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畏 140文字の怪談

作者: かしこ

1

ハムスター

「うちのハムスター長生きなんだよね〜もう10年ほど生きてる」流石に嘘だろうと思い友人の家に観にいくことに。檻から出している時に行方不明になって、まあいつか見つかるだろうと思ってベットに腰掛けると尻に変な感触。潰して殺してしまった。ただそのハムスターから出てる血は紫だった。



2

廃校舎

廃校になった小学校に忍び込む。幽霊が出るという噂がある。当時担任だったときに行方不明になった子かいた。彼女かも知れないと思って。出ると言われているのは3階奥の廊下。床下を剥がすと白骨が出てきた、助けを求めていたのかも知れないな。…今度は誰にも見つからない所に隠さないと…



3

タイムカプセル

タイムカプセルを埋めることになった。校庭を掘ってると銀色のボール。僕らより先に埋めた人間がいたらしい。不良が中を見ようとこじ開けたが中には粉みたいなのが入ってるだけ。その翌日、その不良が急死した。噂だが僕の学校はもと日本軍の秘密の毒ガス工場で敗戦時に色々埋めたらしい。



4

オルゴール

骨董屋で魔法のオルゴールを買った。その音色を聴くとどんな人間でもグッスリ眠れるらしい。早速ネジを回すが音が鳴らない、騙されたか。まあいいと思って飲み会に。その最中に嫁から電話「あのオルゴール私へのプレゼント?とても綺麗な音ね」その晩、嫁は寝たままもう目を覚まさなかった。



5

先客

もう死のうと思って樹海にいった。分けいって首を吊ろうとして木を探すと先客が。死後数ヶ月経っているだろうか。足元に彼の持ち物が転がっている。免許証身分証。自分の自殺の理由は借金だ、これで別人として生きよう。先客に手を合わせ戻ろうとして気づいた。…帰り道がわからない…。



6

秘密基地

小学生の頃ホームレスおじさんと友達になった。孤独だった僕はビニールシートの秘密基地によく遊びにいった。ある日テントに火をつけられおじさんは焼け死んでしまった。友達がいなくなったと泣く僕に母さんが「ホームレスと仲良くしないで、貴方に相応しい友達はいつもママが決めてあげる」



7

エリカさん

『エリカさん』という怪談がある。トイレで『エリカさん友達になってください』というとエリカさんが現れるというものだ。怖いけどひとりでやってみた、でも何も起こらない。トイレから出る。個室の前に影。「やっぱりエリカさんなんてこなかったよ」そう怪異と同じ名前の親友に話しかけた。



8

マモリバコ(旅館)

東北の古い民家のような旅館に泊まった。床の間に箱が置いてある。聞くとこれはこの家の守り神だという。夜中気になってこっそりと箱を開けてみると中には何もなかった。ふと思いつきおにぎりをひとつ入れてみる。よく朝覗くと、空っぽになっていた。それから何故か俺は米が食えなくなった。



9

マンホール

公園で夜中に包丁を振り回す男がでるという。怖いもの知らずの僕らは夜半こっそり公園にいった。男はいて刃物を矢鱈滅多振り回していた。そして先になにか黒いモヤの様なものがありそれは公園のマンホールから溢れ出てくるようだった。男は数日後捕まったが、その後近所で子供が5人死んだ。



10

焼却炉

私の学校には古い焼却炉がある。何故撤去しないのか聞くと歯切れの悪い答え。気になって中を覗くと中一面お札が。その上から血のような赤で男の名前がいくつも書いてあった。珍しい名前なので検索したらすぐにでてきた。旅行の写真。その隣にいる妻らしき女性は身体中古い火傷の跡があった。



11

小指のないおじさん

小さい頃近所に小指のないおじさんがいた。今思うとヤクザだったのだろうけれども、おじさんが小指がなくなった理由として話してた話を今でも覚えてる「どうしても縁を切りたい女がいてね、そいつを殺したんだから死んでも付き纏ってくるんだ。だから小指をやったのさ」ヤクザだったと思う。



12

貯水池

小学校の近くに貯水池がある。いままで何人も子供が溺れていて、危ないから立入禁止になっているけれども緑で濁ったそんな場所に自分から入ってく子供なんていない。夏のある日、クラスメイトが溺れた。命は助かったけれどもその時言ったのが「池の上に白い女が立っていて呼ばれた気がした」



13

白い手

友人の部屋に遊びにいく。ふと押し入れを見ると黒いゴミ袋があり、其処から白い手が伸びていた。ギョッとして問い質すと「マネキンだよ」近づき触って見る。ツルツルして硬くて普通にマネキンの手だった。胸を撫で下ろす。でもなんでこんな所に人形の手が?「何度捨てても戻ってくるんだ」



