君の隣を、自転車を押しながら歩く
2月、18時の通学路。
私は今日も、君の隣を自転車を押して歩く。
高校に入学したら、同級生の女子たちは同じような「JK」で、私もこの量産型JKになっていくのかな、なんて思っていたけど。君だけは、なんか周りの人とは違って見えた。1000人近くいる生徒の中で、10人足らずしか着用していない女子用スラックスをいつも身につけていて、髪がめっちゃ短くて、なんだか異彩な雰囲気を放っていた。でも、ちょっと話したら、至って普通の女の子なんだなって分かった。今までに出会ったことがないタイプの人だった。
こうやって一緒に帰るようになったのは、出会ってから結構経ってからだ。よくよく話してみたら、私と結構性格似てるし、好きな物も一緒だった。だいたい、歩いてる時も、「おなかすいた〜」だとか、「ねむい〜」だとか、生産性のない会話しかしないけど、そんな時間が結構楽しかった。
君が嫌がらせを受けていると知ったのは、秋のことだった。
「最近、クラスメイトに、変な噂立てられるようになって。私が昔いじめをしていたとか、二股してるとか。そんなわけないのに。みんなに言いふらされちゃって、最近クラスでは1人なんだよね」
そう悲しげに言った君の横顔を見つめて、『許せない』とか、『先生に相談した方がいい』とか、色々言ったけど。
君がクラスで孤立していることを、それを私に相談してくれたことを、嬉しく思ってしまった。
君がもっと1人になってしまったらいい。そして、君が私だけを頼りにしてくれたら。私以外のことを、考えないでいてくれたら。
そこまで頭によぎったところで、はっとした。いや、最低だ。君がひとりになってほしいなんて。私の心の中に、そんな加虐的なものがふくまれているなんて知らなかった。
そもそも、私には君にそんな感情を向ける資格はない。私たちはただの友達だ。
ただの友達、だったはずなんだ。
私は今日も、君の隣を歩く。君へ向けた、私だけじゃとても抱えきれないような、大きくなりすぎた感情を隠しながら。
この感情がどういう名前なのか、私にはわからない。いつ溢れてしまうかも、わからない。
でも私は、ずーっと君と「ただの友達」のままでいたいから。
だから、明日も、明後日も、いつまでも、君の隣を歩かせてほしい。ずるいかな。
お読みくださり、ありがとうございました。
生きてきて初めて小説を書きました。
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