第六十八話
中から響く、ベルゼブブを礼賛する声は続いている。
洞窟には酒や食い物の匂いが充満していた。
静かに手で合図をして、見つからないであろうぎりぎりで無法者達を留める。
ジェラールだけで洞窟の奥を覗き込む。
祭壇のある広間になっており、壁面も人の手が入った祠であった。
シエクスの町の山で見た内装と、そう変わらない。
ただしアスモデウスの像があった場所に、ベルゼブブの像が立っていた。
それに跪く者と、飲み食いする者。
女達は縛り上げられて端にひと固まりになっていた。
ララもそこにいた。
うつむいてしおらしくしている様はいかにも浚われた哀れな娘然としている。
ジェラールがベルゼブブの使徒の数を数えれば、九人である。
最後のひとりが遅れているのか、それとも来ないのか。
来ないようにと、ジェラールは心の中で祈った。
ベルゼブブの使徒の儀式は、礼賛する者と飲み食いする者が代わる代わる入れ替わる。
七人が飲み食いして、残るふたりが礼賛の歌を奉げているようだ。
酒もがぶがぶと進めており、随分とひとりひとり飲む量が多い。
何人かの腹には、仕込んだ酒は納まるまい。
様子を見ていると、すぐだった。
微かに、媚香の匂いが届いて来た。
遠目に見えるララも顔を上げた。
ちろりと、舌で唇を舐めてベルゼブブの使徒達を見詰めている。
うぐぅという大音の呻き声が挙がった。
礼賛しているベルゼブブの使徒がふたり、急に倒れ伏した。