14

ハサミ

ゆきこさんちに遊びに行くと壁からカッターナイフがはえていた。どしたのこれと聞くと「お母さんと喧嘩した時に投げられて刺さってそれから抜けなくなった」壮絶「お互い様だよ」と彼女がいう。しばらくしてお母さんがお茶とお菓子を持ってきた。お母さんの頭からはハサミがはえていた。



15

体育館

中学校の体育館がカビ臭くて嫌いだった。別に日当たりが悪いわけではないのに堪らなくカビ臭かった。やがて廃校になり学校跡地は住宅地になった。その住宅地に友達の家ができたので遊びに行った。南向きの日当たりのいい家だったが耐えられないほどかび臭い。丁度体育館のあった場所だった。



16

開かずの間

友人の2DKのマンションには開かずの間がある「いらないものを放り込んでたらゴミ溜めになっちって」ズボラな。掃除を手伝う。ゴミの山を分けいり仕分けて袋に入れる。悪臭と虫がひどい。半分ほど片付けると、…死体が3つ出てきた「お父さんとお母さんとお爺ちゃん。もう要らないんだそれ」



17

小説家(図書館刃物)

近所の図書館で事件が。刃物を持った男が「なんで俺の本を置かない!」と暴れたらしい。売れない小説家の立花霧子を名乗っていて評価されないことを恨んでいたらしいが、おかしい話だ。なぜなら立花霧子は私だからだ。文芸誌の写真には女性の顔。そう。私は今からこの偽物の女を殺しに行く。



18

エレベーター

エレベーターの床がベシャリと濡れてる。アンモニアの匂い。このマンションはペット可なので不心得な飼い主がここでおしっこをさせていくのだ。お前はこんなことするなよ、と首輪を引いていうと「わかりましたご主人様」と答える。ペットが人間の言葉を喋るな。まだまだ躾が足りないようだ。



19

呪いの刀

友人がブームに乗って刀剣を買った。値段を聞くと異様に安い「呪いの刀らしくて親類縁者が次々急死するんだって」そんな危ないの「平気、私母子家庭だったしお母さんもこの間死んじゃったから」「でもお父さんがもしこれで死ぬんだったら嫌だな」「私の目の前で苦しんで死んで欲しい」



20

くだん

最近朝になると枕にびっしりと髪の毛がついている。もう歳かと悲しくなる。ただ自分の髪だと思うと少し長い感じがする。ある日、何故か夜中に目が覚めると枕元に人影が。牛の体の髪の長い女性が頭を掻き毟っている。怪異。この枕の毛はこの女のかもと思ったら「お前の毛根はもうすぐ死ぬ」



21

ネズミ

引っ越した先のアパートはボロボロだった。押入れの中がドタバタとうるさい。どうにもネズミがでているようなので、ホウ酸団子を押入れの隅に置いておく。ネズミの音はしなくなったが、その数日後警察がアパートに来た。隣の部屋に住んでいた老人が食中毒で死んだらしい。



22

白髪

鏡を確認すると新しく白髪が増えていた。最近、白髪が増え始め白髪染めを使うようになっていた。今日は白髪染めがないので抜こう、指先でつまんで白髪を抜くとそれは洗面台の上でグニグニと動いてそれから動かなくなった。白髪はあと数十本はあった。それは黒く染められてわからない。



23

踏切

私の家のそばに首切り踏切と呼ばれている踏切があった。なんでも数年前自殺があり、その時首が千切れて飛んだ人がいたからだという。その後、そこで「首がつながらない首がつながらない」と言いながらさまよう幽霊がでるらしい。ちなみにその人の自殺の原因は会社の解雇だった。



24

筆箱

鉛筆を忘れてしまったので、隣の席の宮原君に借りた。宮原君の鉛筆は噛み跡がたくさんついていて、不潔な感じがして嫌だったが我慢して使った。あまり良い癖ではないので宮原君にやめるように言ったら「僕じゃないよ」…耳をすますと宮原君の筆箱の中からガリガリと不快な音がしていた。



25

ソープの宣伝写真、耳の形で知人かどうか断定できる、と言っていた友人がいた。大学の女子の耳の形を全員覚えていて、正直気持ち悪いが小学校時代からの付き合いだから仕方ない。ある日彼がうちに来た日、彼はいった。「お前の母ちゃん、本当にお前のかあちゃんか?耳の形が前と変わってる」



