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二つの世界  作者: Meeka
第二章 前世
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17 現代魔法研究所(二) ①

 ベンの手当てが終えた後、5人は先ほどルーカスたちが乗ってきた瓦礫を使い、交代でアイアン島へ上陸していった。


 ルーカスは一度エニンスル半島の方を振り返ったが、もうかなり遠くに見えた。なんとかここまで来られたことはよかった。しかし、後世に行くためには、まだもう一踏ん張り必要だ。


 5人は右手側に見える現代魔法研究所らしき場所の敷地の手前まで歩いた。門の手前には、確かに「現代魔法研究所」と書かれている。が、門は崩壊しており、もはやその役目を果たしていなかった。


 5人は息を呑んで門をくぐり抜けた。


 門から建物まではさらに数10メートルの長さがあった。両サイドには何もなく、枯れた草だけが存在感を放っている。生命の気配は全く感じなかった。


 建物の目の前まで来ると、木製の両開きの扉が一行を待ち構えていた。背が高く、かなり重たそうだ。


 ルーカスは全身を使ってゆっくりと扉を開けた。気味の悪い軋む音が周りに響きながら静かに扉が開いたが、中は真っ暗だった。外のフィーレの光が内部をにわかに照らすだけで、入ってすぐ両サイドに2階に続く階段があることしか認識できなかった。


 ルーカスは先頭を切って中に入ってみた。足音が建物内に響いた。誰かが現れる様子はない。


「とりあえず私は1階の様子を探ってみる。4人はここで待ってて。……あ、アオイ、ナイフ一本だけ借りていい? イルケーで一本しか調達できなかったけど、その1本をさっき捨てちゃったから」


 アオイはルーカスに腰に持っていたナイフを手渡した。


「おい、1人で大丈夫かよ?」


 ベンは1歩出たが、ルーカスは笑顔を見せた。


「大丈夫。すぐ戻ってくるから」

「……わかった」

「もし私の悲鳴が聞こえたら、1番に駆けつけてきて」


 ルーカスはそう言い残すと、階段を登らず、中央に伸びる廊下を進んだ。次第に外からの光は届かなくなり、目が慣れてもほんの少し先しか見えなくなった。文字どおり真っ暗だった。


 左の壁に沿って歩いていくと、左の部屋に入るドアを見つけた。


「……まだ入るのはやめておこう」


 ルーカスはその部屋の前を通り過ぎ、さらに奥へと進んでいった。


 すると、次は左に廊下が続く場所に来た。暗くてよく見えないが、きっと右側にも続いているだろう。まっすぐ続く道はなさそうだ。どこかから少しばかり異臭がするが、建物が古いせいだろうと、ルーカスは特に気にしなかった。


 まずは左側に進んだ。壁伝いに歩いていくと、ドアノブに手が当たった。ドアの上部に、うっすらとだが室名表示板が見える。「研究室1-A」と記載されていた。


 彼女はさらに奥へと進んだ。右前方に、ほのかに光が差し込んでいるのが見えた。


 ゆっくりと壁伝いに進んでいくと、ちょうど光が差し込む直前で再びドアを発見した。先ほどと同じように、今度は「研究室1-B」と記載されていた。


 光の差し込む理由はすぐにわかった。右手奥に2階へ続く階段があり、2階からのフィーレの光がこちらに漏れてきているのだ。それゆえ、光はまっすぐではなく、絶え間なく揺れている。


 ルーカスは2階へ上ることはせず、廊下を折り返した。今度は逆側の壁伝いに歩いた。再び暗闇に入り込むそこに、ドアがあった。上部を見上げると、「控え室A」と書かれている。


「控え室? ……一体なんの?」


 ルーカスは先へ進んだ。次に、先ほど「研究室1-A」と書かれていた部屋の目の前で、新たに扉があった。「ダンスホール」とだけ書かれていた。


「……さっきの控え室はここのためのものだったのかな。意外にも、高尚な文化があったのね」


 ルーカスは再び歩いた。ちょうど、最初に曲がってきた場所まで来た。次第に異臭が強くなってきた。


 すぐ横には、再び扉があった。真っ暗で何も見えないが、手で触って確認した限りでは、2枚の両開きとなっていそうだ。きっと、奥のダンスホールのメインの入り口、と言えるだろうか。とすれば、この奥にも、もう1つ入り口があるのだろう。


 なお、反対側を見ると、言及するまでもなく最初に歩いてきた廊下が伸びている。奥には四人の姿が見える。意外にも遠いようで、かなり小さく見える。ここで声を出すわけにもいかず、ルーカスはそのまま通り過ぎた。


 ルーカスの思惑どおり、少し進んだ先に、再びドアノブが手に当たった。室名表示板は取れてしまっていたが、きっとここもダンスホールの入り口の1つだろう。


 ところで、悪臭が強くなってきた。


 ルーカスは再び歩みを進めた。左前方にまた光が差し込んでいるところがある。つまり、正面から見て左右対称で階段がある構造となっていた。


 ちょうど階段の目の前で、再び部屋があった。「控え室B」と書かれている。AとBでダンスホールを挟んでいる構造となっている。


 ルーカスは階段の目の前まで来た。ここも先ほどと同じようになっているが、違う点は、あまりにも階段に埃が積もっているところと、異臭が強烈に匂っているところだ。


 異臭のせいで、彼女は少し頭がクラクラしていた。


「あまりにも血生臭い……。早く戻ろう」


 ルーカスは階段で折り返した。今回も先ほどと同じように、これまでとは逆側を歩いた。これで、廊下で繋がっているところはすべて通っていることになる。


 先ほどの控え室Bの目の前で、ドアを見つけた。左右対称と考えていた彼女の予想どおりだった。見上げると「研究室1-D」と書かれていた。


「ということは、この先に1-Cがあるのね」


 ルーカスは強烈な異臭から逃げるように、早足で進んだ。室名表示板が取れていたダンスホール入り口前に扉があり、「研究室1-C」を発見した。


 そのまま通り過ぎると、次第に異臭は弱くなっていった。


「あっちに何かがあるのね……。あまり行きたくないけど、後で行かないといけないか……」


 ルーカスは最初の分岐を、4人が待っている方向に曲がった。遠くに彼女らの姿が見える。


 曲がってすぐのところに、ドアがあった。暗くてよく見えないが、最初に見つけたドアの目の前だ。上部には何も書いていない。


 ルーカスは暗闇を後にし、足音をできるだけ出さないようにしながら、しかし急いで4人の元に帰った。


 いつもありがとうございます。

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