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第12話

 一斉にクラス中の視線が梨里子に集まり、「む、虫がいたので…。すいません…」と謝罪する。


 依然として眼前には、竹野内くんの全裸の姿が浮かんでいた。


(やっぱり…男の子の性感帯って…アソコなんだね)


 竹野内くんの大事な部分が青白く強調されていた。梨里子は指でなぞろうとして、ハッとなり指を止めた。


 梨里子も15歳だ。サキュバスの力で性感帯を刺激されたら、男の子がどんな結末になるかなんて、性教育で習っていた。


(危ない!!)


 親切な竹野内くんに恥をかかせるところだと気が付き、心臓がバクバクする梨里子。


(しかし…昔、お風呂の中で見た弟の春彦のモノとは全然違う。可愛くない…)


 でも本当に笑ってしまう能力で良かった。死神の末裔とか言われてたらと思うとゾッとする梨里子。


(あっ。サキュバスも悪魔もいるんだよね? ということは…やっぱり死神もいるのかな?)


(駄目だ。駄目。授業に集中しないと!!)


 ◆◇◇◇◇


 その後は何事もなく放課後になる。梨里子は、また1時間もかけて自宅まで帰るのだ。正確には乗車している時間が1時間であり、徒歩の時間を含めると1時間45分である。


 梨里子は乗り換えのときに見ていた街の様子に惹かれ改札を出る。


(そう言えば。今朝、竹野内くんと出会ったのも、この駅だ。ということは、竹野内くんの家があるのかな?)


 自分の知らない人が知らない街で育つ。何か不思議に感じる梨里子。


「リリス!?」


 その名を呼ばれて振り返ると、二度と会いたくなかった中学校の同級生がいた。


「冴島さん…」


 陸上部の部長兼生徒会長の冴島 美亜だ。


 今の通っている項王を基準にすれば、容姿C、知性B、運動A、カリスマCと、上位ランカーに届かないレベルだった。同じ学校ならばカリスマはAかも知れないが、関係ない今カリスマCが妥当だろう。


「いつか会いたいと思っていたの…」


 ◇◆◇◇◇


 冴島さんは、私が孤立する原因が、いじめなのか? 別物なのか? それさえも把握できずに助けられなかったことを、ずっと悔やんでいたらしい。


(そんなこと今更言われても。あなたの自己満足に付き合うのはゴメンだ)


 踵を返し駅に向かう。


 折角、新しい街を探検しようとしたのに、出鼻を挫かれた気分だと憤る梨里子。

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