26

写真

誕生日が母親の命日だからあんまりおめでたい感じがいない、と言っている一人っ子の友人がいた。彼女の出産は難産で、その時に母親は亡くなってしまったのだ。だからお母さんの写真あまり残ってなくて、と言って見せてくれた写真には、子供に寄り添う優しそうな半透明の女性が写っていた。



27

伝説の木

卒業式で失恋した。告白が成功する伝説の木は嘘だったわけだ。3年間ずっと好きだったのにこれでお別れかと思うと彼が言った。「ずっと友達として思ってたから今はわからないけど、もしかしたらこれから好きになれるかも、だって同じ高校だろ?」僕は来年男子校に進学する。



28

休み明け

9月1日は若者の自殺が増えるという。夏休みが終わり、憂鬱な学校が始まるからだ。社会人になって思う、夏休みなんて休みがあるからいけない。会社も同じくらいつらいけど、そもそも休みがないから自殺のトリガーが働かない。うちの会社はGWもお正月も日曜日も出勤。死にたいなんて思わない。



29

そうめん

友達のゆきこさんは家で虐待を受けていて、だから夏休みみたいな長い休みは憂鬱だと言っていた。ご飯がないので昼はうちに来てご飯を食べてもらった。簡単なものだけど「これなんて食べ物?」そうめんだけど、食べたことないの?「うちではそうめんはおじいちゃんの指の先からでてくる」



30

小説家(病院の待合)

病院の待合が暇なので病院のコンビニで文庫本を買う。立花霧子の新刊小説だ。後ろに気配を感じ振り返ると「その本私が書いたんですけど犯人は村上という男凶器は千枚通しで殺し方は目をついてです」それだけいうと男は去っていった。もちろん本には村上という男も千枚通しも出てこなかった。



31

小説家(サイン会)

立花霧子のサイン会に行く。作風が毎回違うのでゴーストの噂がある話をすると「…そうですね。私、物語って自分の頭の中から出てくるというより誰かの頭を覗いているような感じで書いてます」その後、猟奇殺人の犯人がつかまったが手法が立花霧子の新刊に似ているのが一部で話題になった。



32

交換日記

押入れを片付けていると小学生の頃の交換日記が出てきた。懐かしくなり、その名前に書かれてる相手に連絡をすると、そんなことをしていた覚えはないという。そんな筈はない、確かに交換日記をしてたのに、と思ってもう一度日記をよく確認すると、両方とも私の筆跡たった。



33

夢を操る男

夢を見た。夢の中に大きな砂時計が出てきて、そばにいた男が「これはお前の寿命だ」と言った。ほぼ砂が落ち切っている砂時計。それをひっくり返して逃げてくるところで目が覚めた。それから特に事故にあったりすることもない。俺が死ぬときはあの日まで生きた時間の2倍なのだと確信がある。



34

中古で家を買った。少しカビ臭いがいい家だと思っていたら、夜中に寝ている時に子供や赤ん坊の話し声や足音がする。調べると事故物件ではないらしいが、昔、この場所は小学校だったらしい。小学生の過ごした気配のようなものがまだ残っていてそれが現象として現れているのかも、と思った。



35

グランドピアノ

友達の家にはグランドピアノがあった。すごい!と感動していると「蓋をいつも開けっ放しにできる必要があるから」と言った。よくみると家のどの部屋も少しづつドアや窓が開いてる。彼がお菓子を取りに行った時にそっと窓を閉めた。部屋のどこからかガリガリと何かをかじる音が聞こえてきた。



36

流れ星

彼女の車で流れ星を観に行った。冬の真夜中に山の駐車場へ。彼女が流れ星を見ながら「ずっと一緒にいられますように」といのる。でも3ヶ月後彼女は病気で死んでしまった。次の冬が来て、僕は1人で山の駐車場へ行った。流れ星を見ながら願いは叶ったと思って泣いた。僕の角膜は彼女のものだ。



37

観覧車

その観覧車には一緒に乗ると別れるという都市伝説があった「どんなカップルだって最後は別れる。だからそういう都市伝説ができるの」と彼女はいって、一緒に乗ったのだけれど。その都市伝説には続きがあって。赤い女が現れて別れるまで付き纏ってくるというものでその赤い女がいま目の前に。



38

のらねこおばさん

『野良猫がいなくなるのはのらねこおばさんが食べてしまうから』小学生の間で流行っている噂らしい。実際は私みたいのが保護猫活動をしているからだ。小学生にはそれがのらねこおばさんに見えたのかも。ある日、怪我をした猫を保護した。背中から血を流していてその傷跡は人間の歯形だった。



