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神獣キメラの育成日記 ~転生時のお願いを、神様が誤解しているようです~  作者: ARATA


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第35話 真実と嘘

 学院長は穏やかに話しているけど、嘘を付くと見透かされそうな怖さがある。コロのことは言わざる得ない。


 問題はガラスの板のことや、転生のことだ。



 「ルウト君、以前コロはガイアの森で拾ったと言ってたけど、本当なのかい? ひょっとして別の場所なんじゃないかな?」



 す、鋭い……トリーヤ様は、嘘だと気づいてたのか。



 「実は……僕の前に卵の状態で現れたんです」


 「卵? 獣が卵から生まれたのか?」



 学院長は眉をひそめる。だけど、これは本当の話だ。



 「それで、コロは何故(なぜ)魔獣を弱体化させる“聖なる光”を使えるんだい? あれは一部の聖獣や、熟練した“法術士”にしか使えないはずだ」


 「僕もよく分かりません。トリーヤ様がコロを連れ帰ってくれた日から、急に使えるようになったみたいなんだす」


 「以前は使えなかったのかい?」


 「はい」



 「う~ん」と言ってトリーヤ様と学院長は考え込んでしまった。



 「コロは“光”以外にも、能力を使えると聞いたんだけど……」


 「コロは他の動物の能力を使えるようになることがあります。どういう理屈かは分かりませんが……」



 食べて能力を得ると言うと、狂暴に聞こえるのでやめておこう。



 「武闘祭では、その能力で優勝した訳じゃな」


 「はい、だから僕の力では全然ありません。……やっぱり優勝は返上した方がいいんじゃないでしょうか?」



 学院長は笑いながら首を振る。



 「いや、従魔がどれほど強かろうと、それを操るのは人じゃ。お主とコロは見事な連携で勝ったのじゃ、問題なく優勝じゃよ」



 「フォフォフォ」と愉快そうに僕の言葉を否定した。



 「あの……」


 「何じゃ?」


 「コロは変わった動物ですけど、危険でも狂暴でもないんです。また連れていかれたりしませんよね?」



 僕は一番不安に思っていたことを、学院長やトリーヤ様に聞いてみる。



 「大丈夫、コロが危険じゃないことは分かってるよ。むしろ私たちはあの“光”に助けられたんだからね」


 「そうじゃ、心配いらん」



 二人とも優しく答えてくれた。



 「コロが暴力を振るってる所なんて、私を殴ってる時以外は見たことがないしね。ハハハ」


 「……アハハ」



 血の気が引いていく。



 「ふむ、ルウトよ。お主には話しておく必要があるのう。このトリーヤが何故この街に来たのかを」



 学院長はトリーヤ様を見て、一つ(うなず)く。トリーヤ様は僕に優しい笑顔を向け、まるで先生が生徒に教えるように語り始めた。



 「この世界には魔獣と聖獣がいる。そのことは知ってるね?」


 「はい、授業で習いました」


 「その中でも特に重要なのは、世界に七体しかいないと言われる“大聖獣”だ」


 「大聖獣……」


 「この七大聖獣が世界の災害や魔獣を抑えこみ、人間が生きていくための自然環境を保っている。我々にとって必要不可欠な存在なんだ」



 そんな聖獣がいるのか……でも、そんな話は学院の授業でも聞いたことがない。あえて教えないようにしてるんだろうか?



