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第二話 王城からの脱獄





意識を取り戻した俺が目にしたのは大きな檻、ジメジメとした床、そして薄暗いこの場所…地下牢の中だった。


運がいいのか悪いのか幸い、俺の体に手錠やら足枷はされていない。


「おいおい、冗談じゃ無いぞ。こんなクソゲー今すぐにログアウトしてやめてやる」


俺はいつもの様にメニュー画面を開こうと空中に円を描いてみるのだが、一向に出る気配が無い。何故だ。訳が分からなすぎてパニックになった俺は思い切り叫んだ。


「出ろよ!クソ、なんで、なんでだよ!!」


そんな感じにイライラしていると、後ろから威厳ある男の声が聞こえた。


「うるせぇぞ!」


恐る恐る振り返ると、そこには俺よりも拘束が凄い事になってるおっさんがいた。


見た目は色黒で、つるっパゲの頭からツノが生えている。多分人では無い何かしらの種族のゴツいおっさんだ。凄くおっかないけど、俺の中の好奇心が勝ったので、聞き返してみる事にした。


「え、え〜っと貴方は?」


俺が言うと、おっさんは腕や足の自由が効かないからか、顎をクイクイと俺に向けてした。多分こっちに来い的なニュアンスのそれっぽいジェスチャーを受け取った俺は近寄ってみる。


