第一話 パラレルトリップ
人々の持つ技術は発展して、人々の脳と直接繋がって思うままにゲームを体験出来る様になった近未来。
その時代ではVRゲームが絶賛大流行していましてね。皆が様々なジャンルのゲームを遊ぶのが、ごく普通で一般的になった訳です。
まぁ、つまりその中の一人がこの俺、三原雄一という訳でありまして。それでこれからその、友人から勧められたfpsゲームで遊んでいた時の話をしようかと…。
おっと失礼。皆さんはfpsゲームをご存知だろうか。いわゆる銃でドンパチやり合うゲームのジャンルなんですけどね。
大変申し訳ないのだが、俺はその手のゲームに詳しい訳では無い。恐らく知識量で言うならば、にわかofにわかと言っても過言では無い。
では何故そんな話をしたかって?それはこれからの話に少なからず、関係する…かも知れない話だからだと言わせて貰いましょう。
それでは、長い前置きはここらにして、本筋のストーリーを語るとしましょう。
あれは…俺が友人とfpsゲームをマルチプレイし終えた時間帯。おそらく大体夕方5時過ぎ辺り。
それは、どういう訳かfpsのノーマルモードをプレイしようとした際に、意味も分からないまま、俺がエロゲーの世界に飛ばされた時の話。
ーーー
太ももが好きだ。隠しても隠さなくてもエロい事に変わりは無いからだ。どちらかと言うならば、モチモチで柔らかな太ももが好きだ。
見ているだけで満足出来る。液体の様にとろとろと揺れているその太ももに挟まれたいと、人生の中で何度思った事か。
「やはり、女の子の部位なら、太ももが一番だろうよ?なぁ山形」
俺は瓦礫の裏に隠れたまま、友人である山形に無線機で連絡を取る。
絶賛アサルトライフルで仲間が撃ち合いをしている中だが、それを差し引いても問題無い位にこの話題は重要と言える。
「は?でっけぇおっぱいに決まってんだろ。足見て興奮するのはお前だけだよ」
どうやら、山形は乳以外に興味が無いらしい。なんとも寂しく人生を損している奴だろうか。ちなみに俺に他者を否定したりはしない。
むしろフェチズムは広大な大海原だ。幅広く青く母なる地球規模に、デカイんじゃねぇかな。
皆それぞれ好きなものがあって、それを純粋に好きだって言える様になれば、きっとフェチ同士の戦争も無くなるんじゃないか?
そんなアホみたいな事を考えていると、三原が声を荒げながら無線機越しに言った。
「おいおい!いくらB地点の安全地帯に居るからって気を抜くなよ。というか、お前今ちゃんと陣地取ってんだよな?三原」
今やってるゲームはA.B.Cの三つの陣地を取り合うモード。俺はまだ初心者だから良く分かんないけど、その内の二つを最後まで、確保しているチームが勝つらしい。
それで俺は今、その中で取り合いが一番激しくなるB地点の入り口で、リボルバー片手に敵が来るのをぐうたら待っていると言う訳だ。
「大丈夫大丈夫。敵とか特に見えないしマジで大丈夫だから安心しろよ。お前と意味も無くフェチ語りする余裕がある位には、マジで問題ねぇってマジで」
山形にそう無線を返した後、返事を待ってる俺の下から、カランコロンと何かが転がる音がした。
「あ?」
足元にあったそれを、取り敢えず手に取ってみた。なんか硬くて丸っこい。YouTubeの動画のサバゲープレイヤーが腰の辺りに付けてる、手榴弾みたいな形をした奴だ。
というかこれ手榴弾では?あ、俺馬鹿やん。
ジュドォォォォォォォォオオオン!
