第七十八話
「儀式と叙任は夜だ。報告が終わり次第、ふたりともそれまでくつろいでくれて構わない」
セドリックがララへ視線を向けながら言葉を添える。
それでは、とララが今回の任務の報告を始めていった。
傘下に入れた六人の無法者や、隠れアスモデウスの使徒であったパメラの父。
功績のあった者は、都度メルルナが報奨を決定していく。
一通りの報告が終われば、メルルナの双眸に興味の光が滲んでいた。
「ふたりには悪いけど、くつろぐのはもう少し後にしてくださいますか?」
「アスモデウスの式の武術と、黄天派の武術の相乗ですね」
ジェラールの言葉にメルルナが頷く。
「セドリックを敵に見立てて演武なさってくださるかしら」
即座に、セドリックが立ち上がる。
それにジェラールとララが対峙する格好。
ゆっくりと、ガズーとの戦いを再現した。
逐一ジェラールがセドリックの立ち位置や構えを直し、言葉で速度の説明が加わる。
場に集う者達の武学ならば、それで事足りた。
内容が進むたびに、メルルナの表情が鋭利なものを含んでいく。
演武は二度、繰り返された。
終わってから、メルルナが瞼を閉じて微動だにしなくなる。
内容をなぞっているのだ。
次に瞼を開いた時には、すっかりジェラールとララの武術の相乗を飲み込んでいる様子だった。
「ジェラールくん、やっぱりアスモデウスの使徒に入信いたしましょう」
「何故そうなりますか」
「だってだってぇ、これはもはや運命ですわ。ねぇララちゃん?」
「はい、わたくしもそう思います」
ごく自然に返事をするララの熱視線に、ジェラールが首を振る。
「お互いの武術を刺し合う研鑽をしてきたのです。肩を並べた場合、自然と補い合うような形になっていったのでしょう」
「あら、それだけではありませんわ。ふたりが真剣に信頼をしていなければ、きっとこの相乗は生まれませんことよ」
「そんなこと」
「あら、ではララちゃんを真剣に信頼していなかったのかしら?」
「それは……」
言葉に詰まるジェラールに、メルルナがころころ笑った。
「うふふ、言い方が意地悪でしたわね。でもわたくしにも分かりますわ。ただたんにアスモデウス式武術と黄天派武術を掛け合わせた以上のところに、ふたりは到達しておりました。これでもわたく黄天派の武術には見る目がございますの」
導師ユーグのことか、とその場の全員が察する。
ベルゼブブの使徒へ回心する前のユーグは、黄天派の修道士である。
メルルナと好敵手と言える間柄の黄天派。
その頃の交戦経験を鑑みれば、なるほど咀嚼も早かろう。
「伯母として、こんなにもララちゃんを大切にしている殿方を目の当たりにそのまま逃してなるものか、ですわ」
「……その話は、その、また後日でどうかお願いします」
露骨に視線を泳がせるジェラールは、セドリックへ焦点を定める。
「そ、それよりもセドリック殿、フォルセウス様とユーグ殿の動向はどのようになっているでしょうか?」
それにセドリックが頷き、地図を持ってくる。
周辺の地図で、印と日付が書き加えられているものだ。
フォルセウスとユーグが確認された位置と日付。
そしていくつかは、ふたりが小競り合いをした位置と日付もいくつかある。