「来たか。我はタコスと言う。お前さんは何て言うんだ?」


タコスって…。色々と思う所はあるのだが、取り敢えずそれを全部後回しにして、俺も名前を名乗る事にした。


「俺は雄一だ。」


俺が名前を告げると、タコスはニタリと笑みを浮かべてから話し始めた。


「そうか雄一。さっきは怒鳴ってすまんかったな。この場所では、看守に目を付けられると色々と厄介なのであぁさせてもらった訳だ」


どうやら、看守が居るみたいだ。まぁ、地下牢なんだから、当たり前っちゃ当たり前だけど。


こうなると地下牢から外に出るのは面倒だろうな…なんて事を考えてから俺は言葉を返した。


「なるほどな。こっちこそ騒いで悪かった。」


俺が謝るとタコスは言った。


「いや、気にするな。話は変わるが雄一よ。その腰に付けたナイフで、我の拘束を解いてはくれんか?」


そう言われて俺は自分の格好がfpsをしていた時のまんまだという事に今更ながら気づいた。


俺の今の格好はヘルメットを被った、いわゆる特殊部隊みたいな感じだ。あんまりにも色々な事があったからか、自分の見た目など深く考えてもいなかった。


改めて確認の為に、自分の腰の辺りに目をやると、カバーに入ったナイフとリボルバーが入ったホルスターが、ベルトで固定されていた。


「いや、ナイフじゃ無くてコイツを使うか。」


俺はホルスターからリボルバーを取り出して、弾倉に球が込められているのを確認した。これがあの時に、カスタマイズしたままの状態ならば、相当な威力を持ってるはずだ。


そうで無いにしても、ナイフよりは貫通力もあるから、鎖を破壊できる可能性は高い。


「なんだそれは?」


どうやらタコスは銃を事を知らないらしい。なので簡単に説明してあげる事にした。まぁ、俺もfpsに関しては未熟者だから、あんまり詳しい事は分からないがね。


「コイツはリボルバーっていうんだ。まぁナイフよりも簡単に、この鎖を破壊できる武器って所かな」


そう伝えると、タコスは感心した様に頷いてから言った。


「それは凄いな。早速やってみてくれ」


「おうよ」


俺は返事をしてからリボルバーの銃口を鎖の根元に向けて…それからトリガーを降ろし、引き金を引いた。


バァン。そんな感じに乾いた音が響くのと同時に、鎖がタコスの手足から離れて、ゴロっとその場に転がった。このリボルバーの威力は、思っていたよりも凄いかもしれない。


「おぉ!取れた。鎖が取れたぞ!はっはっは」


喜んでその場で小躍りするタコス。何か見た目が怖そうな割に、行動や仕草は意外と面白い奴だ。


「良かったじゃんか」


俺もそう言って笑った。どういう形であれ、人助けすると気分は自然と良い物になるな。


「そろそろ来るな」


檻の外にある時計を見ながらそう呟いたタコス。それが何か気になった俺は聞き返した。


「何が?」


だが、俺の話など全く聞かないまま、タコスは他の牢に入っている者を指で数えながら、喋り続けていく。


「ほら見ろよ。どうやら他の連中も、全員準備は完璧らしいぜ。まぁ後数分でこの場はレボリューションするからな」


レボリューション?革命って事か。何言ってんだかよく分かんないけど、俺は取り敢えず頷いて相槌を打った。


「お、おう」


ーーー


そんな感じにして、数秒経ってから。看守が見回りにやってきた。だがその様子はどこかおかしく、突然その場で制服と帽子を脱ぎ捨てた。


そこから現れたのは大きなツノにコウモリの様な羽を持つ美少年らしき人物。多分これタコスと同じ感じの種族の方だと思う。


そんな彼は手を大袈裟に開いて、俺ら囚人に向けて語り始めた。


「やぁ、助けに来たよ君達。この腐れきった人族至上主義を、ボクらでぶっ壊そうじゃないか。」


「「「おおおおおおおおおおおおお!」」」


その言葉の後にこの地下牢全体に響き渡る大きな歓声。パッと見ると、中には踊り狂う者、雄叫びを上げる者など色々な奴らがいる。


何より印象的なのは、その誰もが人では無い特徴を持っている事だ。


何で俺こんな所に入れられたんだろうか。やっぱりヘルメットしてるから?特殊部隊みたいな格好はファンタジー世界だと魔物判定なの?


そんな風に考えていると、その美少年はタコスと俺のいる方に近付いてきて、その檻に触れてニタリと笑みを浮かべた。


するとグニャリと檻はねじ曲がり、タコスの大きな図体でも余裕のあるくらいの出入り口が、俺の目の前に完成した。


「おやおや、タコス。君はどうやら隣の子に助けてもらったみたいだね」


そんな感じにタコスに話しかける美少年。するとタコスは俺の頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でて言った。


「本当コイツはいい奴だぜ。是非我ら魔王軍に加えてもいいレベルの魔族だ」


なんか魔族扱いにされてるけど、黙っておく事にした。助けに来た美少年が言ってる内容を思い出してみると、何か人に対してあまり好印象を持っている様には思えなかった。


なら無理に人である事を名乗るより、この場所で有利に事を進める為に魔族のフリをするのも悪くない。


「あ、俺雄一って言います。魔族っす」


俺の渾身の嘘が果たしてどこまで通るのか、内心不安しか無いのだが、美少年はこちらを覗き込んで一息付いてから言った。


「ふぅん。その奇妙な見た目から漂う異様なオーラ。結構見込みありそうじゃん」


どうやらバレていないらしい。というか、魔族目線で見てもこの格好はおかしいのか。まぁ、ファンタジーな世界の人からしたら、この見た目がおかしいって思うのが普通なのかなぁ。


「だろ?はっはっは」


それに応える様に笑うタコス。褒められたのは俺のはずなのに、何故か俺以上に嬉しそうである。コイツもやっぱりどこか変わってる。


ーーー


そして無事、あの地下牢から解放された有象無象の魔族達プラスα俺。地下牢から階段を踏み越えて、何なく外の草原へと脱出する事に成功した。


信じられないくらいに上手くいったので、正直驚いている。隣でニコニコ笑ってるこの美少年が、優秀だったのもあるだろうか。


「いやぁ、呆気なかったな。脱獄不可能と噂の地下牢もこのボクには敵わなかったらしい。」


そう豪語する美少年、その隣にいるタコスも手を叩いて言葉を返した。


「はっはっは。何であれ脱出は成功という訳だ!我々はこれから魔王城に戻り、この国を支配する為の準備をしなければならんな!」


支配というワードに少し戸惑った。これはかなり大事になってきたんじゃ無いのか?それに部外者の俺でさえ、人と魔族の対立がありそうなのが、嫌と言う程伝わってきた。


もしかして人間の俺が彼らに手を貸したのって、凄い大きな間違いだったりするのか?