「おい三原ァァァア!!」
満タンだったhpが一瞬で吹き飛んで、その場にぶっ倒れた俺。その場に残された無線機からは山形の怒号が虚しく響いていた。
[game over]
真っ赤な文字でその表記が現れた。どうやら死んでしまったみたいだ。普段だと30秒後にリスポーン地点で復活する仕様だ。だが、今やってるモードは何か復活出来ない仕様らしい。
というか死んでいたら動けないだけで、視界は割と自由なのね。俺の死体を踏み越えて、わんさか敵チームがB地点に入っていくのが見える見える。
それにこの死体視点だと、下から女アバターのむっちり太ももを拝めるんだな。なんか得した気分だぜ…全く。
ーーー
こうして、たぷたぷと揺れてる太ももをボケーっと眺めてたらゲームは終了。俺以外の味方も大体倒されて、B地点はまんまと制圧されて、俺らのチームは敗北してしまいましたとさ。
ちなみに山形は芋砂という、後ろで動かないニートみたいな奴をやっているので、そもそも陣地に入らないから死なずに生き残った。
だがただのニートでは無く、背後から敵をキルする役目があるらしいのだが、残念ながら山形のキル数は清々しい程の0だ。
まぁ、陣地の取り合いをするゲームなのだから、そもそも陣地の辺りにいなければ戦闘すらしないので当たり前だろう。
それで前に何回か、俺が陣地に入れって促して見たものの、山形は「キルレが下がるからやだ。」とか言っていた。
そのキルレとやらが何なのかは知らないが、それに俺は友人が嫌がる事を強制するほど俺は鬼では無いのだ。
ーーー
その後ロビーに戻った俺たちは、今回の試合の話で盛り上がった。それで結局の所、俺の死に様がどうだったかを知らない山形から、それを聞かれた俺はありのまま答えた。
すると山形はその場で手を叩き大笑いした。
「全く、手榴弾を掴んで爆発するとか、馬鹿にしてもレベルが違い過ぎて笑えるぜ」
呆れた様な言葉選びの割にめちゃくちゃ嬉しそうに語る山形。コイツいい笑顔じゃねぇか。俺も釣られながら笑ってそれに答える。
「あははは。あははは。まぁな、ゲームは馬鹿やってなんぼだろ」
これは俺の持論だ。現実にはありとあらゆる縛りやルールがあるけど、ゲームならばその壁を破れると考えてる。
だから現実ならやらないだろう馬鹿みたいな事を沢山して、馬鹿みたいに笑う。それが俺的ゲームの楽しみ方である。
「ふっ…。まぁそうだな。やっぱりお前とやるゲームは退屈しないぜ。またやろうな」
山形は完全に笑い切った後、こちらにサムズアップをしてから、メニュー画面を開き、ログアウトのボタンに触れながら言った。
「あぁ。また今度な」
俺も手を振ってそう言うと、山形は何か言い忘れていた事を思い出したのか、ログアウトから手を離してこっちの方を向いて言った。
「そいえば、話は変わるんだが、俺の貸したエロゲーはやったか?アレはいいぞ。ガチで抜ける」
そう、エロゲーとは紛れもなく、えっちなR18ゲームである。俺は遅生まれなのでまだ17歳だが多少のルールは破っても…問題無いはず。
まぁ、話を戻すと山形の言ってるエロゲーとはVRゲームで実際にキャラクターとイチャコラ出来るすんごいゲームなのだ。
名前は長かったからあんまり覚えてないけど、パッケージの絵はどれも際どく、中々えっちで良き物だったと記憶している。
山形には内緒にしているんだが、実を言うと俺はエロゲーを遊んだ事が無い。だからか、なんか恥ずかしさと、意味の分からない抵抗感がムズムズと湧き上がり手を付けていない。
「マジか、まだやってねぇわ。とりま時間がある時にでもやってみるぜ」
俺がそう告げると、山形は顎に指を当てながら目付きをハッとして言った。
「おう。ちなみに俺は聖女シフォンたん推しだもはや嫁を超えたマザーだと断言できる」
シフォンたん?恐らくパッケージに書いてあったキャラのどれかだろう。コイツの事だからその中で一番巨乳だった奴だろう。見た目は青髪で布みたいな服を着ていたキャラだったと思う。多分ね?
というかアレで聖女は無いわ。あんなん性的な女って感じの性女だよ。まぁエロゲーなのでアレがデフォルトなのかも知れないけど。
「それってあの布みたいな服の女か?」
俺がそう返すと、山形は子供を送り出す両親の様に感慨深い顔立ちになりながら答えた。
「そうそうそれそれ。まぁ、やればわかる。お前もいずれすこすこシフォンたん最推し連合軍に、加わる事になるだろうよ」
山形の圧が面倒になった俺は、それらしくロビーに飾ってある時計をチラ見してから言った。
「お、おう。そいえば時間はいいのか?そろそろ4時過ぎそうだけど。確か塾あるんだろ?」
俺がそう時間を教えると、山形は慌てて同じ様に時計の方を向いてから慌てる様に言った。
「あ、やべ。じゃあな〜」
「おう。またなー」
去り行く山形に俺も手を振りかえし見送った後。俺も同じ様にログアウトして現実世界へと戻るのだった。
ーーー
頭に付けていたVRマシン様のヘッドギアを外してから、俺はそれを机に置いた。その後に体から力を抜いてベットに倒れ込み、シミ一つない天井を見上げた。
現実世界に待ち受けるのは静寂。無音。そして孤独。あ、厨二病とかじゃないよ?本当にら静かなんだ。それこそ自分の心臓の音がドクドクしてるのが分かるくらいには。
それに、家族は皆基本的に家の中に居なくて、誰もいないからね。俺が喋るのは大体、山形とゲームをしてる時くらいかな?
