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5 ミサちゃん 4さい まほうをしる。

ファンタジーの基本、魔法の訓練回です。

 この世界に生まれた人間は大なり小なり、魔力を有し、それを活用することで過酷な自然の驚異に対抗している。建国の祖である王族や貴族の人間は代々の研究によりその訓練法を独自に体系化している。

 そのため、魔法の運用法や訓練法はそれぞれの家の財産であり、その教育は一子相伝であり、家族かよほど信頼のおける相手からしか教えを受けられないのである。

「だから、今日から教わることは、今後あなたの家族にしか教えてはいけません。。」

「はい。」

 膝の上に抱いた我が子に語り聞かせながら、ローズは魔法へついての薫陶を教えていた。

「本来は、もっと成長してからと思っていましたが、剣や体幹訓練、礼儀作法などの勉強もがんばっているから、特別なのです、よくがんばりましたね。」

「えへへ。」

 初めて剣での訓練から数か月、どの勉強や習い事でもミサはまじめに、そして才能豊かに成果を上げた。読み書きは不便なく、地理に関しては多くの地名を理解し、貪欲に様々な教えを乞う。訓練は年相応にセーブしつつであるが、技や身体さばきの術理を感覚で理解して実勢している。そういったわけで、城内の人間はこぞって、ミサにあれこそ教えたがった。

「ふふ、魔法なら、私の専業ですからね。」

「かあさま?」

「なんでもありませんよ。」

 ゴキゲンなローズは、テーブルの上にある三つのグラスに手をかざす。

「魔法とは、魔力の性質変化と、強化の二種類があるけど、まずは性質変化ね。」

「火」

 ローズの指パッチンともにグラスの水から火があがる。

「水」

 二つ目のグラスから水が溢れだし、火をけす。

「風」

 そして、巻き起った風が、テーブルにこぼれた水を元に戻す。

「おお。」

 キラキラと目を輝かせる愛娘に言いようもない愛おしさを感じながらローズは更に魔力を行使する。

「ソルベ」

 高らかに鳴らされた指とともに、三つのグラスは瞬時に凍り付いた。

「3種類の基本的な性質変化、そして、それらを複合して生み出される氷の属性、「ソルベ」の由来であり、そして代々の一族にしか使えないものです。」

「すごい、すごい、母様、ミサにもできる?」

 はしゃぐ娘に対して、ローズも楽しそうに笑う。

「では、今から私の魔力と性質変化をあなたに流し込みます、今日は朧気でもいいので感覚をつかめればよいので、気楽にいきましょう。」

 魔力を言葉で語るのは難しく、それを知覚し操作することは個の才能に由来する。そして、親子や夫婦といった親しい相手からそれを教わることが多い。ローズも基本三種は母親から、氷に関してはベガから教わったのだ。もっとも氷属性をまともに使えるのはそれだけローズに魔法の才があったからであって、だれでもできるものではない。

「なんか、ピリピリしてあたたかい。」

「そうね、それが私の魔力、流れを感じて。」

「はい。」

 そっと流される魔力から自分の魔力を理解し、それを操作する。魔法を使う第一歩である。才能がないものはここで苦戦するが、母親の期待通り、ミサはその第一歩をあっさりと乗り越え。

「あっつめたい。」

「はっ、ミサ、ストップ。」

 期待以上の成果を上げるのであった。


 初の魔法訓練のあと、慣れないことにつかれたミサは健やかな寝息を立てて眠っていた。

「ふふ、天使がねむっている。」

 そんな顔にとろけそうな表情を浮かべる、そこに国内最強と言われる威厳は皆無である。

「しかし、あなた、魔法の訓練は早すぎたかもしれません。」

 対してローズの顔色は優れない。

「すぐに魔力を理解したことは今更驚きません。この子の才能は歴代の王家やソルベのそれをはるかに凌駕しています。ですが。」

「たしかに、習ったその日に「ソルベ」の性質変化を発現するのは予想外だったよ。」

 表情を戻しながらベガは、ローズの肩を抱く、その肩がわずかに震えていることは気づかないフリをして。

「まさか、まっさきに魔力を氷に変化させただけでなく、ほかの基礎変化ができないなんて。」

 娘の手が凍り付いたときに、ローズはこの世の終わりのように恐怖したことを思い出した。幸いすぐに処置したから大事には至らなかったが、その後の訓練でもミサは氷の性質変化以外は芳しい結果をだせなかった。

「落ち着け、まだ始めたばかりだろ。今はこの子の高い才能だと思っておこう。」

「ですが、もしもこのままほかの性質変化ができなくなってしまったら・・・」

 魔法とは感覚がものをいう、つまり、最初に氷を発現したミサが今後基礎的な変化ができないかもしれない。我が子の才に喜び、嬉々して教え込んだことが裏目にでたかもしれない。ローズにはそれが恐ろしかったのだ。

「大丈夫だよ、仮に氷に特化したとしても、歴代のソルベにはそういう当主もいたんだ、ローズのせいじゃないよ。これもまたミサの才能なんだ。」

 対してベガは楽観的であった。むしろソルベの生まれでありながら、妻に魔法の才能で追い抜かれた苦い記憶がある身としては娘の才能は歓迎すべきものであった。

「どちらにしろ、ミサはソルベの姫だ。この才能も、まっすぐな性格も今はともかく伸ばしてあげるべきだと思うよ。」

「そうね、この子の強くなりたいという思いは本物だわ、この前も・・・。」

 落ち着きを取り戻した夫婦は、健やかに眠る愛娘を見守りながら、お互いの発見を報告しあうのであった。そこにはもう、悲壮感はなく、ただただ幸せな家族の姿があるだけであった。



ポジティブ幼女に見えた意外な欠点。

さて、次回は、本来はどうであったのか、そういったお話をお届けします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふぅん?三種類の基本となる性質変換、ですか。これは珍しい。普通、と言えるかは分かりませんが、ここに土の性質を入れた四大属性、というのが基本かと思っていましたが…これが何かの伏線なのか、…
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