第1話
花も恥じらう乙女の斎藤 梨里子は、高校に進学したばかりの15歳。あだ名は梨里子を文字ってリリス。幼さの残る顔なのだが目つきが悪く、眉尻が細く上がった眉毛のため、意外と男女問わず怖がられるのだ。しかもおっぱいが異常に発達していて男からすると目のやり場に困る迷惑な女なのである。内面の性格も陰口を叩かれやすい容姿から社交的でなく、自然と一人ぼっちになる傾向が強い。
そんな彼女に追い打ちをかける大事件が、いつもと変わらぬ一家団欒の夕食で発生する。
「梨里子。お前は反抗期もなく優しく冷静な子だ。そして高校生になった。初めに言っておく。父さんも母さんも弟の春彦も…血は繋がっていないが、梨里子の事を本当の家族…いやそれ以上だと思っている」
「何よ、改まって。えっ? 血が繋がってない!?」
動揺して茶碗を落とす。その茶碗が割れる音が、まさしく家族が崩壊する音となった。
「梨里子の本当の両親は、梨里子が2歳のときに事故で亡くなった。それで分家の私達が代わりに…今まで…いやこれからも家族になった」
「と、父さん? お姉ちゃんは…本当のお姉ちゃんじゃないの?」
「春彦。血が繋がっていないからと言って、何か変わるのか? 父さんは変わらないと信じている」
「何で今さら…。知らなくても幸せだったよね?」
「あぁ。だが…。この手紙が届いだ。本家の跡取りである斎藤 梨里子宛だ。しかし、この時代…本家も分家も…父さんは、どうでも良いと思っていた。封は切っていない。梨里子が読んで必用ならば父さんも母さんも手助けする。しかし、梨里子しか知ってはいけない事ならば…」
「うん。一度、読んでみる」
「そうしなさい」
動揺しているためか、悲しいとか悔しいとか辛いとか…そういう感情は湧いてこない。それ以上に頭の中が真っ白なのだ。
「ねぇ。お父さん? これからも…お父さんでいてくれる?」
「当たり前だ」
「ありがとう…」
それから…いつものように、後片付けをお母さんと一緒にして、TVを見ながら春彦とじゃれ合って、野球の中継に勝手に変えるお父さんに文句を言って、お風呂に入って…自分の部屋に戻った。そしてパジャマ姿でベッドにダイブする。
そこで自分がいつもと変わらぬ日常を演じている一人の役者だと気が付いた。
布団の中に入り声を殺して泣く。
騙されていたとかじゃない。裏切られてとかじゃない。
ただ…心に穴が開いてしまった。
そして、深夜? に目が覚める。幼児のように泣き疲れて寝てしまったのか? トイレに行きたくなり部屋の灯りをつけると、机の上のお父さんから渡された手紙が目に入った。
トイレに行くのも忘れ、封を切り…手紙を読み始めた。