第六十七話
媚香は風に流れて、洞窟の前の者達に直撃する。
やがて、荷車とララを中に残した無法者達が出てきた。
そのまま、外の酒盛りに参加する。
何人かが、きょろきょろとジェラールを探すような視線を向けた。
不安がありありと挙動に出るが、微かに媚香の匂いを察したらしい。
そのまま、酒を呑み始めた。
肉も振る舞われており、なかなか豪勢な様子だ。
このおこぼれが頻繁にあるというならば、ベルゼブブの使徒の傘下に加わろうという者もいるだろう。
酒の場はどんどんと盛り上がって行った。
やがて興奮が高じる者達が出てきた。
険悪さのない掴みかかりで、大声で笑い合ってる。
しかし加減が効いていない。
媚毒の興奮作用だ。
どんどんと過熱していき、歯止めが効かなくなっていった。
そして中には、動けなくなり倒れていく者も出てくる。
これも媚毒による作用で、感覚を鋭敏化させて肉体を鈍化させるものだ。
かなり長く媚香を当てた手前、効果は深くなっているはずだった。
酒も手伝って、修行を積んだ者でなければ抵抗するのは難しいだろう。
やがて正気を保っているのが、ララに解毒剤を渡された六人だけになった。
十五人もいた無法者達が動かなくなっていき、呆気に取られている。
抵抗力が強い者も、酔っぱらって笑いながら誰かと掴み合って暴れていた。
それをジェラールが当身で気絶させていけば、これで邪魔者はいなくなる。
「こりゃすげぇ。こいつを洞窟の中に流せば、ベルゼブブの使徒達も……」
「いえ、中の者達はそう簡単にいかないでしょう。しかし意味はあります」
ジェラールが柔和に首を振りながら、残っている媚香を焚く。
ゆっくりと、媚香が洞窟の中へと漂っていくが風が流れているわけではない。
今のようにはならないだろう。
「ひとりは媚香の番をお願いします。残りは、私についてきてください」
無法者のひとりを、媚香を焚き続ける者に指名する。
そして残り全員で洞窟の中へと静かに潜入した。




