第32話 助太刀×阿修羅×電光石火
「戦車の正位置、意味は迅速♧どうやら間に合ったみたいだね♢」
目の前に降り立ったジョーカーは大鎌をカマキリへと向け、戦車の正位置を示したタロットカードを見せながら星谷へと話しかける。
「よく生き残ったね♢それに、見ないうちに随分と成長したみたいだ♤」
「まあな。」
「それで、目の前のネオクリーチャーを倒せばいいんだろう?」
「わかってんじゃんか。」
そう言うとジョーカーはカマキリの方へと走り出す。両者の鎌がぶつかり合い衝撃が走る。
ジョーカーはカマキリの六連にもなる鎌の攻撃を青紫と黄色が特徴的な自身の鎌、奇術師の雷鳴鎌でいなし、巻き取る。それでも回避不可能な攻撃に対しては、身体を電気へと変えて完璧に避け切る。
「ンフフフ…メタル化か、いいZONEだ♤」
ジョーカーは不敵に微笑みながらカマキリと高速戦闘を繰り広げる。
そして
「迅雷の伸暢…」
鎌の刃からバチバチと音を立てながら青白い電流が流れる。そして、鎌に蓄積したそれは、ジョーカーの鎌からメタル化したカマキリの鎌のような前脚から体全体へと伝っていく。
「電気拘束♡」
カマキリは全身に流れた強力な電流に焼かれた。身体の節々に焼け焦げた跡のような黒い斑点ができ、煙が上がる。
「動くなよ♤ってか、動けないだろ?」
全身がマヒしたカマキリはその場に硬直した。それを見て俺たちは感激した。目の前でハンターがクリーチャーと戦ってる。その状況がハンターを目指す俺たちの気分を高揚させた。
「す、すごい。あのカマキリを一撃で…」
「キリエの言う通りや。ホンマ凄いわ。」
「キリエ!今なら触れれるんじゃないか?」
「そうね…」
「ん?まだ早い…♤あれを見てごらん♧」
カマキリが徐々に動き出す。
「足だけをメタル化して、地面に電気が流れるように誘導したのか…♢知能もだいぶ上を行っているみたいだ♤」
「鎌は計六本。俺たち三人で何とかして食い止めて、キリエが触れて勝ちだ。ジョーカー、協力してくれるか?」
「面倒だから、ボク一人で終わらせようか…♡」
ジョーカーの周囲がバチバチと鳴り、雷のオーラのようなものがジョーカーを包み込む。
「奇術師の雷鳴鎌:雷の解放」
そのオーラのようなものは徐々にジョーカーの持つ大鎌の刃部分へと収束していく。
カマキリはそれを見て迎え討とうと、メタル化した自身の六本の鎌を重ね合わせ、二本の大型の鎌へと変える。
「さあ…行くよ♡」
ジョーカーの身体が一瞬消えたかと思うと、カマキリの背後にジョーカーが回り込む。奇術師の雷鳴鎌に溜め込まれた電気を鎌の刃部分に全集中させ、斬撃と共に溜め込んだ電気を一気に放出する。
「破滅の雷刃撃」
完全な不意打ちと、圧倒的近距離からの落雷の如き電圧を含んだ斬撃は、カマキリの身体をいとも容易く上下に真っ二つになった。
かっこいい中二病はこの世に存在していたのかと感心しつつ、火野さんに負けず劣らずの圧倒的なまでの戦闘センスと高火力には開いた口が塞がらなかった。この瞬間を写真にでも取られようものならすぐにでも削除したくなるほどの間抜け面だろう。
「呆気ないな…メタル化とかするから、もっと歯ごたえのあるものだと思ってたんだけど♧これじゃあ経験値不足だ…♢」
そう愚痴を漏らすジョーカーに俺たちは礼を言った。
「「助けてありがとうございます!!!」」
「いいんだよ♪火野くんの頼みだし、ボクも丁度暇してたんだ♤見たところ、三人の連携も実に良かった、これなら立派なハンターにもなれるかもね♡」
「見てたって、いつから見とったんや?」
「十分前…♢」
「何だよ!俺が時間稼ぎしてなくても助けに入れたやんけー!!」
「でも、こんなZONEを二つも持つネオクリーチャーはこの周辺じゃ珍しい♢君たちこのカマキリは何でここに来たかは知ってる?」
「ワイらが外で修行しようと出たら家のすぐ近くまで来ったんや。ワイらにも正確な理由はわからへん。」
「あんたは何か知ってる?ここに来る前、妙にイラついてたけど、何かあった?」
「実は、会ったんだ。人語を喋る人型のクリーチャーに…」
「「人語を喋るだって!?」」
「星谷くん、それは本当か?」
ジョーカーが凄い形相でこちらを見る。
「間違いない。あれはアド=ネトラムって自分のことを言ってた。人間たちへの恨みの集合体ってとこかな。」
「アド=ネトラムか…そのクリーチャーからは何を言われた?」
「えっと、俺個人宛だけどいいか?」
「構わない、話してくれ。」
「「君は何者なのか、まだ分かっていない」ってよ。あとまた会おうとか言ってたな。」
「何かされたりとかはした?」
「最初は一般人かと思ってリンゴとかあげたんだが、クリーチャーと分かって警戒態勢を取った。
それまでは普通に話すことはできたし、危害っていう危害も特になかった。」
「星谷はん、まーた凄いことに巻き込まれとるな。」
「どっかからトラブル永続的に引き込んでそうな不幸体質」
「なろう主人公もここまで不運やないと思うな。」
「何だお前らボロクソに言いやがって。」
「まあ、今回の件は上に報告しておくよ♢二つ以上のZONEを持つネオクリーチャーの出現は脅威その喪にだからね♤気を付けて家に帰るように、じゃあ、またね♡」
そう言ってジョーカーは樹海の中へと消えていった。
「なあ、これ持ち帰っていいと思う?」
俺は息絶えたカマキリを鎖でリュックに良い感じ括り付ける。
「何でそんなの持ち帰るのよ、その虫キモイんだけど。」
「虫苦手なのか?」
「その大きさの虫は誰だってビビるでしょ!」
「で、何でまた持ち帰るんや?」
「ちょっと新武器作ってもらえないかなーって。お前らはZONEの応用とかで戦力増してるけど、俺には目に見えて強くなったとか分かんないじゃん?それに機械剣だけで今後やっていけるかどうかわからんし」
「金はどうするんや?」
「それは…火野さんに土下座して頼み込む」
「あんたプライドとかないの?」
「おで…強くなりたい…恥も外聞もない」
「これがZONE無しで壊れちゃったロボットかいな。」
「哀れすぎて見てられない。」
実質HUNTER×HUNTER回になってしまった。
ゴン(偽鋼・阿修羅蟷螂)VSヒソカ(飛雷蒼華/ジョーカー)