第七十五話
ベルゼブブの使徒達が蓄えていた松明に火をつけた。
ぼうと浮かび上がる光景は、ひどいものだ。
倒れ伏す十人のベルゼブブの使徒。
そして土砂や岩に埋もれた外に通じる道。
洞窟の、そこまで深い場所ではない。
とはいえ、ジェラールやララの力では脱出は無理だろう。
「弱りましたね……」
「申し訳ありません、ジェラール様。わたくしがガズー様を止めていれば……」
「ガズー殿が全霊で突っ込んで来たのです。私達では無理だったと思います」
改めて、入り口となる通路を塞ぐ土砂と岩を調べる。
押せども引けども、びくともしない。
それどころか、下手に手を出すと土砂が流れてきそうだ。
外からの救援を待つ方が現実的か。
そう考えて周囲を松明で照らす。
疲弊した自分とララ、そして昏倒するベルゼブブの使徒が十人。
そして、ベルゼブブ式の儀式の跡。
食料を、改めて見ればほとんど残っていない。
これでは十二人が三日ともつかも分からなかった。
「ジェラール様」
ガズーとダズーを見詰めて思案していたララが、深刻な顔で近づいてくる。
「ベルゼブブの使徒達に、どけてもらうというのはいかがでしょうか?」
倒れ伏す十人のベルゼブブの使徒と、塞がれた入り口を見比べる。
悪魔教の七派でもベルゼブブの使徒の肉体の強さは随一だ。
工事作業でなく、強力な拳脚ならばあるいは。
だが、ベルゼブブの使徒達の戒めを解き放てばまず自分達が餌食だろう。
故に、ガズーとダズーのどちらかをを眺めていた
「あのふたりのどちらかを人質に取って、ですね」
ララが頷く。
ジェラールが唸った。
ガズーとダズーの兄弟愛は、これまで何度も目の当たりにしてきた。
人質というのは、効果的に思えた。
「ふん、そんな手には乗らんぞ」
唐突に、怒声が放たれた。
なんとガズーであった。
昏倒から目覚めていたらしい。
十人のベルゼブブの使徒の中でも最後に倒したのに、最も回復が早いとは。
流石の実力か。
「いいか惰弱なアスモデウスの狗ども。俺と弟者は、いやここにいる同胞は全て敵の言いなりになるぐらいならば潔く死を選ぶ。分かったらさっさと殺すがいい。三度目の敗北。もはや導師ユーグに顔向けができん!」
堂々たる態度であった。
これにはジェラールもガズーに深い敬意を覚える。
「ガズー殿、私達はあなた方を殺すつもりはありませんよ。ベルゼブブの使徒もアスモデウスの使徒も、仲良く……というのは難しいかもしれませんが、どうかお互いに害意ありきという関係を解消していただきたいのです」
ふんとガズーが鼻を鳴らした。
やはり無理か。
渋い顔でジェラールが溜息を吐いた。
その時だ。
がた
奥に配置されていた、ベルゼブブの石像から音がしたのは。




