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二つの世界  作者: Meeka
第二章 前世
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3 後世への第一歩

 ルーカスが14歳のとき、学校中をある噂が広がった。後世に行くことができるというものである。それだけだと、ルーカスは驚かない、11歳のときにそう思っていたからだ。しかし、この噂はそれだけではなかった。前世と後世を行き来している人がいる、というのだ。誰かはわからないし、なぜわかったのかもわからない。しかし、そういう噂だった。


 それから時は過ぎ、ルーカスが15歳の頃、グループで各地に回るという、11歳の頃の仕事はなくなっていた。その仕事は、それぞれの魔法に特化した人が行うようになったのだ。それにより、前世は以前よりずっと暮らしやすくなった。道を歩いても、フィーレの灯火が届かず真っ暗になるということはほとんどなくなったし、食料もある程度確保できていた。


 残す課題は、どれほどそれを続けられるかであった。言い換えれば、どれほど早く後世に行けるかであった。


 噂を聞いたのは、ルーカス、アオイ、ベン、ユーが揃って校庭でくつろいでいたときだった。複数の教員がそれを話しながら、呑気に廊下を歩いていたのである。それを聞いた彼女たちは放っておくはずがなかった。


 それからしばらくしたある日のことだった。


「ベン、ユーはまだ?」

「おう、あいつならもうすぐ来るはずだ。大事なペンとノートをどこかで落としたとかで、それを探していた」

「一緒に探してあげればいいのに」


 そう言ってルーカスがユーのいる場所へ向かおうとすると、ベンは引き止めた。


「バカ、今はもう就寝時間だぞ。女が1人で4階に行ったらおかしすぎる」

「あら、初めて私のこと心配してくれた?」

「……してねーよ」


 アオイはそばで笑っていた。




 今は就寝時間。だから、本当はルーカスたちも部屋で寝ているべきなのだが、今夜は違った。後世への旅を開始するためだ。


 この頃までに、マージもオームも、多くが命を落としていた。食料はある程度足りている、と先に述べたが、本来ならば、食料は足りるようになった、と記述すべきである。


 というのは、これまでに何人もの人が命を失ったから、言い換えれば、食料を必要とする人が十分に減ったため、今は足りているのだ。


 また、ヤンの消息は不明だが、スピルはあるとき突然学校を出ていき、それ以来帰ってこなくなった。それを受けて、エールスとクリスは学校に引きこもるようになった。他者との関わりも薄くなっていき、とうとうルーカスたちとも話すことはなくなった。


 さらに、コントロール系魔術のヘルベルト・アーノルドは彼女たちが13歳のときに失踪し、カクリス魔法学校の総合指揮官のハワード・セルビアンツィーノは、同時期に一度ダラン総合魔法学校を訪れてからカクリスには帰らずどこかに去ってしまったらしい。


 ダランに残っていても、いつかは死んでしまう。そう考えたルーカスたちは、後世への旅を始めることにしたのである。


 しばらく待っていると、ユーが現れた。手にはペンと思いのほか分厚いノートを持っており、アオイが取り止めもない目で見つめていた。


「ごめん。見つかりました」

「どこにあったんだよ」


 ベンが呆れたように言うと、ユーはローブの内ポケットを指差しながら答えた。


「ここに。いつもは内ポケットをあまり使わないから、気付かなかったんだ」

「は? さっきあれだけ確認したのに、やっぱりそこだったのかよ」


 ベンが呆れきっているのを横目に、ルーカスはそれぞれの顔を見て言った。


「準備はいい?」


 全員が頷いたのを確認し、互いに手を出し合い重ねていった上にルーカスが手を置いた。


「それじゃあ、行こう。まずは、プラルとの境にあるアイザック教会群遺跡へ」


 そう言うと、数秒後には何もなかったかのように静まり返っていた。


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