14 ミサ8歳 じゅうりんする
王太子とのチャンバラが続きます。
「改めて、名乗る、俺の名は、ライオネル・クラウン。お前の想像通りだ、ソルベの女。だがこの時は不敬は問わない、本気でこい。」
そういって、ライオネル様はラグの木刀を構えてめっちゃにらんできた。うん、名前は知ってました。これでもソルベの人間なので仕えるべき人間の特徴と名前ぐらいは知っている。たしか私たちより一つ上の王子様で先日現れた変態さんのご子息様。
「ライオネルって、やっぱり。」
「ラグ、太子様のお望みよ、気にしたらだめ。」
止めようとするラグを制して、私も構える。そして答えずに踏み込んで足元を狙って横なぎに払う。
「甘い。」
王太子は合わせるように剣をふるって剣を弾き、返す刀で腕を狙って振り下ろす。うん、受けるだけでは詰められることは理解したらしい。でもまだまだ。
半歩下がって剣の軌道から身体を外せば、勢い余って王太子の身体が沈む。うん頭がいいところに。
「あいた。」
ポンと打ち込めば、その場に王子は沈む。剣を弾いて切り返すところまではよかったけど、腕だけで振っているせいですぐに体勢が崩れるんだよね。
「この!」
即座に立ち上がって王太子は、剣を構える。そして意趣返しなのか私の足元を狙って剣を払う。ならばと私は剣を地面に立てて剣を受け止める。がんといい音をして、王太子の剣が弾かれる。
打ち合いというのは基本的に高いほうが有利だ。だけど打ち下ろしというのは力がこもりやすい、まして私と打ち合うつもりだった王太子は剣を振り切ってしまい、立てていた剣にぶつかった衝撃はそのまま王太子の手に返ったのだ。痛いんだよねーあれ。
「ああ、な、なんだと。」
プルプルと震えているけど、剣を手放さないのは立派だ。ラグならもう泣いてる。
「続けますか?」
相手が落ち着くのを待って、私は問いかける。個人的には続けたいけど無理をさせのもあれだ。
「なめるな、ぶちのめしてやる。」
やだ、下品ですわ。
「クラウンの力を見せてやる。覚悟しろ。」
何度目かの宣言だけど、王太子の雰囲気が明らかに変わる。
お手本のような正面からの振り下ろし、私は剣を横にしてそれを受け流す。さっきよりも速く鋭い攻撃だけど、まだまだだ。でも体勢が崩れることはなく、構え直しから左右にも振り分けながら連撃が飛んでくる。威力は軽いけど、徐々にその速度が上がっていく。
「すごい。」
速さだけなら、そこらの兵士よりは速い。何より、技の起こりが分かりにくい。
うん?
数度の打ち合いで何か違和感を感じる。それ以上に速さに対応が難しくなってくる。
にやり、王太子が余裕の笑みを浮かべる。うん、なかなかに絵になる顔だけど、なにかいたずらをしかけたときの父様のようだ。
「あっそうか。」
自分の発する声がくぐもって聞こえた事実に、私は確信した。この人、魔法を使っているんだ。
打ち合いの違和感というか、王太子の動きに感じた違和感は音だった。木刀を弾くさいに聞こえるはずの音、木刀が風を切る音、お互いの息遣い。そのせいで、王太子の剣がずっと速く、重く感じるんだ。
「・・・・・。・・・・・・・・・。」
王太子が何か言っているけど、それも聞こえない。何をしているかわからないけど、このやりとりの中で私の耳と感覚は当てにならないということは分かる。
たしか、母様の勉強でもあった。戦いにおいて、魔法を併用して圧倒的なアドバンテージをえる。そのために魔法を使えるように兵士は訓練をするし、ソルベを含めた4家は戦場でも活躍したと。
生まれて初めて体験する魔法による戦闘に私は、驚きつつもうれしくてたまらなかった。なるほどソルベの魔法のように直接武器を作るのではなく、相手や自分が有利になるように魔法を使う。こういう使い方もあるのか。
とか考えている間に、王太子の攻撃はより激しくなっていく。
「・・・・・・・。」
ちらりと視線を向ければラグが心配そうに何か言っているけど、それも聞こえない。これって戻るよね、ちょっと不安になる。だけどね。
私はあえて微笑む。ラグを安心させるため、そして王太子を威嚇するために。
「ソルベの人間をなめないでいただきたい。」
聞こえているかわからない宣言をして、私は目を閉じた。耳をふさいだ程度で私が止まると思われるのは癪だし、感覚がないなら、感覚に頼らなければいい。
なにより、王太子の動きはもう覚えた。
最初は教本通りの振り下ろし、半歩引いてかわす。
右上からの振り下ろし、剣を振り上げて弾く。
腰を狙った横なぎはバックステップでかわして、返す刀で打ちかけて追撃を弾き飛ばす。
体勢を崩した相手に寸止めでの振り下ろしをするが弾かれたので、逆サイドから切り返す。
受け止められたと感じたので、あとは左右に振り分けながら何度も繰り返す。
一応寸止めもしているから、ケガをさせることはない、と思う。
「・・・・・・・・・・。」
なんだか楽しくなってきて、勢いを上げる。体感的には先ほどの王太子よりも少し早め。
と思っていたら、急に後ろから羽交い締めにされた。
「姉さん、やめて、もう。」
驚いて目を開けると、半べそで私に抱き着くラグ。
そして、木刀を取り落として頭を抱えてうずくまる王太子の姿があった。
どうやら、最初の数手で積んでいたらしい。
「うん、魔法よりも鍛えた技。それを体現してしまったわ。」
気づけば音も戻っている。魔法は解除され、勝敗は決してしまった。ちょっとつまらない。
「いやいや、絶対怒られるやつだかね、これ。」
不満そうに顔をしかめるラグの声だけがむなしく中庭に響いたのだった。
バトル描写を書くの難しい。でも武闘派ヒロインの面目躍如




