EX1 ミサ・ソルベ 幼少期1
本来想定されていた「オータムドリーム」のストーリーであり、ゲーム途中で回想されるヒロインのエピソード
ソルベ辺境伯家、建国当初から王国北部の守り手を担う伝統ある名家であり、建国以来、何人もその領土を踏みにじることを許さなかった武門の家である。
現当主であるベガ・ソルベは、開祖の血を引く直系であり、代々受け継がれる武勇の才と民と家族を愛する徳を持っている由緒ある貴族であり、武人と称され、王の覚えもめでたい。その実、奥方としてめとったのは、現王の妹妃であり女性でありながら文武両道と名高いローズ妃であり、美男美女であり圧倒的な武勇を誇る夫婦は、貴族たちからは羨望と嫉妬を、国民からは人気を、領民からは尊敬と忠誠をもって慕われている。代々の発展を超え、ベガ侯爵の代、ソルベ領は更なる発展を迎え、王都すら凌ぐではないかとも言われている。
っと、そんな順風満帆なソルベ領であるが、ここ数年は更に賑やかであった。
待望の長子であり、長女である、ミサ・ソルベのご生誕である。母親譲りの絹のような金髪に、父親譲りの灰色の瞳。まるで人形のように美しい姫に、周囲の人間はとりこになった。
また心穏やかで物静かな子であった。
母親の読み聞かせる物語にニコニコしながらも、気づいたらスヤスヤと寝落ちした。
父親が男親特有の乱暴なあやしかたにギャーギャーと泣き叫んだ。
暗がりが怖いとお付きのメイドの裾をつかんで離さずにそのまま寝てしまった。
微笑ましい出来事の数々は彼女の優しく穏やかな性格を物語っていた。
愛されて、愛し、心穏やかなミサ・ソルベはすくすくと育っていた。
それは、ミサが4歳になったある日のことであった。
よく晴れた春の日、季節の花々に彩られた城の中庭をミサは散策していた。美しい花の中にたたずむミサの姿はさながら花の妖精のように美しく、はかなく消えてしまいそうな危うさもあった。もっと彼女の背丈では庭の植物で容易に隠れてしまい、時々、見える金髪の髪が、これまた可愛らしく、中庭を歩いていた大人たちは、足をとめ微笑ましく見守っていた。
ちょっとしたかくれんぼのような状況にゴキゲンになりながら、ミサは木立に隠れるように咲く花の束をを見つけた。赤に黄色、ほかの花よりも特徴的に咲くその花はチューリップであった。
「へんなの、でもきれ。」
初めてみるチューリップに彼女の心は奪われた。植物や生き物に不用意に触れてはいけないという大人の教えを普段は守っていたが、その時ばかりはそれを忘れてしまったのだ。
そっと、でも万感の思いを込めて彼女は花弁を握りしめる。
「えっ。」
だが、期待していた花の温かさではなく、鋭いとげのような痛みと冷たさであった。
「なにこれ?」
花弁を包み込むように作られた氷は、痛々しいほどに冷たく、そしてすぐに崩れ去っていき、チューリップの花びらはなくなってしまった。
「あ、あわっわあああ。」
美しい花の命を終わらせてしまった氷。そしてそれを生み出したのが自分自身であることに、聡明なミサは理解できてしまった。
「おじょうーさま。」
自分を探すメイドの声に我に返った彼女は、慌ててその場から立ちあがり声のしたほうに走り出した。
「ああ、お嬢様、こちらにいらしたのですか?」
「マリーーーー。」
そして、自分を探していたメイドに抱き着き、そのまま静かに泣き出した。
「え、ええ、どうしたんですか、どこか痛いんですか?」
フルフルと首を振りながら、それでも抱き着くことをやめない主に対して、メイドは
「大丈夫、大丈夫ですよ。」
きっと何か怖い思いをしたのだろうと、彼女が落ち着くまで抱きしめ続けた。
その優しさが、幼い少女の勘違いをゆっくりと固めてしまい、魔法の訓練に対して後ろ向きになってしまうことも、また幼いながらに自分の力を知り、心に蓋をしてしまうことに気づかないまま・・・
現時点での改変点
物静かで聡明な令嬢 →わんぱくで特訓大好きな女の子
深い知識と謙虚な態度 →目的のための手段として礼儀やマナーを学ぶ。
氷属性への嫌悪から隠し事→両親の理解、そして、氷属性の有用性を理解。