39

酒と煙草と

死んだ叔父は酒と煙草を手放せない人だった。親戚からは疎まれて最期は怪物の幻覚に怯えて死んだ。親戚は酒と煙草のせいだといっていたけれども私は今、違うと知っている。髪の長い裸の女、手足が四本ずつ。今も私のそばにいる。酒と煙草には近寄れないらしく、私も酒と煙草が手放せない。



40

白い女(歩道橋)

白いワンピースの女の噂。こんな雨の強い日に歩道橋の上に現れるそうだ。遭遇してしまった。下から見上げた時には誰もいなかったのに階段を上り切ったら目の前にいた。隣をすれ違いたくないから気付かれないようにそっと怪談を降りた。下から見上げるとやはり歩道橋には誰もいなかった。



41

冬の山

それは友人と冬の山へ登った時の話だ。空は真っ青に澄んで晴れていた。数十メートル先に裸の女が立っていた。女の周りに雪を踏み抜いた後はなく真新しい雪原の真ん中に立っていた。こちらと目が合うとケーッと鳶のような声を出して走り去っていった。山を降りて数日後、友人は高熱で死んだ。



42

レモン

本屋でバイトをしていた時の話。梶井基次郎を気取ってレモンを置いていく迷惑な客がいた。しかも精度が低く、レモンさえ置ければどの棚でもいいみたい。対策としてあらかじめ全ての棚にレモンの模型を飾ることにした。これで解決と店長と話していたが、今度は蜜柑を置いていくようになった。



43

河原の花火

夏の終わりに、余った花火を使い切ろうと不良仲間と河原に集まった。遊んでいるうちにテンションが上がり、ホームレスのテントに花火を投げ込んでこようぜ、という話になった。ジャンケンで負けた俺がテントに近づくとガソリンぽい匂い。花火の火花がかかると一気にテントが火に包まれた。



44

ラムネの瓶に入っているのはA玉で2級品がB玉というのはガセだというのを教えてくれたのは父だった。何事も自分で調べて確認する癖は父から学んだものだ。そんな父が最近おかしい。庭の土を延々と掘り始めた、深く深く。母が止めても聞かず「なにかあるはずだなにかあるはずだ」と繰り返す。



45

柱時計

祖母の家の柱時計は止まっている。お爺さんが亡くなった時に止まってしまったからそのままにしてある、といった。愛だなあ、と思った。やがて祖母も死んだあと、時計を確認した。電池を変えると時計は動き出したが、代わりに家のあちこちから老いた男の呻き声や物音がするようになった。



46

ラムネの瓶

夜の学校に忍び込む。肝試し5人で。4階の隅の教室までいって証拠にラムネの瓶にを置いてくる。5人目が行っている最中彼からメールが。「お前ら本当に行ったのかラムネなんてどこにもねーぞ」変だなと思っているとドサッと音。4階から友人が落ちた音だった。彼のラムネは屋上から見つかった。



47

水槽

小学校のプール、池、水槽、バケツの水。環境が悪いのか私の通う小学校の水場は何故かあっという間に藻が生茂る。教室の後ろにあったザリガニの水槽は藻が濃く生茂り中になにがいるのかわからない状態だった。ある日放課後遅く忘れ物をとりにきたら、細い女の腕がその水槽から伸びていた。



48

白い女(校庭)

小学校の校庭は雨の日大きな水溜りになる。埋め立て前、ここは近くの貯水池と合わせて大きな池だったらしく、水溜りになるのはその名残らしい。ある雨の日、校庭に白い女が立っていた。様子を見に行った学年主任が途中で倒れた。女はいつの間にか消えていた。主任の死因は何故か溺死だった。



49

マモリバコ(引き出し)

東北出身の彼の家には守り神がいて、それは箱だという。「正確には箱じゃなくて箱に入っていた何かだけど」過去形が気になり聞く「昔は箱にいたけど今は箱が壊れてしまって」それじゃ守り神は今どこに?と訊こうとした時、彼の机の引き出しがガリガリとなった。中を開けると何もいなかった。



50

生首

生首が川を流れてくる。近所に美容師見習いの子がいるのか、始末に困った練習用ウイッグのマネキンを川に投げ捨てているらしい。川の流れが淀んでいる場所がありそこに5、6個の生首がグルグルと滞留している。見栄えが良くないので拾い上げるとそのうちの一つから小さい手足が生えていた。



51

潔癖症

潔癖症の彼女からはいつも消毒薬の匂いがした。アルコールをいつも持ち歩いて事あるごとに消毒していた。そんな彼女も彼氏ができて潔癖症が治っていった。「あんまり消毒しすぎると虫が死んでしまうから」彼がカブトムシてもかってるのと聞くと違うという。「虫は彼の指の間から出てくるの」



