18 ミサ 11歳 王太子妃に出会う。
貴族と王族の微妙なバランスの話。
問題というには些細なことだが、次期トップである殿下が、ソルベとばかり交流を持っているというのが外聞が悪いという話。ならば、ファムアットの人間であるファルちゃんも同席した状態で、殿下が遊びに来たのなら、対外的な言い訳は立つ。気苦労としては、それを事前にファルちゃんに話してしまうと、ソルベがファムアットに恩を売ったということになってしまう。
「ファルちゃんに夏花の見ごろの時期を教えておいたとはいえ、偶然ですね。」
「ええ、なかなか面白いことになりそうですね、お義姉様。」
そのあたりをファルちゃんも察したのだろう。ニコニコと笑うい合う。
貴族というのはめんどくさいものなのだ。
「・・・よくわからんが、ファルベルト嬢。この縁を大事にファムアットとも交流を深められたらと思う。よろしく頼む。」
「それは、光栄です。殿下にはいろいろとお尋ねしたいこともありますから。」
うん、そりゃ許嫁が手紙のやり取りをしている相手なんだから、気になるよねー。
「・・・ミサ謀ったな。」
遅まきながら状況の認識が追い付いたらしくライオネル殿下が口調を崩す。ほほほ、私なんてまだまだですわ。
「白々しいことを、相変わらず王族への敬意と捨て去っているようだな、そしてファルベルト嬢、お前も同類だろ。」
ソファーに座り直しながらライオネル殿下はあきらめたように吐き捨てる。だがそこから勝ち誇ったような顔でこちらを見る。
「なんとなく嫌な予感はしていた。夏季休暇を利用して、久しぶりにラグに会いに来たと思えば、ファムアットの令嬢がいる。それを俺が知らなかった事実。してたやられた。だがな。」
しかしなぜだろう、その笑みに影がさす。
「そういう稚拙な考えで、トラの尾を踏んだぞ。」
「トラの尾とはずいぶんと失礼ですね、殿下。」
鈴を転がしたような声が私たちの間に響く。良くとおる美しい声だった。
私が慌てて給仕をしていたメイドたちを見るが、彼女たちも顔を青くして首を振っていた。ああ、アナタたちは知っていたのね、知っていたうえで、私すらもダマシタノデスネ。
「ご歓談中に失礼いたしますわ。」
よく響く声とともに応接室の扉が開く。そして現れた人物は光をまとっているようだった。いや、単純に外からの光でそう見えるように設計されているだけなのど、その仕組みを利用して、その人は堂々と室内に入ってきた。
「お初にお目にかかりますわ、ミサ・ソルベ様、ファムベルト・ファムアット様。」
堂々と、それでいて自然体の振る舞いは貴婦人があこがれる美しさそのもの。そして輝かいて見えるほどに溌剌とした鋭い視線。何より、美しく巻き上げられたロール髪
マリアンヌ・ロムレス。中央を取り仕切るロムレスの長女にして殿下の許嫁様は堂々と執務室に降臨されたのだった。
「お義姉様、これも。」
「いやいや、ファルちゃん、そんなこと私にできるわけないでしょ。」
恐縮しつつも、ファルちゃんに私は言い訳をする。確かに理想的だけど、そんなことできるわけないじゃん。
「マリアンヌ、ホントに来たんだな。」
そんな中、自然にエスコートしながらライオネル殿下はマリアンヌ様をソファーまで連れてくる。
「殿下、それではまるで私が邪魔者のようじゃないですか。でもまあ、ミサ様の驚く顔が見れたのでご満足なのでは?」
うわ、扇子で上品に顔を隠しながらクスクスと笑っている姿がすっごく絵になる。
「もとより、殿下が悪いのです、許嫁である私との交流をないがしろにして、わざわざソルベまで足を延ばす。わたくし嫉妬していまいますわ。」
「うっ、それは友人と会うだけだ。やましいことはないぞ。」
「それでも、わたくしたちのお立場もご配慮いただきたいものですわ。」
すごい、私たちが危惧していたことをしっかりと理解されている。
「失礼、殿下があまりに冷たいので、こんな悪戯をしてしまいましたわ。ごめんさないね。ソルベ様、ファムアット様」
ほほほとお上品に笑うマリアンヌ様に場は完全に支配された。 これがロムレス、中央を統括して国をまとめる家の実力といったことだろうか。
とまあ、絶賛しているわけですけど。正直、私はまとまな思考ができていると思えなかった。
だって。
「なんて、きれいな人だろう。」
「あら?どうしました、ソルベ様?」
「なんて、きれいな人なんだろう。お姉さまって呼んでもいいですか?」
「はい?」「お義姉様?」「ミサ?」「姉さん?」
マリアンヌ様が呆けた顔をされるが、それすらも絵になっている。
「だってだって、こんなお姫様みたいな人見たことある。なんかキラキラしてるし、ふるまいが自然体なんだよ、ここに来るまでも余計な音がとか無駄が一切ないのに、光や空気を従えているような美しさ。しかもまるで、鈴を鳴らしたような美しい声。服だって扇子だって、こんなに似合っている人、いや、この人のためにあるような感じじゃない。」
私は興奮していた。母様も美しいと思う。洗練された所作に戦うときの凛としたふるまい。それはそれで私のあこがれある。
「おほめに授かり光栄ですわ。でもあなたもとてもきれいですわ。」
「いいえ、お姉さま、私は生まれて初めて、マナーやダンスのレッスンの意味を理解したと思います。知識と動きだけを理解してわかっていた自分を恥じております。」
「そ、そうなの?」
「お姉さまの所作を見ていてわかりました。極限まで洗練された所作というのはそれだけで、こんなにも美しく、自然や周囲の空気すら従えるのですね。私ではとてもたどり着けない境地です。ああ、でもそれはお姉さまが美しいからこそであって、美しい人が努力を惜しまず磨き上げた動きによる美しさに触れて感動ですわ。それに、むぐ。」
心からあふれる賛辞をさらに言葉にしようとしたところで、私は、マリアンヌお姉さまに抱きしめられていた。
「なに、この子。超かわいい。」
かわいい、かわいいって言ってもらえた。うれしくて、微笑みが止まらないわ。
「殿下、この子持ち帰ってもいいですか?」
「頼む、マリアンヌ、お前までそっちへ行くな。」
わあーお姉さま、香りまで素敵。
王家とソルベは、次代の男の子が仲良しで殿下がよく遊びに来る。ロムレス家は、娘が殿下と許嫁。たいして、ファムアット家は特別な交流がなかったため、ちょっとだけ外聞が悪かった。けどそれをファムアットからいうのは問題であったため、こんな回りくどい方法でミサたち、ソルベがフォローしたけど、マリアアンヌさんは、それを利用として、4家が集まる場を自然に作ろうとしてていた。




