?ほんとにござるかぁ?」






 キリエたちと別れ、家に帰りサンドウィッチを作ろうと冷蔵庫を開ける。


「あれ?ない?」


 しかし、冷蔵庫の中は空っぽ。そしてキリエがテーブルでむしゃむしゃサラダを美味しそうに食べている。


「なあ…それって……」


 俺は震えながらキリエが食べてるサラダを指さす。


「イノシシ肉のカルパッチョだけど…何でそんな絶望した顔してんのよ。」


「それ、おでの…」


 キリエがハッとした表情をする。キリエは俺が冷蔵庫に取ってきた野菜を詰め込んでいたことは知らない。サンドイッチ食べたいとフラッと説明なしに家から出て行った俺も悪いのだが。これは何か求めても罰は当たらないだろう。


「ごめん、今度なんか作ってあげるから許して。」


「ほーん、じゃあイノシシ肉以外の肉使った弁当よろしく。」

ガロウはスマホ持ってないのでグルラには入れてません。

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