そんな風に考えながら、行き先もあまり考えていなかった俺は取り敢えず、タコスに着いて行こうかなんて考えていると、その背後から凛々しく透き通った声が聞こえた。


「待ちなさい魔王軍。貴方達をここから逃す訳には行かないわ。」


振り向いてそこに居たのは、友人の山形が推しているシフォンにそっくりな少女。青い髪に青い瞳、布みたいに薄い服で、巨大な胸…おっぱいを物凄く主張している痴女みたいな格好をした声優ボイスの美少女が居た。


もしかして彼女が居るって事は、この世界って山形から借りたエロゲーの世界なのか?いや、そうだとしてもfpsをやっていた俺が、何でこんな世界に居るんや。


俺がそんな感じの事を色々考えていると、隣にいたタコスが顔を青ざめて言った。


「げ、お前らは!」


その声と共に、目の前にシュバっという感じに白い鎧を来た男と、それを取り囲む痴女みたいな格好をした美少女達。髪の色もカラフルで赤青黄色緑というちょっとしたレインボーだ。


後ろにちょこんといる、小さい背丈の黄色の娘以外全員が、現実ならあり得ないほど大きなおっぱいを持っている。


そんな連中が全員揃って、戦隊モノのポーズみたいなのを決めてから、俺らに向けて言った。


「我ら聖騎士団ある限り、如何なる悪事も許されない!魔族は滅せよ人族に栄光あれ!」


特撮なら後ろで大きな爆発と煙が起こってるんだろうなぁ。なんて考えてみる。というか話が変わるけど、そのワードが怖いよ。魔族を滅するって遠回しに殺すって言ってる様なモンじゃないか!


「ダンテ様。あんな雑魚魔族共、さっさと倒しちゃって下さい!」


後ろからひょこっと現れたのは黄色の娘。生意気そうな声でそう言った後、地味にイラッと来る絶妙な表情でこちらを見てきた。


「穢らわしい魔族共。すぐにこの剣のサビとしてくれよう。」


だが、その黄色のセリフなど全くガン無視する様に、唯一の男である赤色君はその背中に背負っている剣を引き抜いて、こちらに向けて構えた。


正直おっかないと思う。恐怖を覚えた俺は美少年の後ろに緊急回避して、何とかしてくれる事を期待してみる。


だが、肝心の美少年は額に汗を浮かばせて、これまでの様な余裕ある態度を崩してしまっていた。そして諦める様にポツリと言った。


「困ったねぇ。いくら容姿端麗で頭脳明晰なボクでも、この聖騎士団全員を相手にする余裕はもう残ってないよ?」


なんてこった。美少年が無理なら、タコスがなんとかしてくれるのか?なんて考えて目線を送ってみる。


「ならば仕方あるまい。我とお主と仲間全員で転移して、この場は誇り高き魔族である雄一に任せるとしよう。」


なんかとんでもない事口走りやがったぞ、このタコハゲ。何がどうしたらそうなるんだよ。俺は慌てて抗議しようと口を開いた。


「え、ちょっと待て。おいおいおい。」


俺が言おうとすると、それを遮る様に美少年が話し始めた。


「そうだね。このボクでさえ感じてしまったよ、雄一の持つ桁違いのオーラ。その不敵なフェイスから覗く鋭い眼光から察するに聖騎士団など敵では無いと物語っている。」


何という事だ。ありもしない事を一気に、でっち上げられてしまったよ。今すぐ否定しないと、とんでもない事になるじゃないか!


