第10話 俺の武器が真っ赤に燃える!
「こんなの聞いてねえぞ!!」
不意打ちは失敗に終わり、絶賛食品売り場を逃げ回っている。
「大剣がダメなら!」
機械剣:大剣モードとは逆向きで嚙合わせて片方の柄を折りたたんだ斧モードへと切り替えて再び攻撃を行う。
「伐採だオラッ!」
しかし…
「刃が通らない!?」
俺にとってはこのクリーチャーは相性が悪する。
斧とキャベツの相性が悪く、斧を振りかぶろうとしている間にキャベツが再生し、その衝撃を多重構造によって分散しているのが目に見えて分かる。
何でこんなに相性悪いんですかねー!!!
一度ブレイカーモードに切り替え、キャベツ野郎の反撃に耐える。飛ぶ斬撃は、どうやら射程距離というか発動条件があるようだ。近距離まで近づけば使ってこなかったのがいい証拠だ。おそらく中遠距離専用の攻撃手段である可能性が高い。
飛ぶ斬撃が来なくなった代わり、剛腕剣によるラッシュが俺を襲う。
「そぉ!」
剛腕剣の軌道を機械剣で反らし
「こぉ!」
挟み撃ちの形で迫りくる剛腕剣を跳躍回避で避けた後剛腕剣の側面へと着地し
「だぁ!」
顔の無い頭部に二刀流の一撃を与えると、キャベツ野郎は態勢を崩す。その隙に距離を離しエスカレーターへと走る。一階はアイツから逃げ回った結果ほぼ半壊、隠れる場所もクソも無くなってしまったので、階段こと電力供給が止まり動かなくなったエスカレーターを駆け上がり二階へとステージを移す。
二階は衣服や雑貨屋、本屋などがあり、まだところどころ物が残っている。数分後にはアイツがここに来て俺を探そうとすべてをデストロイするとなると埃も相まって涙が出てくる。
キャベツ野郎を倒せれる方法を雑貨屋の余りものを見ながら考える。
「ん?こいつは…!」
俺が目に着けたのは、ストーブだった。中に灯油が入っていないか確認する。よし、まだ入ってるな!あとは服屋の服をちぎって巻き付けて…
ドカーンッ!!!
突如、服屋の壁が十字に斬られ倒壊する。そこにいたのはキャベツ野郎だった。
「普通、来るなら入り口からでしょうが!!!」
手早く準備を済ませてその場を離れる。
「お前の身体、キャベツでできてんだろ?だったら俺が今から料理してやるよ。」
服を巻きつけた機械剣にマッチに火をつける。灯油を染み込ませた服によっての表面に火が燈る。
「キャベツオンリーの野菜炒めにな!!」
服が焼け落ちると共に俺はキャベツ野郎に斬りかかる。
キィィンッ!!
キャベツ野郎の剛腕剣と機械剣:ブレイカーモードがぶつかり合う。キャベツ野郎は防御に成功したが、刀身が纏っている炎が剛腕へと燃え移り、徐々に炎がキャベツ野郎の身体を侵食していく。キャベツ野郎の剛腕剣が少し軽くなり、中の大木が姿を現す。すかさず俺は斧モードへと切り替えて
「薪割りじゃー!!」
キャベツ炒めの腹に思いっきり斧による一撃を与える。キャベツ装甲の機能停止によって再生能力を失い露出した大木は炎により炭のように柔く、小枝でも折るかのように簡単に真っ二つとなる。
「名付けて、炎燈す斧の一撃!」
「gugaaaaaa!!!!!!!」
クリーチャーは形容し難い悲鳴を上げながら、徐々に身体が炭へと変わっていく。
「ふぅー」
キャベツ野郎を倒して安堵していると
ゴゴゴゴ
「ん?揺れてる?…まっずい!!」
俺は、咄嗟にその場を離れて出口に向かおうと、エスカレーターを駆け降りる。一階へと降り中を確認すると案の定、至るところにヒビが入り始めている。さらに出口を塞ぐように、急激に植物が成長し始める。
「あの野郎!自らを肥料として植物を成長させやがったのか!?これじゃあ機械剣が纏ってる炎が、この生い茂った草共に引火でもしたら、火災発生、最悪一酸化炭素中毒で死ぬ。そんでもってこの場に残り続けたら倒壊に巻き込まれて即死……」
さらに最悪なのは機械剣の引火に使った灯油だ。こいつは普通の消化の方法では消えない。消すためには水ではなく消化器に頼るしかないが、そんなの探している暇なんてない。
鞘に収めればいけるか?
少しの好奇心と焦りと共に恐る恐る機械剣を鞘へと収める。ほんのりと温い状態だが鞘へと収めること自体は出来るらしい。
俺は腰の高さほどに伸びた草共を掻き分けながらスーパーから脱出した。そしてある程度離れたところで大きな音を立てながらスーパーが下から潰れるように倒壊していった。
「あっぶねぇー!!」
あれに巻き込まれていたかと思うとゾッとする。何はともあれ、今回は性能テストとクリーチャーへのリベンジができて結構満足できた。入学式というか、新学期まで後5日。この春休み中にもっと鍛錬積まなきゃな!
「彼…凄く気になルナ…」
倒壊し、瓦礫の山となったスーパーの頂上から一人、星谷世一を見下ろす存在がいた。白いローブに身を包んだ深緑の長髪で男とも女とも言えない人型のナニカ
「分身とはいエ、あっさり倒されちゃうなんテ。彼…とっても強いみたイ?」
その顔に多少の笑みを浮かべながら、ナニカは自然に向かって話続けた。
「一緒に彼に会いに行こウ。今度は偶然の出会いじゃなくテ、必然的にネ……」