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第29話 喧嘩と反省点

 家に帰った俺たちはテーブルに座り、事情を説明し終わると俺とガロウはこっぴどく火野さんに怒られた。


「で、殺し合いをしたと。」


「は、はい…」


「まあ、とにかく二人とも無事でよかった。けがは蓬ちゃんに治してもらいなさい。」


「本当に迷惑を掛けました!」


 ガロウは椅子から降り、土下座し謝っている。


「それはもういいんだ。今回の一件はお前のせいじゃないし、私だって君の立場ならそうしていた。お前にとって避けられようのない事だ。それで、折り入って相談なんだが校長先生に事情を話してみたらどうだ?何かしらの援助が得られるかもしれないぞ。私もツテを使ってみるから、今後は一切身元不明の怪しい感じのやつらとの取引はしないこと。いいな?」


「はい!」


「それと星谷。」


「ひゃい!」


 身体が一本の棒になったように椅子から立ち上がり、緊張のあまり思わず変な声を出してしまった。


「こういうことは先生に相談しなさい。一人で抱え込もうとするとガロウみたいに巻き込まれる可能性だって出てくる。約束できるか?」


「肝に刻んでおきます!」


「よろしい。説教はここまでにして、飯だ飯。キリエちゃんとメイちゃん、準備の方はできてる?」


 火野はキッチンで料理している二人に声を掛ける。


「はい、そろそろ焼き上がりです。」


「待っててくださいね、星谷先輩♡」


「あ゛?」


「星谷、さてはモテてるな?」


「何の事?」


 なんやかんやで食事が目の前に運ばれてきた。今日のメニューは、白米、イノシシ肉の100%ハンバーグ、サラダ。どれも美味そうではあるが毎食イノシシ肉。料理のレパートリーは申し分ないが、肉の味に飽きてきたというのに繋ぎ無しの100%は美味いんだが、美味いんだけど、飽きの方が早い。


 一方、ガロウは無茶苦茶に言い食べっぷりだ。見ててお腹一杯になるくらいには凄まじいほどだ。今度イノシシ肉をおすそ分けしてやろう。


 各々箸を進めているとき、火野がガロウに話しかける。


「ガロウに聞きたいんだが」


「はい。」


「白いスーツの上にバッジが付いた白衣を着た男に会ったってのは本当か?」


「ああ、間違いない。」


「EDEN財団か、また厄介な連中が来よったな…」


 ガマは頭に手を置き、「はぁ」とため息をつく。


「ガマ知ってんの?」


「EDEN財団。三区で巨大資本として裏社会を牛耳っとる、狩人育成機構の敵対組織。違法な能力開発や非人道的な実験の数々を行っとるヤバイ組織や。」


「結構詳しいな。」


「火野はんに拾われる前は三区のスラム街に住んどったからな。いやでも話題になって耳に入ってくるんや。ワイがメイはんを助けるためにぶっ倒した職員は青いリンゴ、下級職員やった。おそらくガロウはんと接触したのは中級、あるいは上級職員やろうな…」


「懐かしいな、あの時のガマは星谷ほどに無いにしろ、やんちゃだった。」


「あの頃は私もやんちゃな子って認識だった」


「やんちゃってなんや!」


「とにかく、今後その白服のやつらを見たら注意しろってことだろ?俺もあの時は迂闊だった、今後とも気を付ける。」


 俺たちは食事を終え、リビングで女性陣の風呂を待ちながら雑談していた。みんな楽しそうに話しているが、俺は一人雑誌を読むふりをして反省会をしていた。


 ガロウに勝てたのだろうか?


 あの時は互いに本気状態。ガロウが仮に冷静だったとしても、俺に勝ち目はあったのだろうか?機械剣(アダプター)と闇を纏ったガロウの手足での近距離戦。あれは、殆ど互角に等しかった。パワーこそガロウの方が上だったが機転の利かせ方や立ち回りだったら、ガロウの上を行っていたと思う。


 獣状態のガロウとの戦闘は、まあ酷いと言っていい。分身との戦闘はすぐに決着着くかと思ったが、分身の強度が、残りの分身の数が少なくなるに連れて増していたことに早急に気付いていれば、あの本体からの奇襲攻撃からは逃れることができただろう。


 埒が明かないな、この反省。ガロウにも聞いてみるか。


「なあ、ガロウ」


「何だ?」


「俺らのあの殺し合いって、どっちが勝ったと思う?」


「お前の勝ちだろ?」


 予想外の返事が返ってきた。俺が勝ってる…だと…?


