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旅のジェラール  作者: ローリング蕎麦ット
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第七十四話


 ガズーは信じられないものを見る心地で、剣の破片が宙に舞うのを目で追った。


 直感的に、分かった。


 今の技は、言うなれば大剣に対する極技だ。


 そしてまた、ジェラールとララも悟る。


 黄天派武術とアスモデウス式武術は、相反する性質を持つが故に相乗する事を。


 片や快速の攻勢と回避運動を主軸とする黄天派武術。


 片や組技、寝技、極技を主体とするアスモデウス式武術。


 動と静の性質で発達したふたつの流派は、「トビト記」におけるラファエルとアスモデウスの対決にもみられるように、長い正邪の歴史においてお互いに相反する技と認識されていた。


 即ちアスモデウス式武術は黄天派武術を捕まえられねば敗北し、黄天派武術はアスモデウス式武術に掴まれれば勝利はない。


 だがこのふたつの武術が力を併せれば、圧倒的不利なこの状況下でガズーを相手に優勢と化す。


 愕然とするガズーへと、ジェラールが再び踏み込む。


 その隣に、寄り添うようなララ。


 その型は掌打の形。


 ジェラールの右掌に、ララが左掌を重ねた併せの一手。


 ずしん


 胸に直撃するそれは、ガズーをして三歩後退せしめる痛打である。


 ぐふっと激痛に呻く声が響く。


「な、なんだ……俺は何を相手にしているのだ……」


 折れた剣を振り回せども、ジェラールとララがお互いに支え合う身ごなしをどうしても捉えきれない。


 唸りながら、しゃにむに暴れるガズーだが、するりとふたりがその懐へともぐりこむ。


 ララが、ガズーの右手首を両手で掴んだ。


 そのララの手首を、ジェラールが掴んだ。


「「やっ!」」


 重なる声。


 ごきん、ごきん、ごきん!


 ララの掴んだ右手首を起点に、なんと右肘、右肩までそれで外れてしまった。


 ガズーの絶叫が、洞窟内部に響き渡る。


「ぐおおのれええ! ぐおおのれええええい!!」


 剣を取り落として右肩を押さえ、ガズーが悪魔のような形相で歯を噛み締める。


「ガズー殿! 既に勝敗は明らかでしょう、大人しく縛に付いてください!」


「ほざけ、狗が! アスモデウスの走狗が! 有り得ん! この俺がこんな、こんなはずが……ぐおおおおお!!」


 半狂乱になり、ガズーが気勢を全開にして突っ込んでくる。


 これには快速の拳技でも、精妙な極技も通用すまい。


 ジェラールとララが二手に分かれれば、その真ん中を流星の様にガズーが通り過ぎる。


 ずしん


 そして、岩壁へとめり込む勢いで左肩でぶつかった。


 洞窟が、揺れる。


 いや、揺れるどころではない。


 岩が崩れて落ちてくるではないか。


 がごん、がごんと降り注ぐ量と規模が、先程よりも段違いだ。


 だがジェラールとララに降り注ぐ様子はない。


「ジェラール様! 入口が!」


 ララが悲鳴を上げれば、なんと落ちてくる岩に入り口がふさがれそうになる。


 咄嗟に走り抜けようと構えれば、その前にガズーが立ちふさがった。


「逃がさんぞ! 貴様らに勝利は与えん! ここに閉じ込めて諸共に朽ちん!」


「なんてことを!?」


 ガズーが吼える間にも、入り口は土砂と岩で崩れている。、


 逸るララを踏み砕かん威勢で、蹴りが飛んだ。


 それに、ジェラールが横合いから組み付く。


「ララ殿!」


 蹴りを、がっしと横から抱いて軌道を逸らせば、ジェラールの腕をララが掴んで荷重をかける。


 それでガズーの太く逞しい足が折れた。


 ぎぃと苦痛を食いしばるガズーの顔面へ、ジェラールの拳が飛んだ。


「大人しくしていただきますよ!」


 雄渾なマナを込めた拳が額を打てば、ガズーが昏倒する。


 それと入り口が完全にふさがったのはほぼ同時だった。


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