第七十三話
「なっ……!? ええい!」
だがそこからさらに威勢をつけて剣を振り切れば、ふたりが跳ね飛ばされる。
地を転がるジェラールとララは、痛みよりも今しがた噛み合った不思議な感触に戸惑いを覚えていた。
「しぶとい奴らだ。いい加減大人しく斬られて俺に食われてしまえい!」
轟然たる剣勢にて、改めてガズーが踏み込んでくる。
未だ、立ち上がりきっていないジェラールへ。
「くっ!」
そこへ、ララが横合いからジェラールを支えて跳んだ。
間一髪。
ふたりは支え合う奇妙な態勢でありながら、軽妙な身ごなしで剣を避けた。
黄天派武術の素早さと、アスモデウス式武術の掴みどころのなさが混ざったような身ごなしだ。
ひとりではできぬ、ふたりでひとつの動き。
その残影を追うように、ガズーが大剣が翻った。
ずがん、ずがん!
空振りするたびに岩肌を削り取り、地を穿って洞窟を揺らす。
だが、ふたりに届かない。
「ええい! この!」
ガズーが、跳んだ。
大剣を天へと振るえば、岩盤が崩れたのではと思わせるほどに岩石が降り注ぐ。
「ララ殿!」
「ジェラール様!」
ぱっと、ふたりが支え合う姿勢から分かれた。
一拍を置いて、ふたりを引き裂いた岩が地に突き刺さる。
さらに降り注ぐ岩石を、それぞれが必死で逃げていれば、
ずぅん
二手に分かれたジェラールの前にガズーが降りてくる。
既に大剣を振りかぶった剣勢。
「いい加減、ペテロの元へ逝けい!」
山をも断たん威勢で、剣が振り下ろされた。
「ジェラール様! ……掴んで!」
横合いより。
ララから悲鳴めいた声が上がる。
支え合うのは、間に合わない。
ジェラールが、咄嗟に大剣の刃を掴んだ。
ぶしゅと、掌から血が噴き出る。
指が切り落とされなかったのは、運が良かったからだろう。
手が両断されて、さらに脳天に刃が食い込む、その寸前。
ララが、ジェラールの手首を取った。
瞬間、ふたりの中で何かが噛み合う。
「「ハァッ!」」
裂帛の気合と共に、大剣が折れた。




