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第12話 古き縁と実技テスト

 家に帰り、三人で夕食を食べ終わった頃に火野が帰って来た。


「火野さん、お帰りなさい。食事の準備をしますね。」


「ただいま。ありがとうね、キリエ。」


「火野さんおかえり。」


「おう、ただいま。そういえば、お前たち夕飯はもう食べたか?」


「今食べ終わったとこやで。」


「それならよかった。」


 一連の会話を終え、椅子に座った。ひと段落しているところ申し訳ないのだが、明日の実技テストの対策をするために内容を聞こうと火野へと話しかける。


「明日の実技テストって何するの?」


「お前ら全員の実力を測るにふさわしいテストだ。」


「その内容を聞いてるんだけど…」


「それは、秘密だ。」


「えー!ケチだなー!」


「そっちの方がワクワクもデカいだろ?」


「だから、困ってんの!」


 結局、火野は答えてくれなかった。仕方なく、俺は一つの対策を機械剣(アダプター)に施し、テストをした後に寝た。






 翌日の朝(4/2)、俺たちは仕度を済ませて狩高に登校すると、正門から昇降口までの道端にバスが止められていた。そして、バスの前には火野が3-A組の生徒たちは更衣を済ませた後に武器を持ってバスに乗るように促していた。

 俺たちは一先ず更衣を済ませ、バスの中に乗り込んだ。バスには既に何人かクラスメイトが待機しており、その中にはキリコや馬場も姿もあった。俺は二席空いている方に一人で座り、廊下を挟んだ隣の席にいる二人と会話を始める。


「ヒヒン!おはようございます、星谷殿。」


「おう!おはよう。」


「挨拶:おはようございます。」


「おはよ。なあ、お前たち、今回の実技テストって何やると思う?」


「やはり、鬼ごっこではないでしょうか。」


「否定:それは、あなたが駆け回るのが好きなだけでは?」


「では、キリコ殿は何とお考えで?」


「返答拒否:黙秘権を行使します」


「お?なんか知ってんな?」


「続行」


「頑固だな~。まあ、着いてからのお楽しみってことね。」


「賛成:YES」


「あっちは何か楽しそうやな。」


「緊張感もクソもないじゃない。というか、馬場君どうやってバスの中に入ったのかしら...…」


 そう言った談笑をして時間は過ぎ、クラスメイトが全員集まりそうな雰囲気になってきた頃、突如として異様な空気がバスに流れる。


「あれ見ろ!ガロウ君が来たぞ!」


 そう嬉しそうに叫ぶのは、出席番号2番の石田学人(いしだがくと)であった。俺は急いでガロウの容姿を確認しようとバスの窓越しに確認すると。まるでオオカミの毛皮ような黒い長髪、片メカクレに隠れた獣のようなオレンジ色の瞳を輝かせた、褐色肌の筋骨隆々の赤いぼろシャツにボタンを開け、両腕の部分がはぎ取られたような黒の制服を着た男……


「あれ?見間違いか?」


 俺はその姿に既視感を抱いていた。


 間違いがなかった、間違えようがない。あれが戦闘狂などで有名な黒条牙狼なのだろう。バスの中へと入ってきたガロウに対して他のクラスメイトは、恐怖や嫌悪の表情を浮かべる中、俺が彼の顔を見た時に感じたのは懐かしさであった。


 空いている席を探そうとするガロウと目が合う。その瞬間、ガロウは驚いた表情で俺に向かって話しかける。


「お前、もしかして星谷か!?」


「久しぶりだな、バイトリーダー!」


 ガロウの顔を見て思い出した。俺が自然界に入る前の数少ない友人の一人であり、共に苦難(バイト)という苦難(バイト)を乗り越えてきた、ある意味の戦友のような関係。普段はバイトリーダーやリーダーと呼んでいたせいか、本名を知らなかったが、まさか、ガロウだったとは……


「おお!久しぶりだな、星谷!まさか、お前が編入生だったとは思わなかったぜ!」


「バイトリーダー...…いや、ガロウも元気してたか?兄弟のためにバイト掛け持ちしてたろ?今でも続けてんのか?」


「ああ、狩高の学費と弟、妹の養育費がどうしてもな。お前の方も大丈夫だったか?俺はまだ住めるような家は残ってたが、お前俺の誘い断って基本的に毎回野宿だっただろ?」


「しょうがないだろ?お前、俺を泊めさせた後、水道代諸々の負担が増えるから、仕事量増やしてたの知ってたんだからな?それに野宿問題なら、もう大丈夫だ。今はガマたちと一緒に火野さんの家に泊めさせてもらってる。」


「そうだったのか!?」


 ガロウはガマたちのところに近づき、一礼する。


「ありがとう!こいつに居場所を与えてくれて!」


 その言葉と礼にガマたちは驚きながらも返答する。


「ワイらかて、星谷はんとは似たような境遇や」


「そのお礼の言葉は、火野さんに言ってもらえると……」


 そう伝えると、ガロウはバスを飛び出し、火野に感謝の言葉を述べた。クラスメイトは今までのガロウが全く見せなかった別の態度と担任教師と生徒三人が同居しているという諸々の新情報の処理の多さに頭が追い付いていないような様子だった。キリコは情報処理自体はできてそうだが、頭の上にロード中と表示されて、一時的なフリーズ状態になっている。ある席では頭から火柱が立ったり、馬場に至ってはマジもんの馬みたいなシュンとした顔になってる。


