第4話
「いや、梨里子と友達になったから」
「友達の限度を超えている! お昼休みになっても姫が帰って来ないから、心配してきてみたけど、来てよかった」
「で、斎藤の体調はどうなの?」
「あ、うん。もう大丈夫みたい」
「じゃ、お昼食べに行きましょう? 斎藤さんはお弁当?」
「うん。でも、勝手に保健室から帰って良いのかな?」
「大丈夫。来たときも誰も居なかったから」
それってどうなの? 本当に危険な病気で倒れていたら…死んでたかも!?
◆◇◇◇◇
屋上でお弁当を食べられる日が来るなんて!! 記念すべき日だ。でも現実は、風が強くて食べ難いだけだった。
伊藤さんはぺたりと体を密着させ、藤宮さんは離れろと怒っている。
「楽しい、夢見たい」とつい余計なことを言ってしまった。
「ねぇ、何で梨里子はボッチだったの?」
うわぁ…。本当に伊藤さんはオブラートに包まない。メンタルがガリガリ削られていく。
「言い方。斎藤さんにだって、事情があるのよ」
「わ、私は…。何で皆に嫌われているか、わからないんです。こんな事を言ってしまう時点で駄目なのかも知れませんが、どうしたらいいか…。と、友達は沢山欲しいのに…」
「ねぇ、ねぇ、もしかして、私が人生初の友達第一号?」
「う、うん…」
「待ちなさい姫。私が先に話しかけたのよ? 姫が二号で、私が一号よ」
「だって、今、うんって言ったじゃん」
◇◆◇◇◇
夕食のとき、いつもよりも手の込んだ料理とバースデーケーキを見て、自分の誕生日だと気が付く。
心の拠り所だった家族も血の繋がらない歪で不完全なものだった。絶望を感じた昨日からは想像も出来なかったが、今日…16年目にして初めて友達が出来た。しかも二人も同時に。
高校生になると、家族へに依存よりも友人のほうが、ウェイトが大きいのかも知れない。
友達が出来るだけで、ここまで世界が違って見えるなんて…昨日までは考えもしなかった。
友達のおかげで、ささやかな家族だけの誕生日パーティーを過ごせた。
部屋に戻ると、机の上に昨日捨てたはずの手紙が綺麗に置かれていた。