「何勝手に解釈して物語ってんの?待ってよ!俺も魔王城まで連れてけよ!」


俺の言葉が聞こえないのか、タコスはニタリと笑みを浮かべて釈明をガン無視してから言った。


「何、あの勇ましい容姿に、我の鎖を容易く破る実力を持っている雄一なのだから、聖騎士団など一瞬だろう。では、さらばだ我が友よ」


その言葉と同時に周りに一斉に現れた魔法陣がタコスと美少年、その他俺以外全ての魔族の体を包み込み始めた。


「ふざけんな!話を聞け!このタコハゲ野郎ー!!」


光の様に体が溶けて行きその場から消え始めた連中に向けて叫んでみるが、無意味。完全に俺を置き去りにして行きやがった。


つまりこの場に残るのは、因縁とか全く欠片も無いハーレム戦隊と俺。何という組み合わせだろうか。何がどうなるか、俺にはさっぱりわからない。


戸惑って状況を整理しようと必死に頭を働かせていると、今さっきの黄色娘が、またこちらの方を覗き込んで生意気そうに言った。


「逃げられちゃったみたいだねダンテ様。今のところ残ってんのは、そこにいる雄一とか言う弱そうな奴だけね」


そう赤髪…ダンテに伝えた黄色娘。だが肝心のダンテはそれをガン無視して、他のシフォンら青緑娘らに向けて言った。ちょっと可哀想だ。


「まずは魔王軍の一員と思わしき奴を半殺しにして、情報を絞り出すしか無い。見た目も奇妙で不気味な上、何をするか分からないから、油断するんじゃ無いぞ」


今、半殺しって言いましたか?マジすか。冗談じゃないぞこの状況。仕方ないっちゃ仕方ないけど、完全に魔族扱いだな俺。


「「はい!」」


それを聞いたシフォンと緑色娘は、ニッコリと笑みを浮かべて元気良く返事をした。おい、山形。まさかお前の推しが、こんな猟奇的な事をニコニコとやれるサイコパスだとは思ってなかったぞ…。


「…おいおいマジかよ」


思わず口からその言葉が漏れた。マジでどうしよう。確かに俺はリボルバーやらナイフを持っているけど、それを同じ人である彼らに向けるなんて、抵抗感凄くて出来ないぞ。


「抵抗するなら殺す。抵抗しなくても殺す。君にあるのはこの二つのどちらかだ」


「殺意しかねぇ!?」


思わずツッコミを入れてしまう程恐ろしく短絡的な発想。こっちが躊躇ってるのが馬鹿らしくなっちゃうよ、こんなん。というか、いくら憎き魔族だとしても、そこまでするの?怖すぎん?聖騎士団。怖すぎるよ?聖騎士団。


それに俺が馬鹿みたいな事を考えてるうちに、剣をこちらに向けて構え直してきた。流石にそろそろ不味いのでは?


「行けー!ダンテ様。やっちゃって下さい!あんな雑魚さっさと倒しちゃって下さいよ!」


黄色娘がそう言うものの相変わらずダンテはガン無視を決め込んでいる。マジで不憫だよ。少しくらい構ってあげてよダンテ様。


「…行くぞ。」


そう言われた俺はすぐに言い返した。


「来なくていいよ。マジで来んなよ。というか今すぐ帰ってくれ」


そんな俺的コミカルな返しに、ダンテは真顔のまま返事すら返さない。奴は俺の方へ駆け出して来て、剣を振り下ろして来たので思い切り体をローリングさせて回避する。


思い切り回転した反動で気持ち悪くなったけど、酔いを覚ます時間は俺には無い。その後、何回も迫り来る剣戟を何度もローリングして、回避した。


ーーー


俺がローリングのし過ぎで疲弊して、ゲロを吐きそうになっていると、向こうも同じ様で息を整える為に一度立ち止まって剣を納めた。


「次こそは…必ず仕留める。八つ裂きにして四肢を切り刻み、お前の体そのものを粉砕してやるからな。」


「ひぃぃ!」


思わずそう言ってしまうくらい怖い。マジで、殺しに来てるから笑えない。運がいいのか悪いのか、この恐怖のおかげで酔いは覚めた。


「ダンテ様援護します。神の御加護を!」


シフォンは大きな胸を上下に揺らし、杖をブンと地面に振り降ろした。今、俺が戦っている最中で無ければ、その乳をガン見していただろうけど、今辛うじて目に入ったのは、その遥か下にあるふくよかで白く健康的な太ももが、たぷんと揺れる様子だけだった。


というか俺、シフォンの太もも見てんじゃん。やっぱりこんな生死を賭けた状態でも、内なる欲求ってのは抑えられ無いのか…。


そういう風に、凄く窮地に立たされた俺に対して、更に追い討ちをかける様に、彼女はダンテに向けて、rpgで良くあるサポート的な魔法らしき物を使った。


それの影響か、ダンテの体は七色に輝いている。某配管工の無敵モードにしか見えないその見た目は、俺の本能が近付いては駄目だとサイレンを鳴らしている。


「ありがとうシフォン。君から貰った正義の力、ちゃんと受け取ったよ!」


ダンテはこれから人殺しをする者とは思えないレベルの、爽やかイケメンスマイルをシフォンに向けた。少しムカつく。この男があのむっちり太ももを支配しているという事が、物凄く気に喰わない。


というか、改めて見ると、引き連れてる女全員肉付きがいいな。黄色娘も胸は平らだが、下半身は中々…。


クソ、何現実逃避してるんだ俺。エロい事ばっかり考えて現実逃避をするんじゃ無い。落ち着け。この場にあるえっちな太ももの数を数えるんだ。2〜4〜6


「あ、あたしも応援する!頑張れダンテ様〜!負けるな〜!あんな雑魚魔族倒しちゃえ〜!」


今さっきチラ見した下の肉付き良さめの黄色娘が、ダンテに向けて中々熱狂的なコールを送る。…がしかし、当の本人はやはりガン無視だ。何これ、悲しくなって来ちゃったよ俺。