52

路地裏に猫がいた。チチチと呼ぶとゆっくりと近づいてくる。たまたま持っていたカニカマをあげる。それに気づいた他の猫がどこにいたのかワラワラと寄ってくる。ニャーニャーとなく猫達の声に混じって「一郎くんはお元気ですか」という太い男の声が聞こえた。どの猫が話したのかわからない。



53

洗濯物

洗濯の終わった洗濯物の中からもろもろになった紙屑が出てきた。いつも確認してるのに何故か紛れ込んでいる。なんの紙がふと気になってそっとそっと開いていくと「世世まゆこさん了なとみさん了丁こども」の文字が鉛筆で書いてあった。家族に聞いてもその紙も名前にも心当たりがないという。



54

美容室のリスト

美容室で働いている。カットよりもお客さんの名前と顔、前に話した話題を覚えておく事の方が大変だ。先輩はメモを取ってリストにしているといっていた。なる程。参考にしようとこっそり盗み見た。詳細なメモだったが最近見ないお客さんのところに大きく《使用済み》というコメントがあった。



55

通学電車

朝、友達が制服ではなくジャージでやってきた。電車で何かを引っ掛けられてトイレで着替えてきたそう。「やだな精液か何かかな、と思ったら違った」なんだろうと思って制服を見せて貰ったら潰れた紫色のヤマビルだった。同じ電車にはサラリーマンばかりで登山客はひとりもいなかったという。



56

2mの女

午前2時。1人残って残業をしていると窓の外に気配が。振り向くと赤い口を開き目を見開いた女が覗き込んでいた。職場は1階だったがあまりにも背が高い。2メートル以上ある。恐る恐る近づいて確認して幽霊でもお化けでもないことがわかった。上の階の窓の桟で首吊りをして垂れ下がっていた。



57

酒と煙草と

その職場は平成だというのに全室喫煙可だった。専務に直訴に行くと「他に方法がない」といって取り付く島がない。その専務が退職したので強引に禁煙を敢行した。タバコの煙がきえたが、代わりにお化けを見たという職員が急増し、禁煙を知った専務が戻ってきて再び喫煙可能になってしまった。



58

骨壺

孤独死した老人の部屋を片付けていると骨壺が出てきた。恐らく彼の妻だろう。2人で暮らしていて片方が亡くなり、葬儀は済ませたが、気落ちして埋葬が出来なくなる。よくある事だ。だが後で調べたら彼の妻及び親類縁者は全て墓に埋葬されているという。骨壺の人の正体は結局わからなかった。



59

母子

なとみちゃんには自傷癖があった。それを責めると「なんで何一つ私の自由にならないのに自分の体や命さえ自由にする権利はないのか!」といって怒って、そのまま号泣した。母親と色々あるらしい。お節介かと思ったが母親に電話をした。翌日からなとみちゃんは明るく朗らかな子になった。



60

のらねこおばさん

娘が長い間可愛がっていた猫が亡くなった。お葬式の真似事をして庭に埋めた。翌日見ると庭が掘り返され死体がなくなっていた。娘は泣く。何が掘り返したのか野犬でもいるのかと思って辺りを調べると人の靴の跡が。娘の泣き声を聞いて隣の奥さんが顔をだす。隣の奥さんの靴は土で汚れていた。



61

砂糖菓子

砂糖菓子みたいな女の子だった。隣の家に引っ越してきた家の女の子。学校にはいってないみたいで家にいて、たまにゴミ捨てで顔を合わせた。突然その家は引っ越していったのだけれどもそのトラックに女の子はいなかった。無人の家の中を調べると等身大の女の子の人形がひとり残されていた。



62

赤い自転車

赤い子供用自転車がずっと空き地に放置してある。見ると名前も住所も書いてあるので届けようと思った。しかし調べると微妙に実在しない住所だった。その近くを探してみると同じ名前の女の子のいる家を見つけたが、その女の子は全く同じ形、同じ色、同じシールを貼った自転車に乗っていた。



63

飛行機雲

僕の町には飛行機雲がよく出る。いつも空を見上げると何処かに飛行機雲があるのだけれども、飛行機が飛行機雲を引くのを見たことがない。ある時、ジャングルジムのてっぺんに立って雲ひとつない空を見上げてる子供を見た。手に持っていたクレヨンを空にサッと引くと空に飛行機雲が現れた。



