名探偵?いいえ迷探偵でしょう。
『なろラジ』投稿用に書いた短編です。
ほぼ、ノンフィクション。
誰にも読まれないだろうなぁ〜と思いつつ、半年経った今、後書きに後日談を載せました。
お読みくださる方がいましたら、ありがとうございます!
――最近、妻の様子がおかしい。
コソコソとスマホをやたらと見ている。
年末になって、コロナ禍で仕事の疲れも溜まっていた。
いつもだったら、忘年会や飲み会でストレスも発散できたが、今はそうもいかない。つい、家に仕事のイライラを持ち込んでしまった。
――多分、俺が悪い。
話しかけられても、返事をするのが面倒だった。
だから、今朝は妻の声が聞こえていたのに玄関の扉を閉めた。
けれど、俺は掃除は徹底してやるし、ゴミ出しも分別からちゃんとやる。食事に対して文句も言わないし、浮気だってしていない。
強いて言うなら、娘の生活態度が悪いから妻から注意するように言ったくらいだ。
いや、待てよ。
もしかしたら、その時に妻を「お前」と呼んでしまったからだろうか?
それとも、休日の度に一人で釣りに行っているからか?
妻は、滅多にイライラしないし怒らない。
――まさか、浮気かっ!?
ハッと、顔を上げて正面のソファに座る妻を見た。
また、スマホを見ながら口角を上げている。
すると、俺の視線に気付いたのか、スマホを消して立ち上がった。
「先にお風呂入っちゃうね」
「ああ、どうぞ」
さっき、聞こえたメロディは風呂が沸いた音だった。
カタッと、カウンターに何気なく置かれたスマホ。あれを見れば、謎はきっと解けるだろう。パスワードも、知っている。俺と、妻の誕生日だ。
例え、メールやラインを削除していても、予測変換で何を打ったか大体分かる。
証拠は見つかるだろうか?
いや、見つけてしまったら俺はどうするんだ?
俺たち夫婦はGPSも付けているから、怪しい場所など行く筈もない。
どうしたものか……。
名探偵になったつもりで、色々な仮説をたてる。
そして、スマホを見詰めたまま時間だけが過ぎて行く。
◇
「……てな事、考えているんだろうなぁ」
湯船に浸かりながら、グーっと伸びをした。
年末にイライラする夫は、毎年の事。私だってストレスは溜まるのだ。
「お先でした」
「ああ。じゃあ、俺も入ってくる」
慌てて、スマホから離れた夫は風呂場へ向かった。
「さて、続きをしとこう」
ふふっ。私のスマホは、開かれてなかった様だ。
顔認証で開いた画面には、いつもの文字が。
「はい、投稿!っと」
私の最近のストレス発散は、『なろう』にポチポチ小説を投稿する事だ。
「素直に聞いてくれたら教えてあげるのに」
そして、明日もまたヒント画面のまま、カウンターにスマホを置く。
「頑張ってね、迷探偵さん」
〜後日談〜
最近暑くなってきたので、湯船に浸かるよりシャワーで済ませてしまう日が増えてきた。自然とバスルームに居る時間は短くなる。
ーーあれ?
今日は、カウンターではなくソファにスマホを置きっぱなしだった事に気付く。仕事のやり取りをしたまま放置してしまったのだ。
髪をタオルで拭きつつ、スマホを開こうとしたが『この○Phoneは使用できません』の表示。
なぜか5分間使えなくなっていた。
「スマホが変になったみたい」
夫は何事かと不思議そうな顔をした。
が!
帰宅したばかりの今時の娘に表示内容を伝えると、あっさり……
「ああ、パパがパスコード入力を間違えまくっただけでしょ?」
「いじってないし!」と夫。
「そうだよ、パスコード知ってるしね」と私。
「は? パスコードなんて知らないからっ!」とプリプリしながら夫は階段を駆け上がる。
おう……そう来たか。
いやいや、ちゃんと伝えてありますよ。寧ろ、どうやったらそんな何度も間違えるのだろうか?
分かりやすい小学生並の言い訳に、妻と娘が爆笑した事は言うまでも無いでしょう。