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おねえさんとセミ(童話)

作者: n.kishi

 夏休み、小学3年生のみさちゃんは、近所の公園へラジオ体操に出かけます。行けばもらえるスタンプを集めるのが楽しみです。公園までの道でメガネをかけたおねえさんと毎朝すれ違います。そのおねえさんは日傘をさし、本を読みながら歩いています。本から目を離すことなく、まっすぐ歩けるのがみさちゃんは不思議でなりません。柴を背負って歩きながら本を読んだという二宮金次郎のお話から、みさちゃんはそのおねえさんのことをひそかに金ちゃんと呼んでいます。


 お盆が明けた朝のことです。みさちゃんはいつものように公園へ向かいます。その日も金ちゃんが向こうからだんだん近づいてきます。そのときです。金ちゃんの足元におなかを上にしたセミが転がっていることにみさちゃんは気付きました。みさちゃんは「あっ危ない!」と大声で叫びます。その声にびっくりしたのか、金ちゃんはちょっとよろけながらも横へずれ、ぎりぎりセーフ、セミを踏みつけることはありませんでした。ふたりはそっと地面のセミをのぞき込みます。元気はありませんが、まだ脚を小さく動かしています。金ちゃんはひょいとセミを拾い上げると、日陰になっている道端の草むらにおなかを下にして静かに置いてやりました。セミはじっとして動きません。それを見たみさちゃんは公園へ向かって駆け出します。公園の水道でハンカチを濡らして、金ちゃんのところへ走って戻りました。じっとしているセミにハンカチに含ませた水を1滴、2滴、3滴とたらします。するとセミは息を吹き返したかのように動き出し、草むらの奥へゆっくり歩いていき、見えなくなりました。その様子を見て、金ちゃんとみさちゃんは顔を見合わせ、にっこり微笑みます。みさちゃんはこれまで金ちゃんの顔を近くから見たことがありませんでした。金ちゃんの笑顔はみさちゃんの大好きなアニメのキャラクター「妖精ジェニー」のように優しいものでした。その日からみさちゃんは金ちゃんのことを心の中でジェニーと呼んでいます。


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