64

鳥籠

鳥籠の中で飼っているインコが教えていないのに不穏な言葉を喋る「コロサナイデコロサナイデ」もちろん家族の誰も教えた覚えはない。後日近くの家で監禁殺人事件が発覚した。檻の中に閉じ込められ毎日虐待を受けていたが舌を抜かれていたので「殺さないで」と叫ぶことも出来なかったそうだ。



65

シャンデリア

遠峰くんのうちにはシャンデリアがある。ここに引っ越してきた時にもともとあって一回取り外したが結局つけたままにしてるらしい。夜、お泊りで遠峰くんの部屋で寝ていると、ギーコギーコと鉄のブランコのような揺らす音が聞こえた。「シャンデリアがなくなると、アレが家中を歩き回るんだ」



66

地下鉄

地下鉄に乗る。車両には僕1人、珍しいこともある。隣の車両から髪の長い女の人が入ってきた。血塗れ。突然車内の電灯が消え、急ブレーキで電車が止まり、明かりがつくと女はいなくなっていた。人を轢いたらしい。髪の長い女性だったという。なぜ彼女が地下鉄内にいたのかはわからなかった。



67

案山子

田舎へ電車旅行。窓の外には田園風景が広がる。田んぼには最近はなかなか見ない案山子が何本も立っていた。最初は面白かったが、何故か通り過ぎる案山子が身体を曲げてこちらを見送ってるような気がしてきて気味が悪くなった。帰りも同じ路線だったが、案山子なんて一本も立っていなかった。



68

母が血を吐いて倒れた。胃癌だった。母は宗教をしていて、なんでも病気が治る水を飲んでいたが結局聞かなかったわけだ。これを機に宗教を止めるように話すと「水を飲んでいたからこの程度で済んだ。飲んでいなかったらもっと酷くなっていた」と。手術も拒絶しお祈りで治すらしい。



69

アルバム

差出人不明のアルバムが送られてきた。私の覚えのない私の写真が沢山貼ってあった。隠し撮りしたものらしい。凄く気持ち悪い。最後のページに手紙があった《貴之の母です。貴方は息子の恋人として相応しくありません。孝之が撮った写真はお返しします》何処からかガソリンの匂いがしてきた。



70

蜘蛛の巣

天井の隅に蜘蛛の巣が張ってある。家庭訪問できた三橋の家はゴミ屋敷だった。お茶と茶菓子に手をつけるのも躊躇われたので「仕事中ですから」と言って断った。次の日、三橋に「食べなくてよかったよ」と言われた。後日、三橋の父が監禁殺人の容疑で捕まった。部屋の奥には檻があったらしい。



71

白い女(停留所)

夕方、突然の雨、バスの停留所で雨宿りする。先客がいて、白いワンピースの女がびしょ濡れで立っていた。バスが来るが雨宿りが目的なので乗らない。バスはバス停で止まらずにそのまま僕らの前を通り過ぎていった。やがて雨が止むといつの間にか白いワンピースの女はいなくなっていた。



72

白いバス

先輩の運転手から強く言われていたことがある。雨の日、××の停留所で白いワンピースの女を見たら絶対に止まってはいけない。例え他に乗客がいても、降りる客がいるとしても。その日、雨が降っていて、××の停留所に白い女が待っていた。先輩の言うことは気になったが運転手としての義務を(続)



73

白いバス

(続)優先させて止まった。しばらく運転していると足元が冷たい。水が足元から登ってきてバスの中がまるで水槽のようになっていった。僕は窓ガラスを割って逃げ出したところまでは覚えている。目が覚めると病院で、バスは貯水池に飛び込んだらしい。僕だけ助かったが他の乗客はみんな死んだ。



74

喫茶店

駅から少し離れたところに煉瓦造の喫茶店がある。そこにはいつも予約中の席がある。そこはどんなに混んでいても絶対に空席だった。店長の亡くなった親友の席らしい。いつもここにきていたんですか?と、聞くと「生きてるうちは一回も来てくれなかったから。いつかは来てくれるのをまってる」



75

ブラウス

メルカリで素敵なブラウスを見つけた。値段も相当安い。購入して早速着る。しかしそれから怪我をしたりと運が悪い。占い師に聞くとブラウスが原因ということなので残念だけどゴミで捨てた。…はずだったのに何度捨ててもタンスに戻ってくる。とうとう私はそのブラウスをメルカリにだした。



76

砂糖菓子

宅配便として預かった大きなキャリーケースから呻き声が聞こえてきた。送り主にも連絡がつかず所長の判断でケースを開ける。しかし、中から出てきたのは、砂糖菓子のように美しい一体の人形だけだった。送り主は不明で、また送り先の住所も存在しなかった為、その人形は今も宅配倉庫にいる。