まぁ、普段が静か過ぎるからか、俺は沈黙する時間が苦手だ。何も返事が無いと少し寂しくなっちゃうナーバスな男だからね。
そろそろ動かなきゃならないなぁ。数少ない友人が言っていたエロゲーに正直あんまり興味は無いんだけど、話題の為には仕方ない。
本当だよ?話題になった時楽しくお話し出来る様にする為の事前知識というか、何というか。べ、別にえっちな体験をしたいとか、そんなんじゃ無いんだからね?
「さてと。」
俺はそう呟いてから机の上にある古ぼけたラジオを流す。これだけで沈黙と、俺の中の不安が消え去るのだから驚きだ。
今というそこそこ進んだ時代でも、無線はまだ繋がっているのを思うと、何とも言えないしみじみとした気分になる。
ちなみにこのラジオは滅多に顔を合わせない親父からの唯一プレゼントなので、そこそこ大事にしている。
そして俺は、ラジオ越しに流れていく色んな音楽をbgmにしながら、バッグに入ったエロゲーを取り出して睨み合う。
パッケージはrpgとかでよく見る勇者を、その他大勢の際どい服装をした美少女が取り囲むという物。タイトルは『強いぞ凄いぞオレの聖剣。敵も女もこれでイチコロさ。』という…何とも言えない物だった。略して強コロとか付け加える様に書いてあるよ。コレ。
何か友人がこれで致したと思うと、不思議と悲しい気分になった。他に方法は無かったのか?今でもAmazonやら楽天やらを使えば…そのえっちなビデオは手に入るんだぞ山形よ。
だが、改めてそのタイトル以外を見ると、確かにえっちである。二次元美少女の極みとも呼べる完璧なキャラデザイン。下につらつらと並ぶそこそこ豪華そうな声優陣。
それをVRゲームで現実の様に堪能出来るのならば、確かに悪い物では無いのだろう。だが何かそれを今やる気にはならなかった。
無駄にタイトルのせいで冷静になってしまったからだろう。本当に馬鹿みたいだ。
俺はエロゲーを諦めて、バッグの中に押し込んだ。その後、机の上に置いてあるラジオの音を止めて、隣に置いてあった炭酸水を口に流し込む。乾いた喉を潤して、これからやらなきゃならない課題の事とかを頭の隅から追いやった。
俺はこの後一人でfpsゲームをする事にした。
まだやり始めたばかりの初心者なので、一緒に遊んでいる山形には、いつも迷惑をかけてばかりだ。だから少しは練習しておいて足を引っ張らない様にしたいと思ってる。
そんな事を考えていると、俺の頭に付けたヘッドギアが音を立てて、ぐるぐると視界が渦を巻き…あの騒がしくも愛おしい戦場の光景を映し出していく。
ーーー
ロビーに入った俺は、まず武器の整備をする所から始める事にした。メニュー画面から武器庫を選んで、沢山ある武器を見る。
この中からメインウェポンとサブウェポンの二つを選んで、それをゲーム内で使う訳だが。その場合だとメインに大型銃、サブに拳銃やナイフなどを持つ事になる。
だが、しかしそれにも例外がある。このゲームは一つ特殊能力を付けることが出来るのだが、そのサブウェポンマスターという物がある。
その能力はメインウェポンを持てなくなる代わりに、サブウェポンの二つ持ちが出来て、弾が無限になるのだ。
だが、山形からは「そんな馬鹿みたいなもん使うくらいなら、大人しく厨能力使っとけ」と良く言われた。まぁ、いくら弾が無限になるとはいえ所詮はサブウェポン。メインウェポンとの性能差は歴然である。
だけど、俺は意地でもこれを使いこなしたい。
だって、リボルバーとナイフの組み合わせとかカッコいいじゃないか。何よりもこの三原はロマンを愛する男なのだ。
という訳で、リボルバーとナイフを装備した俺は早速セッティングを始める事にした。リボルバーは、射撃速度と威力に全部ステータスを振って、ヘッドショットでワンパン出来る様に。
ナイフの方は持ち手にグリップを付けて、その刃を赤色にスプレーで染め上げた。まぁ塗装しようがしまいが、ナイフの能力は変わらずなんだけどね。気持ちの問題だよ、いっつまいふぃーりんぐ。
そんなこんなで曖昧な英単語を頭に浮かべた後、俺のキャラクターを見てみる。銀色のリボルバーと赤色のナイフを持ってるだけでやっぱりカッコいい。
何よりもその見た目が、ヘルメットを被った特殊部隊の様なのもベストマッチして、何か実際の戦場に居そうな熟練の兵士っぽさがある。
完璧だ。後はこれからゲームを繰り返して、その見た目の通りのプレイヤースキルを俺が手に入れるだけだ。
「さてと、行きますかね。」
俺はロビーから出て、扉の前に立って次のゲームが来るまで待つ。しばらくすると、目の前が白い光に包み込まれて行き…。
ーーー
気付けばそこは洋風の城の中、目の前にはそれっぽい見た目をした王がいた。隣には王妃もいる。俺はその目の前にいた。あれ〜なんで?どゆこと?
