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第21話 炎魔王式RTA

「だからぁー、この点とこの点とこの点が出るわけだぁー。この点は出ねえよぉぉ!(a,b)通らない接線なんだからぁー。ぉーん…」


 昼放課終わりの5限目、火野先生の数学の授業を受けているのだが、なんというか貫禄がすごかった。解説とか、いろいろな箇所に工夫が施されていて見てて飽きず、分かりやすいのだが、貫禄がすごい。


「なあ、これ一応数学の授業だよな?ヤクザの講義に見えるんだが。」


「要点をきっちり抑えているので、ヤクザとは程遠いと当機体は考えます。」


「そこぉー!授業に関係のない事を喋ら…」


 火野の携帯に着信が入る。


「すまん。はい、火野です……わかりました、すぐに向かいます。」


 真剣な眼差しで電話を切る


「救援要請を受けた。直ぐに戻るから大問3解いておけよ。先生が帰ってきたら答え合わせするから。」


 そう言うと火野は窓を開け、よじ登ると、凄まじい速さで飛び立つ。


「えぇ…この学校ってこんなことあるのか?」


「たまにあります。それはそれとして、この問題合ってるか確認したいのですが。」


「ん?ああ、いいぜ。」





 






 狩人高校から西へと向かった先、自然界:旧東浦町にあったイオンモール東浦店。その付近で複数体のクリーチャーとネオクリーチャーがハンターとの交戦を開始。ハンターが劣勢状態との通報を受け、現場へと向かう。


「くそ、増援はまだか!このままだと押し切られるぞ!」


「大丈夫だ、時期に応援が来る!それまではこのクリーチャーを引き留めるぞ!」


 三人のハンターは終始劣勢ながらも健闘していた。人並み程度の大きさのサソリ型クリーチャー三体とそれらを統率する一体の大型トラックほどの大きさのサソリ型ネオクリーチャー


「お前ら、背中を合わせろ!」


「おう!」


「了解!」


 ハンターの一人が呼びかける。三人が集まり、背中を合わせ、リーダーが指示する。


「最大限まで引き付け、同士討ちを狙う。合図でジャンプだ、いいな!3…2…1……今だ!」


 一直線に突撃してくる小型のサソリをジャンプで避け、同士討ちさせる。互いの足が絡まったサソリに一斉に攻撃を仕掛け、小型のサソリたちは動きが止まる。


「よし!」


 次にサソリ型のネオクリーチャーを狙おうとするも部下から声がかかる。


「リーダー!またデカブツがいません!」


「何!?」


 先ほどまで三人の目に見えていたサソリ型ネオクリーチャーの姿が消える。


「どこに行った?」


「全員再び背中を合わせろ!どこから来てもおかしくない、索敵を怠るな!」


「「了解!」」


 三人はじっと待つ。あのデカいサソリはネオクリーチャー。通常のクリーチャーが動植物の延長線上にある進化の先であるのなら、ネオクリーチャーさらにその先、人間と同じくZONEを持つクリーチャーにおける突然変異体。


 あのデカブツは戦闘中何度も姿を消しては小型のサソリを向かわせる戦法を取っていた。つまり、あのデカブツは自ら動くことが無い指揮系のZONEを持つと断定していい。

 サソリは縄張り意識が高い。さらには格下相手には共食いもする捕食者、わざわざ配下として引き連れて共に戦闘を行うなど、通常のサソリ型クリーチャーにとって非効率極まりない。


 そうこの場にいるハンターたちは考えていた。


 しかし、次にリーダーが視界に捉えたのは、巨大なハサミ。突如としてリーダーの目の前に姿を現したサソリ型ネオクリーチャーが自分たちを挟み込もうとしている巨大なハサミだった。


「しまった…!?お前たちだけでも…!」


 リーダーは二人の背中を張り手で挟み込まれる範囲外へと突き飛ばす。


「「っ…リーダー!!!」」


 二人を庇ったリーダーはハサミに挟まれながらも、精一杯抵抗しながら叫ぶ


「うぉーーーーー!!!!いいから走れ!お前ら!!!!」


 二人は足が竦んで動くことができず、その場に硬直してしまう。


「く、くそ…」


 終わると思ったが


「いい心構えだ。だが、その前に防御の姿勢を取れ!」


 空中から声が響くと共に空が赤く燃える。サソリ型ネオクリーチャーに向かって落ちてくるそれは、まるで流星のよう。そして言われた通り防御の姿勢を構えたころ、リーダーは落下するような感覚に襲われる。