 「だが、保たれていた世界の均衡が最近崩れ始めている」


 「崩れる……どういう事ですか?」


 「最近、ガリアの森や周囲で変化は起きてなかったかい?」


 「それは……」



 確かに、おかしなことは多かった。居るはずの無い動物がいたり、別の街では災害が多くなってると聞いたこともある。



 「私たち聖十字教会は各地で情報を集め、世界がおかしくなった原因を調べているんだ。これは国王や教皇さまの命でもある」



 トリーヤ様はそのためにこの街に来たのか……でも世界の均衡が崩れる理由って一体……。



 「原因は分かったのでしょうか? トリーヤ様」


 「うん、おおよそは。世界の均衡を壊したのは、我々人間だよ」


 「人間が? どういうことですか?」


 「私たち人間がより豊かな暮らしがしたいと、山を開き、川をせき止め、大量の資源を掘り起こした。聖獣の力になるはずの自然を我々自身が壊していたんだ」


 「そんな……」


 「力を失いつつある大聖獣が災害や魔獣を抑えきれなくなり、世界各地で天災や魔獣の被害が(あふ)れるようになった」



 トリーヤ様は一つ溜息をつく。そして少し険しい顔になって話を続けた。



 「より問題なのは、大聖獣が抑えこんでいた魔獣は、普通の魔獣ではないってことなんだ」


 「普通じゃないって言うのは……」


 「七体の大聖獣がいるように、世界には七体の強力な魔獣がいる。大聖獣は、その七体の魔獣を抑えるため神がこの地に送った使者だと教会では言われている」


 「その話は初めて聞きました。でも、どうして僕にそんな話を?」


 「フォフォフォ、それはお主とコロに関係があるからじゃ」


 「僕とコロに!?」



 突然の学院長の言葉に驚く。今まで聞いていたのは、まるで神話のように現実味がない話だったからだ。



 「ルウト君、君の家の近くにあるガリアの森にも大聖獣はいたんだ。その名はアグリロートス、我々は“深緑の隠者”とも呼んでいた」


 「ア、アグリロートス……」



 コロの能力の詳細にその名前があった……どういうことだろう? まさかコロが大聖獣を食べちゃったんじゃ……。



 「聞いた事はあるかな?」


 「い、いえ無いです!」


 「そうか……大聖獣がいるといることは、抑えこんでいた伝説の魔獣もいると言うこと。ガイアの森の奥、深淵の谷にいるのは邪悪な黒竜だと言われている」


 「黒竜……」


 「我々は明日、この黒竜を討伐しに行く」


 「え!? 明日ですか?」


 「そう、そして君とコロにも力を貸してほしいんだ」


 「えええ!?」

 

 「コロが使った光は、間違いなくアグリロートスの“聖なる光”だ。あの力が無ければ黒竜を倒すことは出来ない」


 「で、でも」


 「コロがゴドリックに捕らえられていた時、アグリロートスもまた屋敷に囚われていたことが分かっている。私たちはコロがアグリロートスの能力を受け継いだんじゃないかと考えてるんだ」


 「コロが? でもコロは長い時間能力は使えませんし、それも一日に一度だけです。役に立つかどうか……」


 「コロはどれくらいの時間、能力が使えるんだい?」


 「……長くて三十分、強力な力だと数分しか持たないかもしれません」


 「一日に数分か……」



 トリーヤ様と学院長が顔を見合わせ、何かを確認するように学院長が(うなず)いた。



 「その能力はルウト君、君の意思で使うことは出来るのかい?」


 「多分、大丈夫だと思いますけど……」


 「だとすれば、やはり君の力を借りるしかない。戦うのはあくまでも騎士団だ。君に危険が及ばないように全力を尽くすから、この通りだ」



 そう言ってトリーヤ様は頭を下げた。そこまでされて断れるはずがない。ただ、どうしても分からないことがあった。



 「分かりました。もちろん協力いたします……だけど、何故(なぜ)明日なんですか? そんなに急に討伐する理由が分かりません」


 「闇の黒竜が深淵の谷から出てきて、街の近くまで来ていたんだ。聖なる光を浴びて、谷に戻っていったが、まだ森の中にいることが偵察隊によって確認されている。もし、奴が深淵の谷まで行けば我々は手出しできない」


 「どうしてですか?」


 「深淵の谷にいるのは黒竜だけではない、強力な魔獣がウヨウヨいるんだ。しかもアグリロートスがいなければ魔獣はどんどん力を付けていき、やがて集団となってバリスクの街に襲い掛かるだろう。叩くとしたら今しかない」



 僕は改めて、とんでもない事に巻き込まれていると実感した。


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