7 ミサちゃん 5歳 執務室へ行く。
やっとですが、ここからは、ミサさん視点となります。
私こと、ミサ・ソルベは、ソルベ領、領主である両親の長子であり長女です。難しいことはわかりませんが、大きくなったら父様たちのように剣をもって領内の悪い人を倒したり、母様のように領内のいろんなことをがんばらないといけないと思っています。
頑張っているのは今もです、毎朝早起きして、走り込みをして、いろんなお勉強をする。午後には母様が剣や魔法について教えてくれる。子どもに厳しいんじゃないかと言ってくる人もいたけど、私は、私と同じような子どもを見たことがありません。一番年が近いのはメイドのマリーだけど、彼女だって私よりも背が高いし、ずっと大人だ。そのマリーだって、毎日忙しく働いている。
だから私も負けられない。でも走り込みは楽しいし、母様やみんなが色々教えてくれたり、褒めてくれたりするのはとても楽しい。一番楽しいのは剣のお稽古だけど、剣だけじゃ不十分と色んな武器の使い方を教えてくれるし、いろんなお話をしてくれる。
みんな強いし、優しい。だからこそ、この前は怖くなった。
明らかに動きが悪いし、顔色も悪い兵隊のみんながそれを無視して訓練をしたのだ。私だって何度かケガをしたことがあったけど、その時に無理をしたらお母さまにすごく怒られたし、マリーに泣かれた。だから、みんなは悪い子だと思う。
ケガを早く治す方法や、私の氷の魔法の使い方は母様と一緒に考えたものだけど、上手くできたみたいでよかった。骨っていう大事な場所をケガすると一生困るって言ってたもんね。
みんながあんなにケガをしていたのは初めてだった。だから、私は少し怖かった。だって、私以上に強くて、優しいみんなが喧嘩とかでケガをしたはずがない。きっと魔物と戦ったんだと思う。詳しく聞きたいと思ったけど、まだ子どもだからと教えてはもらえなかった。
不満はある、でもだったら、もっと強くなればいいと思う。そう思って今日も剣をふったり、走り込みをするんだ。
やや騒がしい城内でそんな風に過ごしていて数日、私はお父様の執務室に呼び出された。
「よく着たな、ミサ、訓練は順調か?」
「はい、ミサ・ソルベ、日々精進しています。」
いつもと違う父様の雰囲気に私は、精いっぱいの背伸びをしてお辞儀をした。それにしてもおかしい、今日は執務室に、父様と母様だけでなく、執事長のビリーさんと侍女長のエルザさんもいる。ちなみに二人はマリーの父様と母様で、前にこの4人がソルベ領を仕切っているのだと教えてもらったことがあるけど、だからこそ全員がそろうタイミングは珍しいのだ。
「「ミサ様、ご無沙汰しております。」」
揃って頭を下げられて私はちょっとびびった。うん、けしてマリーがから普段の様子とかを聞いたことがあるからとかじゃないの。なんというかこの二人ってなんか父様よりも迫力があるんだよねー。
「はい、私は元気です。」
今度は背筋をピンと伸ばして二人を見る。しばし二人は視線を送ったあと、首を振って父様の方をみた。どうやら今日のお話は父様が話すらしい。それも不思議なことだ。こういうのって大抵は、ビリーが話すか、マリーに事前に説明があるはずなのだ。
ひょいと私が盗み見れば、近くに控えていたマリーもさあと首をふる。どうやらマリーも何もしらないらしい。
「そうだ、ミサ、この前は訓練所で見事な活躍だったらしいな。」
「はい?」
訓練所と言えば先日以来行っていないが、なんのことだろう。
「担当の隊長が賞賛しておりました。氷魔法を使った見事な応急処置であったと、その後の経過も良好とのことです。」
ビリーの補足説明で私は、あのことかと思い出した。
「母様の教え通り、魔法でケガの検査と、ギブスを使いました。よかったです。」
「ふふふ、ミサは本当に賢い子ね。」
まっすぐにほめてくれる母様にくすぐったい気持ちになりましたが、私からすれば大したことではない。
「だが、ミサよ、ケガの治療には責任がともなう。今回は現場の兵士が報告してくれたから良かったが、次、このような機会があったなら、必ず医者か、私たちに報告しなさい。治療したならば術後の責任としてそういったことも果たしなさい。」
「・・・はい。」
なるほど、それは教わっていなかったが、少し考えればわかることだ。
「身勝手なふるまいをしました。ごめんなさい。」
「お嬢様・・・。」
確かに子どもの私の魔法じゃ不安になるよね。兵士さんには悪いことをしたかもしれない。
「そうね、緊急の場合じゃないときは、周りと相談して治療をしなさい。魔法も医術もおいそれと振舞っていいものではないわ。それに気づけたなら、大丈夫。」
そういって母様が話をまとめる。うん、私もまだまだまだ。
「ふう、俺が言いたいことを全部行ってしまうんだからな。ただ、ミサ、相手を思って自分のできることをしようとしたお前の判断は間違っていない。他人を思い、自分のできることをする、それがソルベの在り方だ。」
やれやれとフォローしてくれる父様の言葉はうれしかった。そう私はソルベの子だから、もっと強くなりたいし、みんなを守りたいんだ。
もっともっとがんばっちゃうぞ。
「いや、ミサ、ほどほどにな。」
「兵士たちの心が折られないか心配だわ。」
なにやら大人たちが言っているが、子どもの私はただがんばるだけ。がんばるぞー
弟さん登場とみせて、前振りでなんか一杯一杯に、次回こそ、