13 ミサ 8歳 実力を示す
王(叔父)のあとに王太子との遭遇です。
さて、国のトップである4家にはそれぞれ特有の魔法の性質変化ができると言われている。私たちソルベは氷の性質変化のようにその手法は家の秘術と言われている。
「まあ、ちょっとの工夫で、だれにでもできるんだけどね。」
「いまだに僕は、小刀程度しかだせないよ。」
「そうね、魔法の運用は個性があるから。」
続けて説明しながらも私は剣をラグへと打ち込む。加減はしているけれどきっちりと守っているラグの実力も相当なものだ。さすが私の弟。
ただ、魔法の才という意味では、私や母様は別格らしい。ソルベの直系である父様も私たちほど巧みに氷を操ることはできない。基本の三属性を人並みにこなすラグも才能はあるが、氷にはなれないのかちょっとしか氷を作ることはできない。
「で、クラウン家の秘術というのはね、「音」なの。」
胴を狙った横なぎはバックステップで逃げられる。うんこのくらいにしておこう。
「ほかの2家については聞いたことはないんだけど、王家の音は母様もできちゃうから。」
「なるほど、母様の魔法は神がかってますからね。」
はあはあと息を乱しながらラグは納得する。何か奇抜なことがあっても両親とその関係者なら問題ないと思ってしまうぐらい、あの人たちは化け物だ。
「でも音ってどんな魔法なんですか。」
「例えば、音消しね。先日の叔父様や母様が時々見せてくれたけど、自分が発する音をびっくりするくらい消してしまうの。」
「なるほど、時々母様が姉さまの背後をとれるのはその魔法で。」
「いや、あれは魔法なしの身体裁きよ。母様曰く、音を消すのは初歩の初歩なんですって。」
心技体、すべてそろえば魔法は不要。というのは父様も言っていた。
「うわ、すごいなあ。」
遠い目をしたくなるラグの気持ちはすごくわかる。
「でもね、先日叔父様が見せてくれたから、よく理解できたの。」
音の魔法というものはよくわからないけど、どうやって隠れているのか観察対象が増えたおかげで、違和感がわかった。だからこそ。
「拙い隠形なんてものは、無意味ですよ。」
言いながら手のひらの作った氷の石を後方の草むらに投げつける。
「うお。」
その勢いに押されるように草むら飛び出してきたのは音の子だった。
私たちよりも少し体が大きく、輝く髪の毛とひとみ。美しいと思うがそれ以上に敵意をむき出しにこちらを睨んでくるので台無しだ。
「きさま、いきなり何をする。」
「ほほほ、のぞき見をしているぶしつけな人に礼儀が必要とでも。」
あえて高飛車に、小ばかにするように私は言い捨てた。はっきり言おう挑発です。喧嘩を売ってます。
「くっ、なんだ伯母上に似ていると思ったが飛んだ無作法ものだな。」
イライラとした様子で立ち上がった男の子は、豪華な服だった、飾りのついたキラキラした上着に、汚れのない革靴。上流階級の人間がするその恰好の時点でその出自がわかりやすい。
「姉さん、もしかして。」
「しっ、ラグ。名乗られるまではいいのよ。」
さっそく気づいたラグに私は手を向けて黙らせる。せっかくの機会だし、きっと叔父様もそういう意図だったのだろう。
「で、何か御用ですか?不審者さん。」
うん、わかってますよ、あなたの正体。でもあえて言いませんよ。
「くっ、バカにして。」
見え見えの挑発に、目に見えて顔が赤くなり怒りをあらわにする男の子。そこには秘術である音魔法を看破されたという事実がぽっかりとぬけているようだった。」
「訓練中なんだろ、特別に俺が相手をしてやろう。」
そういって男の子は腰につけていた剣を抜く。おお、子ども用のサイズだけどしっかりとした鋼で刃もついている。いいなあ欲しいなあ。
「そうですか、せっかくのお誘いですし、お断りするのも無粋というものですね。」
慇懃無礼に答えながら私は木刀を構える。
「なんだ、お前そんな棒切れで俺と戦う気か。」
「棒切れ、失礼なこれでも特注のものですよ。」
イラっときた。これでも素材から吟味してサイズも重さも頑丈さもそこいらの木刀とは比べ物にならない一品なのに。
「お待たせするのも悪いですし、これで十分ですわ。」
「はっ、泣いても知らないからな。」
言うが早いが、男の子は剣を構えて切りかかってきた。うん私もだけど短期な人だな。
何より、遅い。
「はっ。」
掲げるように持ち上げた構えからの振り下ろしに斜め下から剣を合わせる。まっすぐな力ほど横からの力には弱く、剣が流れるようにそれて、男の子の身体ももたつく。
「なっ。」
男の子は驚いてバランスを崩すが倒れるほどじゃなくてその場に踏みとどまる。その動きで、彼がそれなりに鍛えるていること、そして、本気で切りかかろうとしているわけじゃなかったのはよくわかった。
「寸止めでもするおつもりでしたか、ソルベの剣術をなめてますね。」
追撃はせず男の子が息と体勢を整えるのを待ってあげる。
「姉さん、ほどほどにね。」
この時点でラグは私の心配をしていない。うん、相手の力量を正しく把握する実にできた弟である。
「っち、そこのお前、木刀を貸せ。」
と思っていたら王子は剣を鞘に戻してその場に落としてラグに迫る。おいおい、うちの弟に何しようとしてくれたんだ。
「は、はい。」
勢いに押されてラグが差し出した木刀を受け取り、何度か握りを確かめる。
「ふん、よく使いこまれている、ソルベの人間が優秀なんだな。」
うん、見る目があるな王子。
「確かに先ほどは寸止めでビビらせてやろうと思ったが、もう油断しない。打撲程度は覚悟してもらうぞ。」
言いながらも握りや重さを確認する姿は戦い慣れしているのがわかる。態度こそあれだけど男と言う生き物はこういうところがあると母様も言っていたし。
「こい。身の程を教えてやる。」
そして、自分からは攻めてこない。油断しているのか警戒しているのか。
「参ります。」
頭の上に剣を構え、踏み込みと同時に振り下ろす、剣術の基本の振り下ろしをやや早めに。
「ふん。」
丁寧に弾かれたので、今度は中段に構えてから胴を狙った横なぎ。バックステップで交わされる。
そのまま体を回転させて足元を狙った下段切り。右足を上げて躱される。
「お見事。」
基本的な3連撃を軽くいなされて私は期待値をちょっと上げたが、王子様はさらに怒り出す。
「バカにするな。先ほどそこの男。」
「失礼、私の弟、ラグ・ソルベです。」
「う、そうか、ラグというやつにやっていた動きと同じだろ、対処もわかる。」
うん、流石にバカにしてたのがばれたか。覗き見してたのは分かってたから試しただけど。
「ふふふ、冷静に相手の力量を図ろうとする姿勢は立派です。ですが。」
ふんと勢いをつけて、振り下ろす。
「うお。」
反応し、辛うじて受けたことを見ながら後方にとんで、胴体を狙って横なぎを払い。バックステップで交わされるが、そのまま突っ込んで不安定な足元を強かに打ち付ける。
「ぐわ。」
バランスを崩してその場に転ぶ王子。いや王子って名乗ってないから不敬は問われないからよし。
「お、おのれ。」
王子様自体もすぐに立ち上がって、剣を構えて続行の構え。
うん、元気だ。
「姉さん、これ以上は。」
「止めるな!」
とっても元気。でもラグに対する態度はいただけない。
チョットボコボコニシテモ、イイデスヨネ。.
まだミサのバトルフェイズは終了していない。