「え?俺の勝ちなの?」


 疑問をガロウへとぶつけてみる。


「あの時の俺は、お前の煽り以前に通常の理性なんてもんは初めから無かった。あのデバイスを着けてから感情がいつも以上に高ぶってたのは、お前らでも分かるだろ?」


「そうやったな。」


「あのデバイスを受け取った時点で、俺がお前をいくらボコボコにできていたとしても、俺の負けだ。」


「「お前は試合に負けて勝負に勝った」みたいなこと言われた。」


「いや、そう言ってると思うで。」


「でも、こっちはお前に対しての有効打が無かった。あのまま戦い続けていたら、こっちはジリ貧で負けてた。」


 互いに自分は負けた判定。これでは引き分けだ。俺的には勝った負けたはハッキリとさせておきたい。そっちのほうが今後の基準として活かせる。


「ワイは星谷はん有利やと思うな。」


「何で?」


「星谷はん、ガロウを鎖で拘束して無力化しとったこと忘れてへんか?」


 そう言えばそうだった。ガロウのZONEの正体がフェンリルだと突き止め、鎖で拘束して無力化に成功している。確かにこれなら勝ちと言ってもいい。だが…


「でもガロウにダメージを与えられる手段がないんだよな…」


「あのメテオ何とかはダメなんか?」


「あれはその場のアドリブだってのもあるが、発動条件と当たる可能性も含めて超ハイリスク・ハイリターンの技だ。あの状況下なら確かに有効な攻撃法ではあると思うよ。でも、あの場以外では出しにくい技だ。基本的に自由落下運動を利用した技だから高さがいるのが絶対条件のところがネックなんだよな…」


「つまり。俺の餓える猛者の拳(ハングリーラッシュ)みたいな必殺技が欲しいのか?」


「そう!それだよそれ!必殺技…俺に必要なのはそれだ!」


「でも、あんたよく叫んでたじゃない。リメンバーンライド!みたいな感じで」


「あれは必殺技じゃないだろ。炎描く居合軌道(リメインバーンライド)機械剣(アダプター)を鞘から高速で引き抜くときに出る火花が染み込んだ灯油に発火してできた炎を剣の軌道上に残しながら発射する技だ。まあ、ちょっと飛ぶ斬撃みたいなやつだ。」


「じゃあ、先輩。あのフレイム何とかっていうのは何ですか?」


「あれは言っちゃえば、ただの火を纏った斬撃や突きだ。その場のノリで言ってるだけのただの攻撃に過ぎないんだよな…」


「そうなってくると、あんたのZONEの発現を待つだけってこと?」


「いや、そうとも言えないぞ。これ以上星谷が強くなるには、日々の特訓やZONEの発現を待つのも大事だが、新しく武器を仕入れるという手もあるし、相性補完がいいバディを組むのもアリだ。」


「そうか!新しい武器にバディを組むのもアリか…冷たッ!?」


 背後から右頬に冷え切った牛乳瓶が当たる。


「風呂出たわよ。」


 タンクトップ姿のキリエとキリエのお下がりであろう服を着たメイが後ろに立っていた。


「あれ…!?ガロウたちは?」


「あんたを置いて先入って行ったわよ。ガロウなんて、私の姿見たとたんに走っていったわよ。」


「ちょ!?置いて行くなよ!!!」


「凄い勢いで風呂場に走っていたわね…ガロウもそうだけど、私って怖いのかしら?」


「先輩は兎も角、お兄ちゃん基本的に女性が苦手なんですよ。だから、逃げ出すように風呂場に行ったのだと思います。」


「へえー面白いこと聞いたわ」

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