「なんだ貴様この野郎!」
髭ボーボーの王様が滅茶苦茶キレ散らかしながら、俺に向かってそう言った。いや、俺も分かんないよ何これは。あのゲームのイベントか何かなのか?
「いやいや、アンタの方こそ誰っすか」
訳も分からないままではあるが、取り敢えず俺が問いかけると王は偉そうに語り始めた。
「ワシはサマオウという。今さっき異界の地から勇者を呼び出そうとしたのだが、何なんだ貴様!その見た目勇者では無いじゃろう!怪しいぞ!」
突然そう言われた俺は戸惑った。どうやらこの話の内容だと勇者を呼び出そうとしたとか、そんな所らしい。
いや、話題が別ゲーだろ。「fpsに勇者なんかいねぇ。」って山形が言ってたもん絶対違うぞ。何これ何がどうしてこうなった?
というか名前が簡単なアナグラムだよこれ。サマオウって入れ替えたらオウサマじゃんか。
「は、いや?おいおいおい、待て待て待てサマオウとやら。勝手に呼び出しといて勝手にキレるって酷く無い?」
俺がその場から立ち上がって、正当な主張をするとサマオウは声を荒げて威嚇してきた。
「黙れ!何か見た目怖いから今からお前を国家反逆罪として地下牢に連行する事にした!」
無茶苦茶だよコレ。なんで反逆罪なんすかね、というか一方的に呼び出しといてコレは駄目でしょうよ。
「え、ちょっと!おい!クソジジイ!マジで何なんだよ!!民主主義じゃ無いんかこれ。こんなん独裁じゃねぇか!!」
俺がそう訴えると、クソジジイことサマオウはニンマリとムカつく笑みを浮かべてから、俺に指を差して言い放った。
「覚えておけ若造。民主主義も所詮は数が正義ぞ。この国の王は色々と強い。つまり我こそがジャスティス!」
おいおい、民主主義の根底壊れちまったぞ。どうなってんだこの国と王は。それに隣の王妃もよく見たら玉座に座ったまま、すやすや寝てるよ。本当よくこの状況で寝れるな。すげぇよ。
「連れて行け!」
その声と共に周りから集まってきた鎧の兵士たち。そいつらは束になって俺の体を拘束してきた。必死に体を動かそうと試みるが、全く動く気配が無い。
「おい!離せ!離せ!!!うわぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああ」
叫びながら、ひたすらにら体をバタバタとさせるが、本当に動かない。むしろ動かす度に体の拘束が強まっていく。
というか拘束が余りにも強固で、抵抗に疲れたとの、貧血からか意識が朦朧としてきた。
「次の勇者召喚に失敗は許されないぞ。良いな?」
「はっ。次こそは必ず成功させて見せます」
サマオウとその部下らしき人物の声を最後に、俺の意識は完全に途絶えた。
ノリで書きました。最初から急展開のオンパレードです。作者は後先あんまり考えないで書いてしまいました。どうか今回の件を許してやって下さい。
さて、話は変わりますが次回のガンナーズ・ハイは…[王城からの脱獄]です。拙い作品ではありますが、気が向いたら見て下さいネ。