「これで終わりだ!!!」


剣を鞘から引き抜き、七色のオーラを放つダンテ、いよいよ本当に俺の命が危ない。悲しい事に、俺も人殺しをする覚悟を、決めなきゃいけないみたいだ。


「正義の力!今こそ見せてやる!光り輝け!プリズムソォォオドォォォォオオ!!!」


迫り来る七色の一撃。それが直撃するよりも、早く撃つ。今考える事はそれだけだ。


ホルスターに手を掛けて、リボルバーを引き抜いた。そして即座に銃口をダンテの心臓の方に向けて、引き金を引いた。


「クソ。悪く思うなよ、これは正当防衛だからな!」


今更の言い訳と共に打ち出された弾丸。それは虚空を割いて今、剣を振り下ろそうとするダンテの胸部に迫って行く。


「ダンテ様!危ない!」


だがここで、信じられない事が起こる。黄色娘が何かを察知したのか、剣を振り下ろす途中のダンテの体を突き飛ばしたのだ。


「なっ…」


そう言葉を漏らして剣を手に握ったまま、地面に倒れたダンテ。代わりに弾道には、あの黄色娘が入ってしまったのだ。


そのまま彼女は、ダンテの隣に力無く倒れた。…俺はなんて事をしてしまったんだろうか。


確かに今さっき、人殺しをすると覚悟を決めたけど、気分が悪い。もう二度とこんな事したくない。


何も考えたくなくなって、その場で俯いていると、起き上がり剣を納めたダンテは、俺に向けてこう言った。


「貴様が何をやったかは知らない。だが、想像以上の実力を持っている事が分かった。一度体制を立て直す為、この場は引く」


周りの連中も集まって、さっきタコスら使っていた様な転移魔法が発動された。ただ一人、黄色娘を残して。


「…おい待てよ、仲間を置いてくのか?」


俺が問いかけると、ダンテは黄色娘の方を見てから吐き捨てる様に言い切った。


「アレは私の前に勝手に割り込んで、そのままお前の手により死んだ。愚かな女だ」


「ダンテ様行きましょう」


ダンテだけならまだしも、シフォンや緑色娘も同じ様に、黄色娘の事を心配すらしない。こんなの余りにも気分が悪い。


少しでもこんなクズの太ももに、欲情していた自分に物凄い嫌悪感が伸し掛かる。


俺は胸の奥で突き動かされる感情のままに、ダンテら聖騎士団に向けて言った。


「待てよ。こんな状態にした俺が言う義理じゃねぇけどな。アイツはお前を庇ったんだぞ!なんでそんな酷い事が言えるんだよ!」


だが、俺の言葉を聞いたダンテは呆れる様な素振りを見せて返した。


「魔族の戯言に聞く耳など無い。雄一、貴様は次会う時に必ず殺す」


結局俺の言葉など届くわけが無く、そう言ったのを最後に、聖騎士団は姿を光の中に消した。


ーーー


俺は一人残された黄色娘の元に駆け寄って、容態を確認する。パッと見た感じ、その体に傷らしきものは見られない。


胸に耳を当てて、心臓の音が鳴っている事に気付いた俺は安堵した。彼女は生きている。あんな連中よりも、遥かに気高いその魂はこの中にちゃんと残っている。


「あぁ…。良かった」


気付けばそんな声を漏らして、泣いていた。みっともないかも知れないが、本当に体全体から緊張の糸が切れた様に泣いた。


俺はこれからどうするか、特に決めていない。だから今は少し、彼女が目を覚ますまで待ってみようと思う。








最後までお読みいただきありがとうございます。

なんやかんやで続きましたこのシリーズ。


今後の展開は雄一が元の世界に戻る為の手がかりを探しに、このエロゲ世界を、冒険する感じにしようかと思ってます。チート少々、太もも沢山。そんな作品に出来る様にやる気を出して頑張りたいです。


さて、話は変わりますが、次回のガンナーズ・ハイは…[手掛かり]です。相変わらず荒削りな作品ではありますが、気が向いたら見てやってくださいネ。




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