16 ミサ 11歳 婚約者と出会う。
2人目の攻略対象(陛下)と出会ってから3年。
ライバルヒロインと邂逅していきます。
この世界において、7歳までの子どもは神様の子と言われているそうです。それだけ幼い子どもがなくなることは多く、また出産には危険が伴い多くの夫婦が子どもは一人、多くても二人というのが一般的なのだそうです。
その代わりと言ってはあれですが、地位の高い人達の中には奥さんを複数もつ人や優秀な子どもを養子にとったりすることがあるらしいです。例えば国王陛下と母様は異母兄妹だし、ラグのように部下の子を養子にする父様のような人もいる。というかうちの両親のように仲良く一夫一妻の夫婦というのは貴族としては珍しい部類だったりします。まあソルベは北の辺境で、生活するにはそれなりの覚悟が求められる。だからこそ、ソルベの人間は土地への愛着が強いし、家族を大事にする。そういう家風なのだ。
まあ何が言いたいかというと、ソルベの人間である私たちにとって家族という枠組みは強いということ。
それは一族単位らしいです。今は隠居されているおじい様とおばあ様、兵士さんたちも含めて身内を守るためには骨身を惜しまない。そして、母様もそうだが、そういう気質の人間が集まる傾向がある。というのは父様のお話だ。
「だからこそ、子どもが10代になるとなにかと、みんな色々言ってくるのよ。」
「そうなんだ、そういえば先日もおじい様が、ラグの嫁がどうするって尋ねてきてたね。」
「おじいさま、ミサは嫁にやらんって、言ってたのに、ラグにはそういうこというのね。」
「姉さんの場合、嫁の貰い手の方が難しいと思うけど。」
「私を嫁に欲しい人は、私と父様とおじい様を倒せるぐらい強くないと認められそうにないわね。」
「いやなにそれ、普通にむりでしょ。特に姉さん。」
打ち合い稽古をしながら、私はラグとそんな会話をしていた。出会ったばかりのころは、打ち合いのたびに悲鳴をあげていたラグだけど、ライオネル殿下と出会ったころから急に訓練に死に物狂いになり最近ではこうして会話をする余裕もある。
「姉さんを倒すよりも、森でクマを戦った方がまだ勝ち目がありそう。」
反比例するように、私に対する遠慮が目減りしているけど。
「ちなみにライオネル殿下は婚約者の令嬢と大変仲がいいらしいよ、この前、手紙に書いてあった。ロムレス家の長女のマリアンナ様。なんでもバラのように華やかで、ひだまりのように温かい人なんだって。」
「はいはい、私には華やかさもなければ冷たいですよ。」
うん、ちょっとだけ剣の速度をあげよう。
「ちょっ、あぶな。」
ふふふ、まだまだ姉の本気には及ばないわね。もっともっと鍛えないとならないか。
とまあ未だに恋愛からは縁遠い11歳な私だけれど、それには少しだけ理由がある。
「ねえねえ。」「らーにい」
本気で痛めつける、もといしごきあげようとしたタイミングで、その微笑ましい声は中庭に響いた。
「ルネ、リカッソ、こっちよ。」
私は即座に木刀を置いて、声の主を出迎える。そう我が家の天使たちだ。
侍女に見守れながら私たちの方へとてとてと歩いてくるのは幼い双子だった。
ルネ・ソルベ リカッソ・ソルベ 今年で2歳になる私たちの妹と弟だ。
「ねえねえ。」
私の胸に飛び込んできたのは姉のルネ。甘えん坊で誰かにすぐ抱き着いてくるがそこがまたかわいい。
「らーにい、しゃがむ。」
やや乱暴にラグの足をよじ登ろうとしているのは弟のリカッソ。男の子らしくやんちゃでわんぱくで、なぜか高い所が好きで何かと誰彼構わずよじ登ろうとする。最近はラグの頭がお気に入りである。
「ルネ―、お昼寝はもういいの。」
「うん。」
「おおお、たかいたかい。」
「おおお、リカッソ暴れるな落ちる。」
素直にじゃれてくる妹たちだが、城内では私たちに一番なついている。まあ仕事で忙しい両親に代わって何かと私たちが構い倒したからというのもあるけど、お昼寝のあとなどは私たちを求めて城内をフラフラとさまよっているのだ。なんだこのカワイイ生き物。
「ラグもこんなカワイイ時期があったのに、お姉ちゃんさみしい。」
「いや、俺がここに来たときは、もっと大きかったからね、少なくとも姉さんに抱き着いたり、よじ登ったりはしたことないぞ。このわんぱくっぷりは確実に姉さんに似たな。」
「あら、私もないわよ。失礼ね。」
言いながらもラグはリカッソが落ちないように支えている。すっかりお兄ちゃんが板についている。
なんだかんだ、10歳を超えて一人前になったということだろう。
ちなみに、ルネとリカッソが生まれたことで私たちの恋愛事情というのが落ち着いている理由だ。跡取りに困らないこと、出産の前後の母様の体調を配慮して遠出をしたり来客を控えていること。まあそういったことで私たちの周囲は、口うるさい大人こそいるけれど大人しいものだ。
「ちなみに、ライオネル殿下と姉さんの縁談も考えられてたみたいだよ。」
「そりゃそうでしょ、でなければマリアンヌ様との婚約なんてされないでしょ、ラグ親しくするのもいいけで、次期王とあまりなれなれしくしてはだめよ。」
「会うたびにぼこぼこにしている姉さんに言われたくないよ。あの様子を見ていたら、そんなことを考えていた人たちも諦めるよねー。」
「うぐ。」
また痛いところをついてくる。ライオネル陛下は出会って以来、なにかと理由をつけてはソルベ城に遊びに来ている。そのたびに訓練と言う名目で勝負を仕掛けてくるが、そのことごとくを私が叩き潰しているのだ。何かと繰ることを勘ぐった大人が引くレベルのやり取りに、殿下もマリアンヌ様との縁組が進んだのではないだろうか?
ただ最近では、ラグと遊んでいることのほうが多いと思うのよね、殿下。やっぱり同世代で同じ性別のお友達ってうらやましいわ。
「ライライくるの?」
「うーーん、どうだろう、学園へ通われてるいるし。」
「でんかーのぼーる。」
ちなみにだが、ルネとリカッソも殿下とは仲良しだ。いやまあこの天使たちを嫌う人なんていないし、いたら、滅ぼすだけだし。
「姉さんも来年、学園へ行ったら、いい人の一人ぐらいは見つかると思うよ。」
「ふふふ、ラグ、あまり調子に乗るものじゃないわよ。」
私も11歳になる。自分が他の子どもよりもお転婆な自覚はあるし、私よりも弱い男には興味はない。例外として殿下とラグがいるが、二人は性格の悪い兄と弟のようなものだ。父様と母様のような関係になれるとは思えない。もっとも二人もそういうつもりだろう。
なぜなら。
「おーねーーえーさーーーまーーーー。」
「ファルちゃんに言いつけて、お仕置きしてもらうからね。」
ルネを抱きしめながら勝ち誇る私の視線の先、元気一杯にこちらに駆け寄る少女の姿が見えていたからだ。
ファルベルト・ファムアット。未来の私の義妹であり、ラグの婚約者。
今日は、一か月ぶりに彼女は遊びに来る日だったのだから。
いや、そっちかよ。
双子の話もいれていたら、話が長くなってしまったけど、姉弟で戯れるシーンがどうしても書きたかった。