 目を見開く。そこには切断面が焼け焦げ、今もなお燃え続ける。先までリーダーが挟まれていた巨大なハサミとサソリ型ネオクリーチャーと対峙するように構える、一人の女性ハンターの姿があった。


「あんたは…」


「救援要請に応じてきた、オルキスだ。」


「オルキス…ってあの!?…いや、救援感謝する。我々も…」


「いい。あんたら相当怪我してんじゃんよ。直ぐに退きな、ここは私がやる。」


「了解した。ただ、一つ助言を」


「何だ?」


「やつはネオクリーチャー。ZONEは恐らく透明化、奇襲をされるかもしれません。以上です。」


「「リーダー!」」


「お前ら、ここは一旦非難するぞ!」


「俺たち、まだ戦えます!」


「そうだぜ、まだやれる!」


「いいやダメだ。ここにいてはオルキス殿の足を引っ張るだけだ。直ぐに退くぞ。」


「「了解!」」


「オルキス殿、ご武運を」


 二人はリーダーをハサミから解放し、肩を持ちながらその場から退避した。


「さて、避難誘導も終わったところだし…」


 肩で担いだ大剣を片手で持ちながら切っ先をサソリへと向ける。


「授業があるんだ行き帰り含めて5分以内にお前を駆除する。」


 そう宣言するオルキスを見てサソリの姿は徐々に透明になる。


 辺りを這い回る音と植物が燃える音だけが周囲を包み込む。オルキスは、這い回る音だけを聞き取り攻撃を行うも、その時点で既にサソリは攻撃先から移動しているため攻撃は当たらない。


 オルキス(擬態…いや透明化だったか。しかもかなりのレベルが高い透明度。近くを通り過ぎても気付くのは難しいか…)


 オルキスは大剣をそのまま地面へと突き刺す。


紅蓮世界(ぐれんせかい)!」


 その大剣から衝撃波のようなものが波紋する。それに当てられたものが一斉に燃え上がる。そして一か所だけ火の光が燈らない場所が現れる。それは丁度サソリの形だ


「そこか…」


 オルキスは大剣をそこに向けて投げ飛ばす。そうすると空中で大剣が止まる。しかし、空中だと思われた個所から徐々にサソリの姿が現れ始める。


「光の屈折率を変化させることでの透明化は、不完全燃焼で生じた炭素原子による光エネルギーの発生までも屈折させてしまう。不自然に燃えてなかったぜ?能力の弱点まで把握していなかった、それがお前の敗因だ。」


 瀕死の状態のサソリに突き刺さる大剣が火を吹く


「バーンインサイド」


 その一声と共にサソリは獄炎に包まれ黒い焼死体となる。


「よし、これで三分。帰りに一分か。今日は誰当てるかな…4月3日だし、足して7番の小野田花音(おのだかのん)にするか。」


 そう独り言を呟きながら火野は飛び立つ。


「す、すごい。ネオクリーチャーこんなあっさりと…」


「リーダー、あの人って…」


「ああ、炎魔王の異名を持つ狩人階級(ハンターランク):EX、ハンター名:オルキス。異例の速さで功績を上げた若き伝説だ。」


「それにしても、リーダー、最近忙しすぎませんか?あんなプロハンターまでに救援要請させる程に手が空いていないなんて。」


「それに最近になって人型や今戦ったような戦闘に特化したクリーチャーの出現も多いし、七区周辺は近年まで他の区に比べれば安全な方なのに…」


「それら脅威を狩るのが我々ハンターの仕事だ。一先ず七区に戻るぞ、素材は…ダメか。サンプルだけ持ち帰り、Dr.カウザーの研究所に向かうぞ。」

こうしてまた、脅威はなくなっていく。火野魔利亜、もといオルキスがいる限り七区周辺は安泰であった。

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