 そんな状態のクラスメイトを乗せて、バスは走り出す。ロードが終わり再起動したっぽいキリコに追い打ちをかけるようで悪いとは思うが、何やらいろいろ知ってそうなので、行き先を聞いてみる。


「キリコ、俺たちってどこに向かってんの?」


「回答:刈谷ハイウェイオアシスです。」


 すんなり答えたな。目的地だけならよかったのか。それにしても、刈谷ハイウェイオアシス。たしか第三次世界大戦前は、伊勢湾岸自動車道の刈谷パーキングエリアと刈谷市の都市公園が隣接した大型施設。しかし、地殻変動の影響で高速道路が廃れていった結果、利用者が急激に減り、施設維持費などが払えなくなり、五年ほど前からパーキングエリアを除く施設の閉園により幕を下ろしたと記事に書いてあったが、そんなとこで一体何するってんだ?


 そんなことを考えているとバスは停車する。そして、窓越しに観覧車が見えた。どうやら着いたようだ。駐車場には一つ大きめのテントのようなものが建てられており、俺たちがバスを降り終わると、そこから一人がこちらへと歩み寄ってきた。


「やあやあ皆さん。よく集まってくれましたね。」


 そう話しかけてきたのは、モニターのようなヘルメットで顔を覆った黒い研究服を着た男だった。


「こちらは、Dr.カウザー。今回、狩高の実技テストで扱うシステムの開発をしてくれた。狩人階級(ハンターランク):A+のハンターだ。」


 俺はキリコの方を見る。キリコが少し頷く。どうやら身内のようだ。


「カウザー先生!今回使うシステムとは一体何なのでしょうか!」


「今回、君たちが使うシステムはRBGシステムです。」


「あーるびーじー?RPGではなく?」


「リアル・バトル・ゲームの略称ですよ。^^」


 そうDr.カウザーが言うと別デザインのヘルメットを被った白衣を着た人たちが生徒一人一人に腕時計のようなものを手渡す。


「君たちが行う実技テスト。それは、この刈谷ハイウェイオアシス内でのバトルロワイヤルです。皆さん、私が配ったデバイスを装着してください。」


 言われたようにすると自分の前に何か表示される。


 ーーーーーーー

 出席番号:19番 

 名前:星谷世一(ほしやよいち)

 性別:男性 

 誕生日:6/29 

 ZONE:?

 HP:200/200

 武装:機械剣(アダプター)

 ーーーーーーー


「何だこれ?RPGのステータス画面みたいな…」


「これは皆さんの能力を可視化したものです。では、バトルロワイヤルでのルールを説明します。皆さんに設定されたHP、これを削り合い、最後の一人になるまで戦い続けてもらいます。HPがゼロになった者は退場し直ちにここへと戻ってきてください。」


 Dr.カウザーがルールを説明をした後、質問を投げかける人がいた。


「質問いいか?」


「何でしょうか、宮本龍之介(みやもとりゅうのすけ)君。」


「HPを削るためには攻撃する必要があると思うんだが、この実技テストは安全は保証されているのか?」


「安心してください。このデバイスには装着者の受ける衝撃などを吸収し肩代わりすることができる機能があります、それが皆さんに設定されているHPです。装着者のZONEに応じて多少の性能の変化がありますが、安全性は私が保証します。ですので、HPがゼロになるということは、これ以上肩代わりが出来なくなる状態を指しますから、直ちに安全圏であるここまで戻ってきて欲しいのです。」


「続けて質問よろしいかしら?」


「いいですよ、松本妃奈(まつもとひな)さん。」


「怪我は大丈夫でも、痛みなどは発生するのですの?」


「はい。そういった感情などを扱うZONEを持つ方々がいますので。その機能をオミットしてしまっては、評価が難しくなってしまいますからね。あくまで肩代わりできるのはダメージだけ、感覚はダメージが無い分、多少軽減されますが、遮断できないものだと考えてください。それと伝え忘れていましたが、各所にサポートアイテムを設置してあります。有限なので使い時を忘れないように。」


 つまりは、ゲーム。あまり遊んだことは無いが、死ぬことが無いんだったら恐れることもない。


「皆さん、これ以上質問はありませんか?では、皆さんハイウェイオアシスに入り、準備運動していてください。バトルロワイアルは十分後、アナウンスと共に開始します。」


 各々ハイウェイオアシスに入って行く。ハイウェイオアシスは結構広い。だから、各々クラスメイトの位置を把握しながら準備運動を始めていた。かく言う俺は、そんなことは気にすることなく、普通にハイウェイオアシス内を歩き回っていた。歩くだけでも、バスに乗って凝り固まった体をほぐすにはちょうど良かった。


 大型複合遊具で遊びながら時間をつぶしていると、放送が入る。


「皆さん、準備はよろしいですか?それでは、これより実技テストをかいし…」


「開始しまーす!!」


 アナウンスと共にサイレンが鳴り、実技テストが始まった。

ようやく、ちゃんとした能力バトルものが始められる。誰だ!こんなシナリオを作ったのは!

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