第102話 エンカウント
「我々旗取り班は、メディアス体育館大府にあると言い伝えられている真紅の旗を入手すべく、樹海の奥深くへと進んでいく。荒廃し植物に飲まれたかつての文明を横目に、進んでいく我々旗取り班が目にしたものとは……!」
「アンディー、何ナレーション入れてんだよ。」
「いいだろ?雰囲気あって。ホシヤ!あれを見てみろ!」
「エーー!?!?じゃないんだよ、どこの番組だよ。」
「樹海の奥へ行ってK?」
「冰鞠はん、無理に合わせなくてええんやで。」
アンディーが言うように俺たちは樹海を進み、メディアス体育館大府に向かっている。あそこに行くのはガロウがEDEN財団にはめられた時以来だ。あまりいい思い出は残っていないが、地形だけはなんとなく把握できている。赤旗ってものあって見つかりやすそうでいいのだが、心配なのは……
「(なあ、ガマ。)」
「(なんや、星谷。相談ことかいな?)」
「(いや、最近冰鞠のZONEが弱まっている気がしてならないだよな。)」
「(そうか?)」
「(あいつのZONEって巴さんと同じく感情とかに左右されるZONEなんだが、最近クラスに馴染んできたじゃん?それが悪い方向で冰鞠のZONEに影響を与えてる。)」
「(確かにそうやな……巴はんと互角かそれ以上くらいの強さやった冰鞠はんのZONEで生み出された氷がサッカーの時には簡単に敗れとった。巴はんのZONEの強さのブレが大きいにしても、確かに弱くなったと言えばそうやな。)」
「(一応、連れてきたはいいものの、戦力になるのか心配でな。大丈夫だろうか?まあ、他校に対してはまだ冷たい対応を期待したいんだけどな。)」
「(それはどういう意味や?態度の話か?それともZONEの話かいな?)」
そう話しながら歩いていると、メディアス体育館大府に着いた。戦いの痕跡は、既に成長しきった植物たちに覆われて、さも最初からこの有様であったというようか姿になっていた。
「嫌なこと思い出すなあ」
「来たことあるのでごさるか?」
「一回だけ野暮用でな。その時は中までは入ってないからあれだが、ガマは中に入ったことあるから、旗がありそうな場所の目星は付いてるかもと思って連れてきたんだが、どう?心当たりあるか?」
「うーん、すまへんけどわからへんな。」
「そうなると、虱潰しに探したほうが速いですな。狩北からは遠くても、南高の拠点からは近いかもしれない。既に南高生徒が近くにいるかもしれませんぞ。ヒヒン。」
「馬場君の言う通りだ。なるべく接敵は避けたい。早速行動に移そう。」
捜索開始から僅か10分で赤旗を回収することができたため、そのまま青旗のある大府中学へと俺たちは向かった。青旗の位置は以前動くことはなく、大府中学校にあり続けていた。そして、問題なのはこの旗は持つことで位置情報が更新される。それつまり、これを拠点に持ち帰ることは拠点の位置を教えることに他ならない。だが、軍旗と違って手持ちサイズのため、隠せば目視では誰が持っているかはわからない感じだった。
そして、青旗のある大府中学校の正門が見えるくらいの位置まで、俺たちは辿り着いた。周辺には俺たち以外の生徒は見当たらない。どうやら、南高や狩北はまだ来ていなさそうだ。
「ここまで順調なのが怖いでござるな。」
「確かに嵐の前の静けさというやつですな、ここまで何事も起こっていない。用心して行動しましょう。ヒヒン。」
「ああ、いくぞ。」
俺たちは正門を通り、大府中学校へと入ったその時だった。
「グフハハハハ!!!まんまと学校内に入りおったわ!」
笑い声が聞こえてきた。しかも、ここから見える屋上からまるでロックバンドのギタリストのようなのけ反りをしたがら、俺たちのことを笑っているのは、ヘビメタバンドの服のように改造された制服に身を包み、悪魔のような白塗りのメイクをしたヒョロガリの男だった。
「そんな変な格好して俺たちのこと笑ってるそこのお前!何者だ!」
「よくぞ聞いた!吾輩は、南高参年壱組二十三番!ブラックアウト幹部、破道獄堂である!貴様ら狩高がここに来ることはわかっていたぞ!そして、この廃校は貴様らの永遠の墓場となるのだ!」
「どういうことだ!?」
「それは私がいるからです。」
そう言って現れたのは破道とはまた違い、ガッチガチに制服と学生帽を来たガタイのいい男の姿だった。
「私は南高参年壱組七番。ブラックアウト幹部、監獄真面目です。よろしくお願いします。」
「グフハハハ!貴様らはこの廃校という監獄に閉じ込められたのだ!もっとも、そこの星谷世一は今の状況をまるで理解できていないようだな!」
「ガマ、説明頼む。何が何だかわからない。」
「あの監獄真面目のZONE:脱獄不可能領域は線で囲んだ範囲内を物理的に脱獄不可侵な領域へと変化させるんや。あの口ぶりからして、やつは既に学校周りに線で囲んどったちゅうことや。そして、現状ワイらが持つZONEでは、この廃校からでることはできへん。」
「もしかして、詰みか?」
「いいや、まだ手はありますぞ。このZONEを突破するには監獄真面目を捕まえる事で解除が可能です。そしてZONEの制約で監獄真面目もこの監獄からは出ることはできない。」
「つまり、残り2時間でやつを捕まえて、青旗を回収すれば俺たちの勝ちってことか。」
「グフハハハ!!!それは吾輩たちとしても同じ事、残り2時間の間に貴様らを地面へと這いつくばらせ、貴様らの持つ赤旗を強奪する!さあ、かかれ!吾輩の手駒たちよ!」
そう南高生徒の人影が見えるより先にガマが叫んだ
「みんな、二人一組で散るんや!やつら誰が旗を持ってるかわってへん!固まるより、散った方がマシや!逃げるで星谷はん!」
「承知!馬場殿、こちらに!」
「ブルッフヒヒン!この呂布承った!」
「冰鞠さん!こっちに来て!」
「えっ!?石田君!?」
「あれ!?俺ちゃんボッチ!?」