77

黒子

娘が家のすぐそばで行方不明になった。さっきまで自転車に乗っていたのが急にいなくなった。散々さがしまわったがどうしても見つからず、しばらくして少し離れた空き地で発見されて、警察に送られて戻ってきた。どう見ても娘だが何か違和感がある。目の下の黒子の位置が左右逆になっていた。



78

マモリバコ(クワレタ

同級生の宮原君は除霊ができる。ある日、近所の女の子の除霊に呼ばれた。昔は少し不思議くらいの子だったのだが最近は「デテクルデテクル」と延々と呟いている。除霊の結果、女の子は普通に話せるようになったが、宮原君は入院してしまった。「クワレタクワレタ」とずっと呟いていると言う。



79

文芸部後輩の立花

文芸部後輩の立花は異世界から来たと言う。昔、一瞬で夜になった日がありその時に。証…「証拠をみせてみろ、ですか?」その後も言葉を先回りされる。「それ以来、人の頭の内側に入ることができるようになったんですよ」…「嘘です。トリックですよ」そういって立花は目の下の黒子を撫でた。



80

墓参り

墓参り、時間が合わず真夜中になった。ゴソゴソと近くから音がする。覗くと墓石を動かして納骨所から骨を取り出して入れ替える男がいた。問い質すと、死んだ母の墓が買えなくて他人の墓に母の供養を託すのだと言う。ふと、自分の家の墓は大丈夫かと思ったが確認する方法は何もないのだった。



81

マモリバコ(マネキン

マネキンの腕に呪われた。何度捨てても戻ってくる。困り果てた俺は人伝てに霊能者を依頼した。高校生くらいのそいつは部屋中の戸締りを確認すると全員外に出して鍵を閉めた。部屋からガリガリと言う音が響く。鍵を開けて入るとマネキンの腕は跡形もなくなっていて、もう戻ってもこなかった。



82

占い師の叔母(地下鉄死

占い師の叔母が、私に早くこの街から離れろという。地面の底から黒くてドロドロとした水が段々上がってきているという。其れは地下水脈のようにこの街の下を覆っている。もう時間がない、という。私はいうまま街を離れた。叔母は、その街の地下鉄のトンネルの中で地下鉄に撥ねられて死んだ。



83

貯水池(埋め立て

貯水池を埋め立てることになった。事故が相次ぎ、バスまで突っ込んだからだ。埋め立てに先立ち池の水を全部抜くことになったが、池の底から朽ちた20cmほどの箱が出てきた。箱の中からガリガリという音がしたが、開けても中には何も入っていなかった。貯水池は埋め立てられた後、公園になる。



84

とある小説と酷似した事件が起きた。犯行の手口や人物が余りにもそっくりで作者は犯人の関係者説まで出た。ただひとつ違うのは、小説では犯人は家の下に深い深い穴を掘り、底から小さな箱を見つけるが、実際の家の下には穴どころか掘った後さえない。警察が床下を掘ったが何も出なかった。



85

飛行機雲2

逆飛行機雲を見た。その日は朝からひどい雨ですごい憂鬱な気分だった。最近梅雨でもないのに雨の日が多い、うんざりする。不意に雨が止み、日の光を感じて空を見ると、雲が真っ二つに裂けてそこから日の光がさしていた。その奇跡みたいな光景をみて、さっきまでの憂鬱な気分が吹き飛んだ。



86

トロッコ問題

道徳の授業でトロッコ問題をやった。みんなは出来るだけ死ぬ人数が少なくなる方法やトロッコを止めるなどの意見が出たが森山さんは違った。そこに線路を引いた人間がいるからそいつを探し出すべきだ、といった。長い髪が揺れる。森山さんの目には僕らには見えない物が見えているようだった。



87

夢を見る

色んな人生の夢を見る。悪霊に取り憑かれた男の夢を見た。私はその男になって、私自身を殺しに行く。数ヶ月後、その男が包丁を持って目の前に現れた。予定通りだった。しかし、私の隣にいた能登ふみかを見た途端、包丁を取り落として正気にもどった。予定と違う。こんなことは初めてだった。



88

デテクル

5歳になる子供がある日突然「デテクルデテクルデテクルデテクルデテクルデテクル!」と叫ぶようになった。病院にいってもよくわからない。困り果てた私は街の占い師に頼むことにした。彼女が子供の頭に手を当てて、何かを呟くと、子供の耳からドロドロと緑色に濁った水が溢れ出てきた。



