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旅のジェラール  作者: ローリング蕎麦ット
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第六十五話


「ララ殿、酒に溶かす毒は作れますか?」


 食事を終えて、ジェラールがそう切り出した。


「少々、森を探して材料を採取する必要がございますわ」


「先程、ベルゼブブの使徒の様子を少し見てきました。毒を仕込んだ酒を、飲ませられるかもしれません」


「まぁ」


 偵察してきた内容を語れば、ララが頷く。


「それで参りましょう。わたくし、さっそく皆様を率いて材料を採って参ります」


「では私は酒を仕入れてきます。明日の昼までには、戻ってきますので」


 言うが早いか、疾風の身ごなしでジェラールが街道へと向かった。


 ジェラールが帰ってきたのは、それから丸一日を経てからだ。


 酒樽をふたつ、魚を油に漬けた樽をふたつ、それに肉も荷車に積んでの帰還である。


 全部を、ひとつの商隊に融通してもらったものではないだろう。


 駆け回って集まったらしい疲労が、ジェラールに浮かんでいた。


「おかえりなさいませ、ジェラール様。準備は整ってございますわ」


 野営の場所で、大人びた美女がジェラールを迎えた。


「ララ殿、ですよね?」


 美女が微笑む。


 常の可憐な愛くるしさが消えて、理知的で成熟した色香を漂わせていた。


 言葉にすれば、化粧をしただけなのだが、変貌とすら言えた。


「ダズー様には顔が割れておりますから。随分と印象が違ってございましょう?」


「え、ええ。びっくりしました。こんなにも変わるのですね」


 見遣れば、胸も控えめになっている。


 布か何かで押さえつけているのだろう。


 視線に気づいたララが、悪戯っぽく笑って胸元を隠す仕草をする。


「まぁジェラール様どこを御覧になっておいでですの?」


「す、すみません……」


 くすくすと微笑む姿は、やはりララだった。


 それから、酒樽に細い穴を開けてララが仕上げた毒を染み込ませた。


 飲めば情欲に燃え上がるが、体が効かなくなる一品だ。


 副導師を見越したメルルナの指導により、かつてジェラールが仕込まれたものよりも強力なものになっているらしい。


「これがあれば、もう媚香は不要でしょうか?」


「いいえ、どうか焚いてくださいまし。おそらく、修行が進んでいらっしゃる方には酒では決定打にはなりませんわ。媚香も効きにくいでしょう。しかし媚香が漂う中の方が、わたくしの技の威力が増しますから」


 ララがこしらえた媚香を荷物に詰め込み、準備が完了した。


「これでよし。買ってきた肉を少し切り分けて、昼食に致しますか」


 軽く食料をつまんでいると、傘下の無法者がひとり駆けてきた。


 ベルゼブブの使徒達の見張りに行かせていた者だ。


「ベルゼブブの使徒達が洞窟にこもったぜ。低い声の、なにか、歌みたいなのが微かに聞こえてきた」


「思っていたよりも開始が早いですね」


「ちょっと前に、さらに食料が運ばれてきたんだ。それですっかり気分良く始まっちまったみたいだ」


「ジェラール様」


「ええ」


 ララと頷き合えば、傘下に加えた無法者達を集めた。


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