26 ミサ 12歳 学園に立つ。
学園編スタート
王立オータム学園。国内で唯一の王立の学園であり、最高峰の教育機関。
国の未来を担う貴族や大手商人の子息、またさまざまな場面でスカウトされた才能ある平民が通い、文武含め国を牽引していくための様々な教育が行われており、その生徒数は1000人、教職員や関係者を含めると1万人以上が敷地で働いているとも言われている。
「すごいわね。」
知識として知っているの、この目で見るのとは違うということは分かっていても、その学び舎の大きさに驚く、というか門だけでもソルベの城に匹敵するのだ。驚くのも当然ではないだろうか?
「お嬢様、いつまでもとぼけた顔をしていないで、入りませんか?」
その大きさに感動していたら、実に無遠慮な声に我に返った。
「ちょっと ベルカ。とぼけたって何よ。感動してたのよ。」
「失礼しました、感動でもお間抜けでもいいので、気を抜かないでください。」
「ちょっとベルカ、ミサ様、すみません。でもでもそろそろ時間がー。」
言われて思い出したが入学式の時間が迫っていたのは事実なので、なにも言えず私は敷地へと足を踏み入れた。そう今日から私もここの一員となるのだ。と思うと足取りも自然と軽くなる。
「お嬢様、これからは周囲の評価というものもありますので、もう少ししゃっきとしてくださいね。」
先ほどから無遠慮に指摘してきているのは、長い髪を一本に結んだ表情の少ない美人のベルカ。
「まあまあ、でもでも、ミサ様、油断大敵という言葉もありますからー。」
やや間延びした声でフォローになっていないフォローを入れているぽわぽわした美人のラニーニャ。
二人は、学園への入学を期にマリーの代わりに私付きとなった侍女である。本来ならばマリーが学園へついてくるはずだったのだが、ルネとリカッソのお世話のために一番若い、マリーはソルベを離れることができなったのだ。ちなみに二人の
「お嬢様、女性の年齢を考えるときは、もっとバレないように表情を落ち着けてください。」
「ふふふ、まあ私たちもおねえさーんというのは微妙ですしねー。」
大変有能で、気が利く二人とはわりとすぐに打ち解けた。ただ二人ともことあるごとに私の言動にちゃちゃをいれてからかってくるので扱いがめんどくさい。
「めんどくさいと思うなら、もう少し配慮して動いてください。行きましょう。」
そういうとこだぞ。
さて、今日は学園の入学式である。園内に人気が少ないのは、私などの貴族たちは時間を分けて登校するように通達されているからだ。
学園は12歳から最短で3年で、最高6年まで在籍することができる。そのため毎年200人近くの子どもが入れ替わるわけだが、私たちのような身分の人間は30人程度と言われている。そしてそういった人達と平民が一挙に押し寄せた場合、何かとトラブルが起こるらしく。平民は早めに会場に押し込まれ、私たちのような階級の人間はギリギリに到着することが推奨されている。ちなみに、男女別の受付なので、ラグとも別行動だったりする。
「でもでも、そういう場合の貴族って、早めに来てラウンジとかで休んでいるんじゃないんですかー?」
ラニーニャの指摘ももっともである。時間ギリギリで遅刻なんてことになったら、恥もいいところだ。なのでほとんどの新入生は会場に行っているので、園内を歩いているのは警備などの職員を除けば私たちだけだ。
「それで、余計なのに絡まれてもめんどくさいじゃない。」
この一年で私もそれなりに社交というものに駆り出された。建前は妹たちの世話で忙しい母様の代わりとしてだけど、父様いわく、貴族の実態を知っておきないという理由だった。
そして、それはよくわかった。貴族と呼ばれる特権階級には愚か者が多い。
まず、私が女性で子どもであるというだけで侮ってくる。つぎに、マリーや使用人に気安く接していることで侮ってくる。それでいて、此方が知識なり実力なりを見せれば手の平を返してへこへこしてくるのだ。そのあとには、やれうちの息子はどうだの、お似合いだの縁談の話だ。あとは、無駄に自分語りが多い、どこの子息たちだ。そのうちの何人かが待ち構えているである場所になど近づきたくない。
「確かに、入学早々、長期欠席者を出すわけにはいきませんからね。」
「ちょっと、ベルカ。さすがに学園では暴れないわよ。」
「はい、お嬢様にたかる、虫の排除はおまかせください。」
キラリと決め顔で言うベルガ。これはこっちをからかっているな。
「おじょーさま。さすがに急がないと時間が。」
ベルガにからかわれ、ラニーニャに気づかされる。こんなやり取りを繰り返しながら私はこれからの生活に期待と不安を感じながら道をのんびり進むのであった。
と思っていた時期が私にもありました。
「まったく、お嬢様の時間感覚に従っていたのが間違いでした。ソルベの田舎時間とは違うんですよ。」
「はあ、あんたも同じようなもんじゃない。」
時を告げる鐘の音を聞きながら私たちは道を走っていた。はい、時間がやばいです。広すぎるんだよ、この学園。そして生垣とか建物など似た風景が多いので距離感がつかみづらいのだ。ギリギリがやばいに変わったのは仕方ない。
ともあれまだ余裕はある。制服なら走るに支障はない。
「まーってくーださーーい。」
間延びした緊張感のないラニーニャも決して遅くはない。二人ともスカートなのに私に遅れずについてこれているのだから、大したものだ。
走っていたのは数分もなかった。だが会場の入り口できょろきょろとしている係員さんには申し訳ない気持ちにはなった。
そんなときだった。
「あれ、こっちは女子専用、男子はどっち?」
会場の近くでキョロキョロしている男の子に気づいたのは。
「間に合った・・・けど。」
きっと新入生。それを無視するのは気が引けた。仕方ない。
「こんにちは。」
私はその子に声をかけることにした。それを見て呆れながら係員に話に行ってくれたベルカには感謝だ。
「え、ええっとこんにちは。」
突然声をかけれて驚く男の子は、どこかひょろっとしていた。まあ私の場合、基準がラグやライオネル殿下なので同世代の子は全体にひょろっとしているわけだけど。
「新入生ですか?」
「は、はい。でも迷ってしまって。」
なるほど。予想通りの答えだ。
「ラニーニャ、この人を男性用の受付まで案内してあげなさい。そのあとはラグの近くに。急いでね。」
「はーーい。」
「えっそんな。」
「こっちー、こっちですよ。」
私の指示に対してラニーニャは、素早く男の子の手をとり、反対側へと走っていく。
「え、ちょっ。」
突然女性と手を繋いだからか、それとも予想以上の速さに驚いたからだろうか、顔を真っ赤にさせながら男の子は引きずられるように視界から消えていった。
「あれで、足早いのよね、あの子。」
侍女でもソルベの人間だ。このくらいはできる。
「いや、お嬢様も急ぎますよ。」
とか感心していた、不意に後ろから抱きしめられた。
「ちょ。」
「はいはい、このままだとまた寄り道して遅刻してしまいますからねー。」
いつの間にか戻ってきたベルカは、ヒョイと私を持ち上げるとそのまま小走りで会場へと走っていく。
「ちょ、ちょっとまってこれはさすがに。」
「急ぎますよー。」
にやにやと笑いながらベルカは速度を上げていく。
「おろーせーーー。」
私の叫びもむなしく会場まで運ばれ、注目を集める結果になってしまったこと。絶対に許さない。
即座にフラグブレイク