89

白い手

友達と海にキャンプに行った時の話だ。夜に砂浜を散歩していると、海がボンヤリと光っている。見ると白い手のような物が海一面から伸びている。友達と転がるように逃げて、テントの中でブルブル震えて夜明けを待っていた。朝になり再び海岸に行くと死んだ魚が一面に打ち上げられていた。



90

怪物

「幽霊とかお化けって信じないんですよね」占いに来た彼女はそう言った「絶対出るっていう心霊スポットにいっても何にも起こらないし。私霊感ないのかなあ」そういう彼女の背中には得体の知れない怪物が取り憑いていた。その化け物が周りの霊を食い尽くし、彼女は幽霊を見ることがないのだ。



91

同僚の三橋が「家の中から子供の声がする」という。三橋は息子が中学に上がるので中古の一戸建てを買ったばかりだ。「ずっとデテクルデテクルと言い続けてる」という。録音した証拠がある、といってボイスレコーダーの録音を聞かせてもらったが、三橋のいびきが入っているだけだった。



92

マモリバコ(フィールドワーク

東北のある村にフィールドワーク。一軒一軒、守り神として箱を祀っている。寺の住職に話を聞くと箱には強さ弱さがあり、余りに強いと箱を封じたままでも災いをもたらす為、厳重に寺で祀っているという。一番強い箱もここかと聞くと、一番強い箱は戦前に盗まれて何処なのか分からないという。



93

デテクル(ふみか

ふみかがおかしくなった。昔はジャングルジムの上にたって、クレヨンで「くもをかいてるの」というような子だったのに。近くの貯水池の埋め立て工事が始まった日、突然、「デテクルデテクルデテクルデテクルデテクルデテクル!」叫びだして半狂乱になった。それからずっとそのままだ。



94

こっくりさん

能登さんがいると必ずこっくりさんが失敗する。まず指がどうやっても動かない。ある日、能登さんがいないときにコックリさんをしてたら、帰ってくれなくて、半狂乱になった女の子がそのまま駆け出していったのだけど、玄関で能登さんと鉢合わせた途端、悲鳴を上げて気絶してしまった。



95

小説の秘訣

新しい友達ができた。なんと高校生で現役作家をしているという。「そんなに部数は出てないのだけれど」などと謙遜するが、17歳た思えない程文章に深みがある。どうやって物語を作っているのかと聞くと「夢で他人の人生を見て、それをそのまま書いてるだけ」とごまかされた。



96

メモ

「ソレは箱の中にしか存在できない。大きな箱の中に小さな箱を用意する。外の箱に切れ目を入れると、中の小さい箱に逃げていく。出られないように封印をした箱の中に閉じ込める。でも箱が無い。雨の日は空に蓋をされた大きな箱だ。この街全体がソレの箱の中だ。箱だ、箱箱」メモがあった。



97

夢の箱

私が担当のある作家さんは、打ち合わせ前に与太話をする「夢の中でこれは夢だって気付いて、目が覚める前に何かをつかんで持って帰ろうとしたことってあります?」覚えがある。でも目が覚めると手は空っぽだ「私、とうとう成功したんですよ」そういって彼女は鞄から小さな箱を取り出した。



98

夢の世界

「人は夢で並行宇宙を観測してるって話、知ってる?」また現役高校生作家様の与太話が出たと思った「夢で覗き見た誰かの人生は、別の世界での人生かもしれないわね」仮定を重ねた話。で誰の並行宇宙の人生が見たいの?「もうひとつの世界の私。私は今まで私が私自身の夢を見たことがないの」



99

マモリバコ(ない

宮原くんが銃刀法で警察に捕まった「はこがないと!はこがないとだめだわかってんのか!」とブツブツと呟いている。部屋の中には大小様々の箱があった。そういえば昔、彼の側で閉じた箱があると中からガリガリと音がした。目の前にある箱はどれもしっかり閉じられていて何の音もしなかった。



100

晴れ女

「ふみかは晴れ女だから誘うと絶対晴れるよ」そう聞いていたけれどもピクニック当日は雨だった。人の噂は当てにならない。少し遅れてふみかが来た。謝るふみかに雨で中止だというと「ちょっと待ってて」といって空に手をかざしてグルグル回した。信じられないが雨が止み空に晴れ間がさした。



101

喫茶店

ふみかとキリコと私でランチが評判の喫茶店にいく。赤い煉瓦がオシャレだ。いつも必ず空席になってる席に一瞬人が座っているような気がした。ランチを食べて店を出た後、ふみかがあの席に誰か座ってなかった?と聞いてきた。「うわ〜私初めて幽霊みちゃったよ〜」と何故か嬉しそうだった。



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